挑戦状
久しぶりにヘラクレスさんから手紙が来た。内容は前回の自動販売機事件のことだ。驚いたことに自動販売機に盗まれたはずのBリングが発見されたらしい。
部品として使われていたのだろう。あの世界もBリングの仕業というわけだ。
Bリングは空間を操れる力を持っている。負けたものが飲み物にされるのは自動販売機自体も神具であったからだった。
これらの後始末はなんとかしてくれるそうだ。しかしこれで諒たちはやる事がなくなってしまった。
俊はペットボトルになったまま元に戻らないらしいし、燈葉の尻尾どころかなにつかめていない。
結局、部室で雑談していつも通りにルキナを護衛して帰るという感じだ。最近はルキナより諒が狙われている気がするので別に一緒に帰らなくてもいいと思ってるが万が一という事があるので続けてはいるが、最近は三雲まで一緒についてくるようになった。
そんな毎日を送っている中、諒は自分の下駄箱の中であるものを発見した。それは白い封筒に“挑戦状”と書かれた手紙だった。
後ろみると差出人は赤竜となっていた。赤竜は確か、篠原の弟を病院送りにした不良だった気がする。これはまた大きな騒ぎになりそうだ。
放課後、オカルト研究部の部室には全員が集められ机の上には例の挑戦状が置いてあった。
この赤竜はこの時期になんの前触れもなく、挑戦状を送ってくるとは燈葉の部下であることは一目瞭然だ。
だが一応書いてくれたので牧田が読みことにした。
挑戦状
不良グループ“竜の牙”の長であり燈葉の部下である赤竜こと、瀬尾 勝治は国崎 諒に決闘を申し込む。
北の港にある倉庫に明日の七時に来い。
以上が手紙の内容である。やはり燈葉の部下だった。
だがそれは問題ではない。問題は誰が行くか。手紙では諒を名指ししているが、篠原が黙っているはずがない。仲間になったのも赤竜と出会い、戦うためだ。
しかし篠原に行かせてしまうと何をしでかすかわかったものではない。
「いや〜これは行かなくちゃでしょ国崎 諒くん」
牧田はそんなことを篠原に向かって言う。
「え?」
「わからないのかいつまり君が言ってことだよ。篠原くん。いや今は諒くんになってもらはないとね」
「つまり、篠原が俺になりきって戦って来いってことだろ」
「さすが、よくわかってるね。諒くん、いや篠原くん」
「お、お前ら…ありがとう」
篠原は涙をこらえるので精一杯でいつもの大きな声は出なかった。
午後七時北にある港に着いた。倉庫が幾つもあって最初はどれかわからなかったが一つだけ多くの不良が集まっているところがあったのですぐにそこだとわかった。
篠原は堂々とその倉庫に入って行った。中には外とは違い、一人だけしかいなかった。
彼がこの不良グループのリーダーの赤竜。篠原の弟を病院送りにした人物である。
「お前が国崎 諒か?」
木刀を持った金髪男が近づきながら質問してくるので
「ああ」
篠原は牧田に言われたように嘘を言った。
「そうか、いいか俺は俊の野郎とは違う。お前の守護霊の能力も聞いてないから安心しな。勿論、外の奴らは手を出さないように言ってある。全力でかかって来な」
「当たり前だ手加減なんてしない」
篠原は復讐心と仲間への感謝を込め拳を握る。




