六年という歳月
三雲 美雨。国崎 諒として生きていた頃の後輩であり同じオカルト研究部の部員でもあった。
そんな彼女は六年経った今、成長した姿で才牙の目の前にいる。肩まで伸びたオレンジ色の髪、長い手足。残念なのは六年経ったというのに一行に成長していない胸だけ。
「貴方だれ?もしかしてこいつの仲間」
グイッと倒した赤い髪の男を掴み上げて確認するが才牙は首を横に振る。
「俺だよ、わかないのか三雲。国崎 諒だ。生まれ変わってこんな風になったんだ」
「先輩…?でも証拠はあるの」
才牙はポケットに入れていた花子さんの成れの果てである青い石を差し出した。
「今日、ミスラっていう人に返しもらった」
三雲は恐る恐る石を手に取りよく観察する。
「た、確かに本物だ。じゃあ貴方が先輩なの…」
「ああ、今は白羅 才牙っていうだがなうっっ」
突然、三雲が抱きついてきた。とても柔らかく頬は涙で濡れていた。
「もう心配したんだから。六年、六年間ずっと貴方の帰りを待ってたんだから」
そのまま三雲は気が済むまで才牙の胸で泣いて泣いて泣き続けた。
「ご、ごめん。ちょっと」
涙を拭きながら三雲は恥ずかしそうに顔を赤くして俯いた。
「で、お前ここで何やってんだ?」
「あ、そうか。先輩は知らないか」
「先輩はやめろよ。もう前の俺とは違うんだから普通に名前で呼べよ」
これは過去の自分を消す為でもある。
「わ、わかった。才…牙」
「おう。じゃあ説明してくれるか?」
「待って!ここだとあれだし。この男もずっと放置しておくわけにはいかないから私たちの事務所に行きましょう」
「事務所?」
三雲は近くにあったゴミ箱から持っているのと同じよう袋を取り出し、男を磁石玉を使って一つのビルの中まで運んだ。
「久しぶりだね」
奥の机に肘をついて待っていたのは元オカルト研究部部長。牧田 洋二。
顔立ちは変わっておらず、顎に髭が生え始めている。
「牧田!久しぶりだな。お前がいるんなら他のやつもいるのか?」
「いや。今は仕事をしてもらっているよ。それよりいい時期に帰ってきたね」
「いい時期ってなんだよ」
「わからないのかい。もうすぐ僕たちで探偵事務所を開こうとしていたんだよ」
「探偵事務所?何でまた」
「なあに、探偵といっても表向きの話さ。本当は霊関係のこと、今のところは燈葉の部下を捕まえることに全力をあげている」
「お前もか…」
「もちろん。このまま不安の種を残しておく訳にはいかない」
牧田も同じ考えを持っているようで才牙は少し嬉しかった。
「それはわかっているけどそいつは何処にいるんだよ」
「それはこの男に聞いた方が早いんじゃないの!」
三雲は捕まえてきた男を盛大な蹴りで起こした。彼はその衝撃で起き、腹を火傷の跡が残った手で抑えながらゆっくりと顔をあげる。
名前は瀬尾 勝治。元燈葉直属の部下であった男だ。




