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神と仮面のスピリチュアル   作者: 和銅修一
白き食王
28/52

切り札のお披露目

「天界の主な役割は統制です。その為の機関や設備はたくさんありますが一番使われているのはあの政治塔です」

 ミスラが指差した塔は横幅が広くスーツ姿の神が多く入って行く。

 そこで一番目立っていたのは人の姿ではなく、カブトムシの姿をしている神。ヘラクレスだった。

 才牙はその小さくもたくましい姿を知っていた。今まで何度も助けてくれた大恩人だ。忘れるはずがない。

「ヘラクレスさん!」

 才牙は手をあげてヘラクレスの元へ駆け寄る。

「やあ、ミスラがいるということは転生が成功したんだね。おめでとう」

「いえいえ。これもヘラクレスさんのおかげです。ところでこの塔に何か用があるんですか?」

「ああ、実は…ね。君に関係のあることなんだが。少し手伝ってくれないか?」

「僕でよければ手伝いますよ。で、何をするんですか?」

「政治塔に乗り込んで転生を禁止させるのさ」

 塔を見つめるヘラクレスの目は一点の曇りがなく言っていることが本気なのだと無言で語っていた。



 神の転生ははるか昔から今まで続いており、それが神の象徴なのだとされていて転生の原理はほとんどの神が知らない。

 実際、転生の原理は空の状態の人間か動物に魂を入れるだけなのだが、その際に入れるのが死神の仕事。才牙が今追っているのも死神だが、死神は仕事が多いため大勢いる。

 しかし最近はその死神が不正な転生を手助けしていることが判明し、大問題になった。

 その結果、転生制度は続けるか廃止するかの瀬戸際にある。

 新しい死神をつくり、そいつにやらせればいいと言う者もいたがそれでは何の解決にもならない。結局はどちらかを決めなくてはいけない。その決める日が今日だった。


「仕事はシンプル。ただ隣で合図を出したら守護霊を出せばいいだけ」

「でもこの体になってから一度も守護霊出してないからでない可能性があるんですけど」

 ディスガイズはあの時の戦いで消滅してしまい、もう出せない。

「大丈夫ですよ才牙様。国崎 諒としての守護霊は消えても今は白羅 才牙としての守護霊がいます。いつも通りにすれば出てきます」

 政治塔の中を歩く最中ミスラは励ましてくれるが才牙には自信がない。今の体に慣れていないしすれ違う人は冷ややかな目で睨みつけている感じがして不安になる。



 会議室に着くと既に他の神が集まっていて、それぞれ席に座っていた。ヘラクレスも自分専用に高くあげられた椅子に座る。というより着地した。

 その目の前には白い肌の眼帯をつけた銀髪の男勝りの女がどっしりと座っていた。

「あのお方はアレス様です。今までの功績が認められて今はこの政治塔で絶大な力を持っている神様です」

 ミスラが横から耳打ちして教えてくれた。そんな彼女の目は生前の才牙同様に赤く染まっていたが、その中からあふれる闘志と覇気は計り知れないもので敵でないのに後ずさりをしてしまう。

「ヘラクレスも到着したしそろそろ始めるか」

 アレスが男っぽい声でそう言っただけで場は緊張感に包まれた。そんな中、最初に口を開いたのはヘラクレス。

「アレス。転生制度はやはり廃止させるべきだ。早急に手を打たねば取り返しがつかないことになるぞ」

「ならあの卵はどうするんだ?仮面が有る限り手は出せないし、他の神も不安の声をあげている。昔のこともあるしな…。奴をどうにかしないと転生制度の廃止どころじゃなくなる」

「それはこの才牙くんが解決してくれますよ」

「え?俺ですか!?」

「さあ、守護霊を」

 ヘラクレスが合図を出した。守護霊を出さなくては。才牙はいつも通りに自分の中から力を出すイメージをした。

 すると、いつも通り才牙から守護霊が出た。

 しかしディスガイズは消滅した為、別の守護霊だった。全体的に白く黒い線が何かの模様の様に体全体に張り巡らされている。特に気になったのは耳。まるでうさぎの様に長い。それに顔にまた仮面を被っていた。今回は体と同じ色で黒い線が円を描いている。

「これは…仮面」

 アレスは唯一開く片目を丸くして驚いた。

「これで卵を破壊してもらいます」

 ヘラクレスは切り札を切った。

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