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神と仮面のスピリチュアル   作者: 和銅修一
白き食王
30/52

王の晩餐

「お待たせしました。これが才牙様の守護霊の能力を確かめる方法です」

 三人が適当な部屋で待っていると人間界から帰ってきたミスラが大きな袋を持って現れた。

「何だこれは?」

 アレスは袋の中を見るとそこには白い石がいっぱいに入っていた。

「霊石です」

「それって確か元燈葉の部下が持ってたやつか。でも俺はこれをどうすればいいんだ?」

 一つ手にとってよく見ると石の中では霊気がうごめいている。

「簡単ですよ。守護霊に食べさせるんです。もし、失敗だったら消化不良で吐き出しますから大丈夫ですよ」

「大丈夫かそれ?まあ、いい。食べさせればいいんだろ」

 ラビットに指示をして霊石を人間でいうあごあたりが裂け口となりそこへ運ぶ。よく噛んで飲み込む。そしてもう一つ二つと袋から霊石を取り出してむさぼり始めた。

「成功か」

 才牙はホッとため息つく。

「それにしてもよく食べるな」

 ラビットは袋いっぱいにあった霊石をすぐに平らげた。力が腹の底にたまった感じがする。

「着実に強くなってる。やっぱりラビットの能力は霊気を食べることだったんだ」

 疑念は確信へと変わった。この後、各地から霊石をかき集めてラビットを食べさせた。




 才牙たちは、また厳重な扉の前に来ていた。

「今度こそ倒してやる」

 話し合いで才牙以外は扉の前で待機することになった。

 アレスから鍵を借りて中へと入る。



 中にはもう白い獣はいなかった。

 代わりに白い人型の何かがいた。ラビットに少し似ていたが耳が短い。

「初めましてだな。仮面の守護霊をもつ者よ。俺は死神タナトス。燈葉の部下をしていた者だ」

 それは赤ン坊ではなく、才牙が探していた死神だった。どうやら既に転生が終わっていたらしい。

「残念だが俺は神になった。お前の転生を取り消すことができる。大人しくしろ」

「そんな脅しは効かないぞ。準備のためにそのことも調べたがそれには幾つかの手順を踏まないとできないそうだぞ。もちろんお前をここから出す気はない」

 才牙の作戦は呆気なく破られ、逆に追い詰められてしまう。

「どうだ交渉といかないか?お前は俺をここから逃亡できるように手伝ってくれればいい。そうすれば誰も傷つけないし、逃げた場所でも何もしない。ただ俺はこの永遠をゆっくりと味わって時の流れを感じていたいだけなんだ」

「誰がお前のことなんか信じるかよ。どうせうまくいったら好き放題に暴れるつもりだろ」

「まあ、信じてもらえないのも無理はない。だが、ここは心を落ちつかして考えてはくれないか?俺は確かに燈葉の部下だったが燈葉自身ではない。あんな事件など起こさないさ」

 才牙の心は揺らぎ、信じてみたいと思った。無駄な争いはしたくなかった。

「わかった…」

 肩に入っていた力が抜ける。

「ありがとう」

 タトナスが才牙の横を通る際、ラビットは何かを感じ取った。それはまぎれもない死の感覚。咄嗟とっさに横に転がる。

 次の瞬間、才牙が立っていた場所には穴が空いていた。タトナスが大きな口を開けて飲み込んだのだ。

「やっぱりお前もそうなのかよ。燈葉と同じなのかよ」

 怒りの感情がフツフツと底から湧き上がる。

「いや、あんな奴とは違う。俺は目的があってお前を攻撃した。本能のままに人を殺し臓器を採取している変態とは違う」

「目的?俺を攻撃した目的って?」

「仮面を奪うためさ。そうすればさらに絶大な力が手にはいる。その力で俺はこの世界を乗っとてやるんだよ」

「そんなくだらないことか。いや戦い自体がくだらない。お前なんか食ってやる」

 ラビットの霊力が才牙に呼応して跳ね上がる。タトナスは大気中にある霊気を吸い取って地面を蹴った。その勢いは凄まじく、高速で部屋中を駆け巡る。

「はは!どうだ見えないだろ。これでお前を舐め回すようにじっくり味わってやる」

 タトナスが自慢げに笑う中、才牙は冷静にポケットに入った青い石を取り出してラビットへ食べさした。

「まずは腕だ!!」

 タトナスは白い口を開け、その鋭い歯で右腕を引きちぎろうとした。

 しかしラビットがそれを上回る早さでカウンターの拳を叩き込んだ。

「今食べたのは探知能力が優れていた花子さん霊石。ラビットは霊気だけじゃなくても能力も食える。今わかったよ」

 ラビットは疲労したタトナスを押さえつけ腕、足と引きちぎって食べやすい大きさにしてから胃の中へと流し込んだ。

「安心しろお前はノロマな亀じゃない人参。根元まで食べてやるよ」

 グチュグチュと音をたてながら血の匂いとタトナスに溜まっていた霊気が漂った。



 タトナスを倒した後、ヘラクレスたちに後片付けを頼み、才牙はルキノの元へと足を運んだ。そして彼女は才牙を笑顔で迎えてくれた。

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