磁石女の夜
あれから一週間ほど経ちロキの毒が完璧にとれ元気になった諒は夜中にコンビニでも行こうと思いついた。
すると、衝撃の真実が明らかとなる。実はルキナは俺の隣に住んでいた。どおりで朝は必ず玄関の前にいるはずだ。
いや、そんなことはどうでもいい。ロキと戦った後、ディス本人にどうやって勝ったのかと聞くと能力を使ったと言った。
どうやら守護霊には個体差はあるが能力があるらしい。そしてディスの能力は姿形を変え、それに応じた特性や力が使えるというものだった。
そして最近はルキナを守るためにコンビニで缶コーヒーでも買って公園でディスを操る練習をしている。敵がいつ襲ってくるかわからない。
そしてわかったのは守護霊は離れて操作すると複雑な行動ができなくなり能力も弱まってしまう。
まぁ、こんな夜中なら人もいないし気兼ねなく練習できる。善は急げということで体力作りも兼ねて走ってコンビニへ向かい目当ての缶コーヒーを買った後、公園へと向けまた走り出す。
公園に着くと同じ高校の制服を着ている女の子が一人歩いていた。それだけならまだいいのだが、彼女からは霊力を感じる。
霊力、牧田のオカルト研究部で教えてもらい使えるのうになったのだがあまり使ったことはない。そして霊力にも個人差があり、諒はかなり大きいものだと牧田のお墨付きをもらった。
だから妙なことが立て続けに起こっているのかもしれない。ちなみに霊力にも守護霊のような能力が存在するのだが諒はまだそこまで扱えていない。
だが、彼女から感じられる霊力はそういったものではなく守護霊に似たものだった。
よく見ると彼女からあちらこちらに何か玉のようなものがばらまかれている。それは落ちているゴミや石などに当たりくっつく。近くで見ると玉は青色で周りに交差したリングようなものがあり、大きさはバラバラ。
その玉は歩いている彼女の後ろからずりずりと近寄っていく。彼女を見ると手に赤い玉があり、それが原因でこの青い玉が反応しているんだと気づき警告するため彼女の手をとる。
この感じからすると無意識でこれを操っている。そしてこれはやはり守護霊なのだろう。牧田は守護霊には様々な形があると言ってた。これがそうなのだろう。
ならばそれを説明して正しく、迷惑がかからないように使ってもらわなくては。
「君、霊を見えるでしょ?」
なんて説明しようか悩んだ挙句、諒かは自然とこぼれ出たのは牧田に会った時初めて言われた言葉だった。
「え?何であんたが知ってるの」
彼女は驚き怖がっている様子だった。
「俺も見えるんだよ。ほら俺の後ろ」
諒はディスを出し自分も同じてあることをアピールすると彼女はホッとしたのかため息をつく。
「俺は国崎 諒。光銘高校の二年生だ」
今も制服を着ているのでわかると思うが一応、高校の名前も言っておく。
「私は三雲 美雨。あんたと同じ高校の一年生」
あれ、何で後輩なのにこんな口調なんだ?
そう思っていると三雲は
「私、先輩後輩とかって嫌いなの。だってたった一年や二年早く生まれたからって威張られるとイラってくるでしょ」
と説明する。その意見には賛同する自分も敬語とかは使ったことないしお互い様ということで許してやろう。
それにしても遠くからだとよくわからなかったがこの後輩はなかなか可愛い。
オレンジ色の髪のショートカットにちょうどいい胸スタイルもいい。なんか最近こんなことばかり考えてる気がするのでこれは最後にしよう。
「で?これは三雲が操っているのか」
諒は後ろの青い玉を指すが三雲は首を横に振る。やはり守護霊が暴走してるようだ。
「ていうかいつまで手握ってるの?早く離して」
「ご、ごめん」
急いで手をどかそうとするがまるでくっついたように動かない。
「あ、あれ?」
しばらくしてもとれないので諒はこれが三雲の守護霊の能力だと気づいた。
「どうやら三雲の守護霊は磁石のような力をもっているのかもな」
「磁石?」
「ああ、この赤い玉と青い玉が磁石のように引き合っているんだ。だからこの守護霊をしまえばいいんだ」
「しまうってどうすればいいの?」
「そうだな自分の中に守護霊が入っていくイメージをするんだ。そうすれば元に戻るだろ」
前に牧田に教えてもらったことをそのまま教える。三雲は目を閉じ、諒に言われた通りに頭の中でイメージする。
すると、青い玉が三雲の元へ集まってくる。しかし集まってくるのは玉だけではなく、くっついていた石なども集まってくる。
「しまっ!」
三雲は咄嗟に目をつむり手を顔の前に出し衝撃に備えるが一向に衝撃はこない。 気になった三雲はそっと目を開ける。そこにはディスガイズを出している諒と地面には飛んできたものであろう破片が散らばっていた。
「これあんたがやったの?」
「当たり前だろ。俺以外誰がいるんだよ」
「でも、さっきのすごいスピードだったし当たったら死ぬかもしれなかったよ!」
三雲はなぜか涙目で怒ってくる。
「俺は初めてできた可愛い後輩を失いたくないからな。これぐらいなんともないさ」
「か、可愛いって!からかわないでよ」
「何言ってんだよ。本当のことだろ」
「う、うう〜」
三雲は顔を真っ赤にして俯く。
「でも、青い玉は消えたみたいだな。これ以外は」
諒はまだ青い玉で離れない手を見る。
「なっ!」
それに気づいた三雲は慌てて取ろうと引っ張るがそれは諒を引っ張る結果となり、バランスの崩れた諒は倒れてしまう。
三雲も巻き込まれ傍から見ると諒が三雲を押し倒しているように見えてしまう。
そんな時、
「諒、何してるの?」
と聞き覚えがあるがいつもと様子が違う声が聞こえた。
ふと見るとそれはルキナだったのだが、夜だからなのか目が猫のように光っている。
「ルキナこれは事故なんだ」
必死に誤解を解こうとするがルキナは御構い無しに歩み寄ってくる。
「うぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」
殴り、蹴り、噛み付く。
ルキナは諒をボコボコにしてもまだ怒りが収まらないまま帰って行った。
「いてて、あれ?とれてる」
諒が起き上がるといつの間にか玉は消えていた。
「ルキナなんか用があったのか?てかもうこんな時間か」
公園の時計を見て驚いて自分のマンションへと走り出す。
「あ!おい三雲。お前またここに来いよ。俺が守護霊の扱い方を教えてやるから」
「わかった。遅れずに来なさいよ」
「それはこっちの台詞だ」
走り去る彼を見ながら彼女の中から不安の種が消え新たなものが芽生え始めていた。