カラスの野望
花子さんは11区の廃墟のビルの中に神具をつけたカラスが入っていたことを牧田に報告していた。
諒たちはまんまとカラスの罠にはまり数え切れないほどの囲まれてしまっていた。少し外に出ようとしただけでボスの神具に強化されたカラスたちが追撃してくる。
しかし、妙なことに本格的な攻撃ではなくここから出さないようにするための最低限の攻撃のみ行う。それ以上もそれ以下もしない。
「なんだこれ」
妙な不安にかられ始めたその時諒の携帯がなった。もちろん相手は牧田しかいない。
「やあ、今頃はカラスさんの罠にはまっている頃かな?」
「なんでお前それを。まさか知ってて俺たちをここに行かせたのか!」
諒はカラスが騒ぎ出すほどの大声で電話越しの牧田に言う。
「まあまあ落ち着いて。これは必要なことだったんだよ。国崎くん」
牧田が苗字で呼ぶ時は、オカルトモードであれ真剣な時だけ。それを知っていた諒は少し考え直した。よく考えてみれば牧田は意味のないことはしない。となればこれも必要なことだったのだろう。
「で?何かわかったのか?」
「まあね。今からいう場所に行ってほしい。そこにボスはいる」
「おいおい。ここから出るのどれだけ大変だと思ってるんだよ。だがカラスなんかに負けていられねーからな。みんな行くぞ目指すは11区だ」
諒の掛け声で一斉にカラスの壁へと突き進んだ。
※これからはカラスたちの声を訳しますが実際は神具を持っているボス以外はしゃべれません。
廃墟のビルの六階ここに大量のゴミ袋と数羽のカラスが集まっていた。集めたのは神具をつけているボス。集められたのは他の区を治めている区長、六羽のカラス。
「ここに集めたのは他でもない。この町を人間どもから奪い取ることについてだ。この足についているBリングというものは強大な力を持っている。これさえあれば人間など一溜まりもないだろう」
ボスは余裕な態度をとる。
「何か策はあるのか?」
左目に傷がある区長が口を挟む。
「簡単なことだ。この地域一帯をゴミだらけにして人間が住めない環境にしてやればいい」
「そのためにこれだけのゴミ袋を集めたのか」
「そういうことだ。しかしこの作戦にはかなりの数が必要だ」
「つまり手を組めと」
「手を組む?いいや我の部下となりついて来い。この町は野望の第一歩にすぎない」
「野望?それはなんですか?」
「人間に奪われた全ての領地を奪い返し、我々だけの楽園をつくる」
ボスの野望にその場がざわめいた。
「そんなことが…」
「できる、やなくては。何も知らずにのうのうと生きている人間に知らしめるにはそれしかない」
「そりゃまた、カラスにしては大きな野望だな」
「誰だ!?」
扉にはカラスではなく人間。諒とその一行。
「馬鹿な!お前たちは我の手下に足止めされているはずだ」
ボスは悔しがるような顔をする。
「残念だったな。不思議な力を使えるのはお前だけじゃないんだぜ。見なこれを」
諒はディスをある姿へと変えた。それは足に神具がついたカラス。
「どうだ。写真を見ただけだからあまり自信はなかったんだが。これで奴らは混乱して包囲網は解けたんだよ」
「ちっ、人間風情がぁぁ!邪魔をするな!!」
カラスとは思えないボスの咆哮のような叫びに一瞬たじろぐが諒たちはひかない。
「おい貴様ら、ついさっき力を分け与えてやったんだ。決して逃すなよ。そいつらはゴミにして町にばらまいてやる」
今まで確証はなかったがボスの話によると、やはり味方に力を分け与えられる神具のようだ。区長のカラスはボスの言いなりになり、諒たちを襲ってくる。目はとても鋭く暗い色をしている。よほど人間を憎んでいるのだろう。
「お前はこっちだ」
ボスは諒をくちばしで体当たりし、下へと落としていく。
「諒!」
ルキナは駆けつけようとしたが区長カラスたちに阻まれた。
「ここは通さない」
彼らからは人間にあるかのような威圧感が漂ってくる。そしてそれぞれ地面に黒い穴を出現させ、その穴に飛び込み消えた。
「気をつけろ。どこからくるかわからねぇ」
篠原はみんなに警告するが、いきなり出現したカラスに足をつつかれた。カラスとは思えないその攻撃力に五百円玉ほどの穴が空き血が溢れ出る。あまりの痛さに篠原は膝をつく。
「クソ!」
篠原たちは諒を助けに行くどころか、一歩も動けないピンチ状態になってしまった。




