爆の赤竜
「本当に大丈夫なのか」
望遠鏡で篠原が入った倉庫を見ている諒が隣にいる牧田に呟いた。
「大丈夫だよ。仲間が信じられないのかい」
「そんじゃなくて。篠原が恨みに任せて相手を殺さないかと思って」
「それは篠原くん次第だよ。僕らがどうこういう義理はないと思うけど。それよりこんな離れた場所じゃなくてもう少し近づこうか」
「そうだな。何かあったら大変だし」
「なんかお母さんみたいだね」
「うっせー」
そんなやり取りをしながら二人は港へと歩いて行く。
篠原がみているのは赤い鱗。それを纏っているのは大きなトカゲ。
「これが俺の守護霊。エクスサラマンダーだ。よく覚えておけよ。今からこれでボッコボコのフルボッコにしてやるからよ」
そう宣言して瀬尾は肩にエクスサラマンダーを乗せ木刀を振るう。篠原はギリギリでかわし反撃しようと白銀を出すと瀬尾の肩にいたエクスサラマンダーが木刀の先に移動していて鱗を発射した。鱗はさらに赤みが増して爆発した。
「ぐわっ!!」
それをまともにくらった篠原は後方へ吹っ飛ぶ。膝を着いたところを瀬尾が見下ろし
「どうだ。この爆発する鱗こそがエクスサラマンダーの能力だ」
と高笑いして自慢する。
「厄介な能力だな。だが少し距離をとればどうのというこのはない。そら!!」
距離をとった篠原は白銀で足についた剣を瀬尾に放ち、能力で大きくさせた。
剣はまっすぐ瀬尾に飛んで行ったがエクスサラマンダーの鱗の爆発で防がれてしまう。
「やるな。正直者のお前に俺の守護霊の能力を教えてやる。俺の守護霊は大きさを自由に変えることができる。どうだ、これでお前の好きそうな正々堂々な勝負ができるだろ」
「そうだな。では行くぞ」
木刀の先についたエクスサラマンダーと一緒に振るい、鱗を飛ばすことなく直接爆発する。一枚一枚ではなく集まったものなので威力は絶大でよけるので精一杯。
爆発の煙で何も見えないので止むまで待とうとしたが、その前にエクスサラマンダーを肩に乗せた瀬尾が木刀を振るい迫って来た。爆発がない攻撃を難なくかわす。
どうやらさっきの大技で鱗がなくなったエクスサラマンダーは休憩させているようだ。
それならと篠原も大技を出すため白銀についてる剣を全部手元に集めて瀬尾の空中へと投げた。剣はゆっくりと落下して行く中で白銀の能力で大きくなりながら土煙をあげ地面に突き刺さった。
「やったか…」
と思った篠原は肩の力が抜けるが、次の瞬間大きな爆発で地面に刺さっていた白銀の剣が飛んで来て尻もちをついてしまう。
「な、なんだ」
ゆっくりと立ち上がった篠原は爆炎の向こうを見つめる。そのには傷一つない瀬尾と鱗がすべて戻ったエクスサラマンダーの姿があった。
「もう回復したのか」
予想していなかった事態に驚きを隠せない篠原に瀬尾はポケットから大豆を取り出した。
「驚いか。実はなエクスサラマンダーは大豆を食べると瞬時に鱗が生えてくるんだ。畑の肉って呼ばれてるから栄養満点なんだろうな」
そう言って瀬尾は手に取った大豆を一粒食べ、また木刀で襲いかかって来た。剣をすべて使い切ってしまった篠原にはもう打つ手がなくなっていた。爆発をくらい吹き飛んで行く。
何発も攻撃をくらう中、篠原は覚悟を決めた。相打ちする覚悟を。そして最後の力を振り絞り白銀で飛んで来た鱗を大きくさせた。
直後、倉庫はエクスサラマンダーの爆発によって丸ごと吹き飛んだ。




