救世主
理科室の中。牧田と理はいた。
牧田は状況確認、理は守護霊で機械化した人払いの鈴を鳴らすので忙しかった。
しかし花子さんのこともありなかなか進まない。牧田は何もできなかったことを悔やみ、理は力がありながらもそれを生かせなかったことを後悔している。
しかし過ぎたことはどうにもならないとわかっている。だからこそ今やるべきことやる。ただそれだけ。
「理くん。ちょっと頼みごとしてもいいかな」
理のコントローラーを握る手は自然と止まり、牧田の話を聞いた。
「なんでこんな…」
ルキノは横に倒れている春芽とそれを見下す新井を見ながら口を手で覆った。
「説明してあげましょう。私の守護霊はグロウ・グリーンといって成長する守護霊なんです。今あなたたちの仲間である霊を食べました。それにより新たな力が目覚め、今に至るわけです」
新たな力。春芽を倒した素早く爆発した守護霊。
以前聞いた赤竜の守護霊に似ているがそれより厄介そうなものだ。蝉のようにいくらでも増殖するかもしれないのだから。
しかし諒たちが本体を倒してきっと止めてくれるだろう。きっと…。
「磁石玉!」
蝉につけた磁石玉と本体につけたものが引きつられるが、本体であるグロウ・グリーンは鮮やかなラッシュですべて粉砕する。
「なんて攻撃力だ…。これじゃあ、ディスでもかなわないぞ」
「じゃあ、どうするのよ先輩!」
弱気になる諒を見て三雲は声を飛ばす。諒が浮かんだのは篠原の顔。彼の守護霊の力なら勝てるかもと思ってしまった。
そんな自分が情けない。彼は結局、見つからなかったのだから今はいないものとして考えなくては。
そう決心して策を考える。こちらが唯一有利なのは三雲の磁石玉が当たっていること。これならいつでも三雲の能力を使えるので攻撃は命中させられるだろう。
しかし問題なのは相手のあの攻撃力とスピード。それをどうにかしないと返り討ちにあってしまう。
まずは手と足を封じ、身動きをとれないようにしたい。そしてあることを思いついた。
「三雲、下だ!あいつの下に磁石玉を撃つんだ」
三雲はすかさず諒に言われた通りにグロウ・グリーンの下の地面に一発の磁石玉を撃った。すると腹についていた色が異なる磁石玉で地面に引き寄せられ、地面とくっついた。
結果、グロウ・グリーンは起き上がることができず手と足は動きが制限されうつ伏せの状態になった。
そうなるとわかっていた諒はディスガイズを出し、グロウ・グリーンへと飛びかかった。
「くらえ!」
手足が動けないので攻撃などできない…はずだった。ドスッ!
諒の胸に長く伸びた尻尾が突き刺さった。
だが殺傷力があるものではなく、グロウ・グリーンが花子さん同様に霊力を吸い取るためのものだった。
そして尻尾で霊力を吸い取られ諒は力が抜けて倒れこむ。
「ディ…ディス」
諒は自分の守護霊に呼びかけるが霊力がないので出ることはない。そしてグロウ・グリーンは新たな力である爆発する虫を二匹出し、磁石玉を地面ごと弾き飛ばし羽を使って宙へ浮いた。
「そ、そんな…。どうすればいいの」
困り果てたそんな時空から光の玉が降りてきた。三雲は光のせいで直視することができない。
「な、なんだ?」
諒もその眩しさに目を細めながらも見上げる。
「我はヘラクレス。お前たちを助けにきた」
光が弾け飛び声の主が現れた。茶色くて角があり、綺麗で小さな羽で飛んでいる。
そうまさしくカブトムシ。
このカブトムシが諒たちの救世主となる。




