ゲームオーバーを伝える虫
諒と三雲は囮となって春芽とルキノが蝉たちを引きつけてくれたのでスムーズに大きな虫の近くまでこれた。
しかしソラに浮いているので攻撃が届かない。こちらの守護霊を飛ばしても長距離操作は慣れていないので勝てるという確信はない。
取り敢えず三雲の磁石玉が届くか試して見たが、全然ダメだった。高い建物の屋上で打てばいいと思ったが周りにそういった建物は一切ない。地上からあの守護霊がいるところまで飛んで攻撃するか、どうにかして三雲の磁石玉を当てるようにするしかないが何もいい案がでてこない。
今こうやって悩んでいる時でもあの守護霊は蝉を産んでいる。そう蝉を…。
「そうだ蝉だ。おい三雲おんぶしてやるから乗れ」
「な、な、な、なに言ってるの。何で先輩におんぶされなきゃいけないの。しかもこんな時に」
「いやだからお前の力が必要なんだって。いいか三雲。あいつが産んでいる蝉がいるだろ。蝉は高く飛んでいないしバラバラだ。あれに磁石玉を当てて徐々に上へと飛んで行って地面に叩き落す。かなり強引だがタイミングさえ合えばできるだろ」
「うー、しょうがないわね。やるわ、でも変なところ触らないでね」
「はいはい」
まず自分たちに磁石玉をつけ、その後諒は腰を下ろし三雲を乗せる。
「じゃあ行くわよ」
タイミングを待ち、三雲は狙いを定めて指先で磁石玉を発射する。一匹、二匹、三匹。
順調に当てて行き、そのたびに前持ってつけていた磁石玉の能力で引きつられ空へと上がって行く。
そして六匹目で緑の守護霊の近くまで来た。
「くらえ虫野郎」
ディスガイズの拳で地面に叩きつける。そして諒と三雲もゆっくりと地面に落ちて行く。
「ちょ、そいえば着地はどうするの。ちゃんと考えてあるんでしょうね」
「もちろんだ」
諒は空中で三雲を抱き上げる。
「て、なにしてるのよ」
「大丈夫だ。下にはディスにクッション変身して待っている。だから暴れるなって」
顔を真っ赤にしながらジタバタする三雲を抑えながら説明する諒だったが、いう事を聞かず結局そのままクッションへと落ちる。
諒が最初に感じたのは手の違和感。何か柔らかくいものなのだがディスが変身したクッションではない。
「何だこれ?」
目を開けてみるとそこには三雲の背中があった。そして手はがっしりと三雲の胸をもんでいる。
「いや、これは違うんだ三雲。お前が暴れたからこうなったわけで……つまり事故なんだ。決して触りたいとかそういうのじゃない」
必死に弁解するが三雲は俯いたまま。
「そんなの関係ないわよ!!」
諒の腹に踏みつけるように蹴りをいれる。
「くぼっ!」
いきなりの攻撃に対処できなかった諒はもろにくらってしまい腹を抑える。
「それにそんな否定なくても…。それじゃあ私には興味ないみたいじゃない」
恥ずかしそうにそう呟くが腹を抑えている諒には一切届かなかった。
「げほっ、げほ。そ、それよりあの緑の守護霊はどこいった」
「先輩、絶対私の話聞いてなかったでしょ。まぁいいけど…。さっきの守護霊はあそこでなんかしてるけど」
「よし。空に飛ばれる前に終わるぞ」
二人は守護霊を倒す為、走って近づいて行くが、それを遮るように大量の蝉が押し寄せてきた。
「クソ後もうちょとなのに」
間から少しだけ姿が見える。そして諒は息を呑んだ。見えたのは囚われた花子さんの姿をそれを食べようと大きな口を開けた緑の守護霊。バッタのようなその口はいとも容易く花子さんを飲み込んだ。
次の瞬間、緑の守護霊は青色の光に包まれた。光が止んでも姿形は変わっていなかったが霊力は跳ね上がるように変わっていた。
「そ、そんな…」
一部始終を見ていた三雲も驚きを隠せない。そして緑の守護霊は霊力が高くなったせいか蝉ではなく、鋭く長い一本の角と黒と緑で彩られた虫が産まれてきた。
それはゲームオーバーはもうすぐだと伝える虫でもあった。




