劇場に降りた悪魔
諒が目を覚ますと周りは白で覆われいた。どうやらあの後学校の保健室で寝てしまったらしい。隣にはぐっすりと寝ている春芽がいる。起き上がって春芽の様子を見てみると外傷はほとんど消えているので大丈夫そうだ。
「う〜ん」
春芽は諒に気づいたのかゆっくりと目を開けた。
「おはよう春」
しばらくぼーっとしているとやっと諒だということに気づき目を見開く。
「な、なぜ諒がここに!?」
「俺もちょっと疲れてな。ここで休んでたんだよ。それよりも大丈夫か?痛むところはないか?」
「だ、大丈夫だ。そんな心配しなくてもいい」
「そうか。春も起きたし帰るか」
外は薄暗く星が隠れている。
春芽は倒れていたので花子さんがどうなったか知らないのでヘラクレスのことを含めて懇切丁寧に話した。
「そう…だったのか」
「新井の守護霊が倒れていたところにこれが落ちてたんだ」
諒が出したのは手の半分もない小さくて青い石。
「なんだこれは?」
「ヘラクレスさんが言うには新井の守護霊が消化しきれなかった花子さんの霊力が結晶化したものらしいんだ」
「そうこれが花子さん…」
「俺はこれをヘラクレスさんに預けようと思う。その方が安心だしな」
「そうだなお前が決めたことなら口出しはしない。好きにするといい」
それで春芽とは別れて家へと帰った。
ドアを開けるとルキノが座って待っていた。
「諒、ヘラクレスさんから手紙があったの」
「そうか、それはちょうどいい。俺も用があったんだ。で、どんなことが書いてあった?」
「燈葉を見つけたって」
「なっ!!」
諒の脳裏にあの臓器フェチ男の顔が浮かぶが、すぐに気を鎮める。
「これ、日時や集合場所が書いてあるから」
「ありがとな」
諒は部屋へと戻ろうとするがルキノが服をつかんできた。
「絶対帰ってきてよ」
涙ぐんみながら上目遣いで頼んできた。ルキノは心配してくれいるのだ。そんな気持ちに応えなくては。
「もちろん」
笑顔でそう言ってあげると涙を拭いて
「絶対だからね」
と言い残して去って行った。
ルキノから手紙を受け取ってから半日後、諒の目の前にはヘラクレスの姿。ここは使われなくなった劇場。
「他のみんなはもう配置についている。君には燈葉を倒して欲しい」
「なんで俺なんですか。ヘラクレスさんのほうが断然強いじゃないですか」
「いや無理だ。奴はあるものを手にいれてしまったのだ」
「あるものってなんですか?」
「神具、仮面だ。君の守護霊がつけているものと同じものだ。これではもう手が付けられない。仮面は仮面でしか破壊できないからな。こちらは全力でサポートをするから派手にやってくれ」
「わかりました」
その言葉に背中を押され、劇場の奥へと進んで行く。開いたところに出るとそこはステージだった。そのステージにいたのは仮面を持った燈葉。
「ここまでくるとはな。その成長ぶり、さぞかし臓器は熟してるだろうな」
よだれを垂らしながらそんな薄気味悪いことしゃべっているがそんなことでは臆さない。
「さあな、試してみるか?その手に持っている仮面を使ってな」
「いいぜ。前みたいに遊んでやる」
最強と言われる神具、仮面とその仮面を身につけている守護霊。
「これを面白くなりそうだ」
身を隠して二人の様子を見ていたマントの男がふと呟いた。




