イエロー・フット
自動販売機の中、黄色い足は素早く確実に諒と三雲に蹴りをいれる。二人とも必死に避けようとするが、防御するのが精一杯の状況。
しかも相手には一発も攻撃を当てられていないという始末である。この状況を打開するため一旦、距離をおこうと諒は俊がいる場所と逆方向へと一気に走り出した。
俊はすかさず追いかけるが三雲の磁石玉を道にあるものに当て自分たちには別の磁石玉をつけることで引き寄せられるようにひて、それの繰り返し行い森の中へと逃げ込んだ。
俊も森の中へ入るが敢えて探さない。実はもう俊は諒の守護霊の能力を知らされていた。
それを警戒して安全策を取るのは当たり前。ここで身構えていれば必ず来るし、イエロー・フットの素早さがあればどんなことでも対処できる自身がある。そして、やはり諒が姿を現した。
「おっと、そこから動くな。一歩でも動いたら回し蹴りぶち込むぞ」
イエロー・フットに回し蹴りをさせて威嚇するとピタリと止まった。この距離ならいきなり攻撃されても対応できるし、俊からしてみれば偽物かどうかを見極めるに十分な距離でもある。
確かめる方法はただ一つ。頭の上にある数字があるか、ないかで決まる。俊の目の前にいる諒にはちゃんとそれがあった。
つまり本物。これで後、警戒するべきは三雲となった。彼女の能力はとても厄介。
見渡して何処かに潜んでいないか捜す。すると三雲は草むらの中から立ち上がり一発の磁石玉を俊に放つ。しかし、俊はイエロー・フットで自分を動かし攻撃を避け磁石玉は後方へと流されてしまった。
「はっ!残念だったな。お前たちの能力は既に把握済みだ。簡単に対処できるさ」
「それはどうかな」
今まで黙っていた諒がいきなり口を開いた。その瞬間、俊は後ろから誰かに掴まれる。
俊は予想だにしないことに驚き後ろを向くとそこには諒の守護霊のディスガイズがいた。
「なんでこんなところに…」
「三雲がさっき放った磁石玉だ。あれに化けてお前に接近させたんだ」
そう諒が説明していると本物の磁石玉を俊の腹に一発当て、俊の数字が一つ減った。
「し、しまった!」
「もう逃げられないぜ。あと999発か。じっくりたっぷりあじわってもらうぜ」
諒の両手にはあらかじめついていた俊と同じ色の磁石玉。それに吸い込まれ千あった数がじわじわと減っていく。
「こ、こんなはずじゃぁぁぁーーーー!!」
ガコン。
自動販売機からは“市原 俊の天然水”といくペットボトルが出てきた。
諒と三雲は無事に自動販売機の中から出れた。春芽の話によるとお釣りがでてくるところから現れたらしい。
そして牧田も元に戻っていて一件落着。“市原 俊の天然水”はヘラクレスさんに渡すことにした。
ついでにこの自動販売機も調べてもらう。なに一つ問題はないかに見えたが、一つ。三雲の機嫌がなおっていないこと。
「どうせ先輩は春芽さんの方を頼りにしてるんでしょ。あの時、迷わず電話したしここを任せたのだって…」
「いや違うんだ。俺はお前を信頼してるから一緒に自動販売機に行ったんだ。お前の守護霊の能力は俺が一番知ってる。俺が教えたんだからな。それを考慮して俺は三雲ならもっと強くなれると思ってるだ。そしてまた俺を助けてくれた。確実に強くなっているんだ。もうお前になら背中を預けられる。それぐらい信頼している」
「ほんと…」
「ああ、本当だ」
「な、ならいいんだけど」
また三雲は顔を見せないように背を向けながら答える。それもそのはず三雲の顔は嬉しさのあまり真っ赤でイチゴみたいになってるのだから。
これで三雲の誤解が解け、機嫌もなおった。しかし問題はなくならない。
春芽から妙に殺気立った視線を感じる。さっき何かいけないことを言ってしまったのだろうか?
一つ言えるのは春芽の機嫌も簡単になおりそうにないとうことだけだ。




