気高い鳥は天を駆ける
ボスによってビルの一番下まで連れてこられた。土煙が止み諒は目の前にいるボスに気づく。
「なぜ俺をここに」
「我は慎重なんだ。まず一番厄介そうなお前さんから殺って、上にいるお仲間さんも順番に一人ずつ殺っていく」
「カラスのお前が俺に勝てるわけないだろ」
途端、ボスはその言葉に怒ったようにくちばしが四つに別れる。
「カラスか人間かなど関係ない。生きて意思を持って行動している。勝敗はわからない」
大きく四つに裂けたくちばしが開き黒い渦のようなものが現れたと思ったら、渦は諒を引きつける。
「な、なんだ!?」
諒は足で踏ん張るがジリジリとボスの渦へと引きづりこまれ始める。
「これがBリング本来の力。他の奴らとは格が違うぞ」
ボスは大口を開けたまま、諒の招来をただ歯を見せながら優雅に待てばよかった。
一方、篠原たちは未だ身動きがとれない状況でカラスは一行に現れてこない。彼らはボスの意図に気づいていて、時間稼ぎをすることにしていた。元々彼らは昔から交流があり、お互いのことを知り尽くしてたからそれがわかったのだ。そして彼らは空間移動ができる。だからこそ篠原に一撃を難なく当たれられた。
しかしボスから授かったBリングの力も万能であるわけではない。空間移動するには別空間を移動しなくてはならないのだが、いつもの空間より身に負担がかかり長時間長居することはできずいつかは姿を現せなくてはいけない。
その後、呼吸を整える時間がいるのだが篠原たちは決してそれを見逃さないであろうとカラスたちは別空間内で作戦を立て別々に出ることにした。
まずは一羽。まだ時間に余裕はあるが早めに手を打ちたいので出動した。それを三雲は磁石玉を連射するがあまりの速さに一発も当てられない。
そして間髪を容れず二羽目が出動し、撹乱を開始する。ルキナと春芽も足を怪我している篠原をカバーするために攻撃を開始するがやはり避けられてしまう。結局、三雲の磁石玉が一発当たった程度で別空間へと逃げられてしまった。
「ふう、なんとかなったな」
カラスたちは別空間でみんなで集まり一息する。
「しかし一発当たってしまった」
一羽のカラスが青い玉がついた羽を見る。
「だが飛べるんだろ?だったらまた少し経ったらもう一回行くぞ」
「まて何かくるぞ!」
目に傷があるカラスが自分たちに近づいてくる何かに気がついた。それは春芽の守護霊、泥鮫。
「馬鹿な、一体どうやってこの中に」
泥鮫には一羽に当たったのと同じ磁石玉が背中についていた。
「あれの仕業か。逃げるぞ」
「駄目だ間に合わない。俺が囮になるお前たちだけで逃げてくれ」
磁石玉かついたカラスはそう言うが泥鮫は分裂し、口の中に仕込んでいた白銀の剣を吐き出しそのタイミングに合わせて篠原は元の大きさに戻りカラスたちに突き刺さる。
「手応えありだ。これで後は諒がやってくれのを待つだけだな」
篠原がそう呟くとビルが揺れた。
「な、なんだ!?」
ビルの真ん中から大きな棒が突き出て天井をも貫き外へと出た。棒の先端には口をあんぐりと開けたボスの姿が。
外にいたカラスたちはそれを見て大慌てする。
「みんな無事か?」
諒が階段から上がってきた。
「諒、一体なんなんだこれは」
「ああ、これはディスだよ。こうでもしなかったら俺が吸い込まれてたからな。代わりにディスをあいつが吸い込める限界以上の大きさにしたんだ」
諒はふと、自分が壊した天井を見上げる。空ではボスを失ったカラスたちがぐるぐると周り 、その辺りは空は黒色に染まった。
「まだ、あいつを殺せないのか?」
燈葉は拠点としている錆れたところで黒いマントを羽織った男に背中を見せながらしゃべっていた。
しかも諒が戦った時とは違い、妙な服をきていた。それは気配を遮断できる神具で、未だにヘラクレスたちが見つけられない主な原因でもある。
「申し訳ありません。少々手こずってしまいまして…」
マントの男は深々と頭を下げる。
「お前のせいではない。俺があいつらを甘く見ていただけだ。そうだな次は俺の直属の手下たちに行かせる。お前はその報告と決められた仕事をこなしてくれればそれでいい」
「了解しました」
燈葉の命令に従い、男はマントを翻しあるものたちへと会いにいった。それは燈葉が認めた実力者たち。
ついに彼は諒に牙を立てる。




