発見
「花子さんがさらわれただと!どうして、奴の狙いは一体何なんだ」
諒は落とした携帯を慌てて拾い、牧田に問う。
「それはわからない。花子さんはただ霊力を溜め込んでいて特殊な力なんてあまりないんだがな。でもあの蝉を生み出している大きな虫のところに行く可能性が高いだろうね」
「でもあれ空飛んでるぞ。どうするんだ」
「そうだね。ここは一番近くにいる三雲さんに協力してもらおう。彼女の守護霊は使い勝手がいいからね。こんな時でも役に立つよ」
牧田に従い、電話で連絡を取り合い三雲と合流し花子さんが連れさらわれたことを話した。最初は驚いてたが今までいろんなことがあったせいか、すぐに受け入れいつもの様子に戻った。
「で、具体的に何をすればいいの?」
「そうだな…。まずあいつに近づかない限り何も始まらない。この大量の蝉の中じゃあ大変だ、手伝ってくれ」
「わかった。春芽やルキノにも電話しとく」
これから花子さん救出作戦が始まる。
三雲は春芽とルキノに電話して二人には囮をやってもらうことになった。二人が出来るだけ騒いで蝉たちを引いつけているうちに諒と三雲が大きな虫の守護霊に近づくという作戦となった。
うまく行くのか心配だったが、蝉は作戦通りに囮となった春芽とルキノの元へと飛んで行った。この隙に諒と三雲は大きな虫がいるところへと走って行く。
作戦通りである。それが諒を不安にさせる。これは新井の罠なのではないかと…。
しかし花子さんを見捨てる訳にはいかない。そのまま後ろを振り返らずただ前だけをみて走る。
春芽とルキノは蝉を引きつけながら、あることがおかしいことに気がついた。
「ルキノ…これは」
「はい。蝉さんたちの動きが多彩化しています。どうやらいるようですね」
蝉はフェイントをしたり、連携攻撃をしたりと今までやってきたこともないことをやってくる。こんな複雑な動きができるのは使い主である新井がいるからだと二人は感づいていた。
だがピンチでもあり、チャンスでもある。
ここで新井を倒せば空に浮かんでいるあの守護霊とこの大量の蝉が消える。新井を守るのは蝉しかいない。
数は多いが一体一体は大したことはないだろう。ならばと春芽は自分の守護霊である泥鮫、ルキノは人払いの鈴と盾を出す。
人払いの鈴は攻撃の為でなく、探索の為。人払いの鈴に逆らう力があればそれが新井となり、すぐに居場所がわかるという寸法だ。
しかしそう、上手くはいかない。
蝉の攻撃。
春芽が泥鮫を分裂させ対処しているが数が圧倒的に違う。ルキノは集中して新井を探しているので期待はできない。
とにかく周りにあるものを泥化させ蝉に当てたりして時間を稼いだ。その結果、ルキノは新井の居場所を見つけることに成功した。
「こっち!」
余った蝉を無視してルキノの先導通りに走り、ある男を見つけた。スーツ姿でまるでサラリーマンのような男。彼は紛れもなく諒の部屋のテレビに出てきた新井 樹。
この街を乗っ取ると宣言した男。
「やっと見つけたぞ。観念するんだな」
春芽は探偵が犯人を当てる時みたいにビシッと指を差すが、差された等の本人はニヤニヤニコニコしている。
「な、なぜ笑っている」
彼の異様さに戸惑いながらも春芽は理由を聞く。
「なぜって、もうすぐあれがくるころなんでね」
「あれ?」
春芽は頭の中であれとはなにか検索してみるがわからない。そんな時、羽の音がした。
「危ない!」
ルキノがそう叫んだ時には遅かった。すごい勢いで飛んできたものが春芽の横っ腹に体当たりを決め爆発する。
「な、なにこれ…」
ルキノは春芽が倒れた姿を見ながら呟いた。
「タイムアップのお知らせですよ。いや君たちにとってはゲームオーバーのお知らせと言った方がいいですかね」
新井はクスクスと笑い倒れた春芽を見下ろした。




