危険な緑
港の近くまで来ていた諒と牧田は倉庫の大爆発を見た。急いで倉庫へと走るがが爆炎と煙で篠原がどうなったかわからなかった。
暫くして消防車が到着して火は消えたが中からは何も見つからなかった。
いつもオカルト研究部の部室には牧田と花子さんしかいなかった。諒たちは篠原捜索のため動いている。
牧田は篠原が部室に帰ってくるかもしれないので待機しているのだが、見つかることに牧田は期待などしていない。あの大爆発死んだとしてもそれは篠原自身が決めたことだから探さなくとも生きていれば帰ってくると思っているから。
それを理解した花子さんは牧田に紅茶を出し、ゆっくりとしたひと時を送る。
「今日も見つからなかったね」
捜索を始めてから三日が経ったが一行に見つからず諒の部屋で諒、ルキナ、三雲、春芽の三人で反省会をしていた中ルキナは元気のない諒に呟いた。
「ああ」
このように口数が少なく、気力が感じられない。そんな思い空気の中、テレビがついた。誰かがつけたわけではなく、いきなり、なんの前触れもなくついたのだ。
テレビの内容はニュースのようだ。スーツを着た緑髪の細目のの男がマイクを持って話し出した。
「えー、今回は篠原捜索に力を入れている国崎 諒さんたちに朗報です」
!?
驚いてよくテレビをみると電源ランプがついていない。何かおかしい。これも燈葉の差し金なのだろうが今回の相手はテレビ越しでもものすごい霊力を感じ取れる。
「すいません申し遅れました私は燈葉様に仕えている新井 樹です。今は授かった神具で回りくどく、このテレビで話し合ってるわけですが言いたいことはただ一つです。私は明日の夜、この街を乗っ取ることに決めました」
洞窟の中を歩く二人。
「いいのですかあれを動かして」
「仕方ないだろ。他の奴はもう使い物にならないしこのままだと俺が危ないしな。あいつがど派手に動いてくれば他の神はそれに気を取られこっちは自由に動ける」
「そうですね。一刻も早くあれを見つけないと…」
「さあ行くぞ。こっちは地味に堂々とな」
燈葉はニヤリと笑い洞窟の奥へと進んで行った。
「乗っ取り?」
諒はオカルト研究部へ行きテレビ越しに話されたことを牧田に打ち明ける。
「そうだしかも今回は今まで戦ってきた奴より強いぞ」
「だとしてもこの街を乗っ取るにはそれなりの数が必要だ。いくら強くてもそこはカバーできないだろうね。でもあっちもなんらかの手は考えてあるだろうからそこには気をつけないとね。取り敢えずルキナさんにあるものを作って欲しいから伝えてくれるかな」
そんな中でも、もう新井の思惑が進んでいた。
薄暗い夜。この夜が新井が乗っ取りを宣言した時間なのだが、一行に現れない。
諒たちは各自、ルキナが複製した人払いの鈴という神具を持ち決めた場所で一回鳴らしてそこに置いてバラバラに行動した。鈴はすべて理の機械人形で機械化してあり、いつでも鳴らせるようにしてある。操れる時間は五分だけだが鳴らす時だけ動かせばいいので時間はかなり稼げる。
牧田たちは理科室で理と花子さんとで待機。何かあったら理がなんとかしてくれるだろう。
そして今回の目的は新井を倒すこと、もしくはその守護霊を倒すことにあるこだが範囲が広すぎてどこに現れるかわからないので先制はとれない。つまりは諒たちは待つことしかできない状況。
そんな状況の中、奴はのうのうと堂々と宣言通り現れた。新井でなく、まるで昆虫のような、でも人の形をしている緑色の奴が…。
空中に。
しかも尻尾のようなものから小さく蝉のようなものが生まれて各地に飛び散っている。人払いの鈴で街の人は一切いないがこの無数の蝉を倒すことになると骨が折れそうだが、あの蝉を産んでいる本体を倒せばそれで済むのだろうか?
この作戦はまず守護霊は使い主が離れていると単純な行動しかできないため、守護霊だけで出てきたら近くにいる誰かが早々にそれを倒す。新井と一緒に出た場合は連絡を取り合い、全員集まるようにして迎え撃つ。
というものだったがこの場合。使い主である新井の姿はなく、守護霊だけで普通に動けている。
どうしたらいいかわからず、牧田に電話する。
「おい牧田、この場合はどうしたら…」
「諒くんか。ちょうどいい落ち着いて聞いてくれ」
「な、なんだよ」
いつもとは違いかなり慌てた感じの牧田なので少し驚いてしまった。
「花子さんがさらわれた」
その言葉に諒は持っていた携帯ゆっくりと落としてしまった。




