黒い刺客
地縛霊から普通の霊となった花子が仲間に加わりオカルト研究部はかなり賑やかになった。
今日も諒は部室のドアを開ける。そこには牧田となぜかフリフリのメイド服を着ている花子がいた。前来た時はこんなの着ていなかった。
「おい。牧田これはどいうことだ」
「いやいや。これが花子さんの仕事だよ。ここの掃除とか雑用を任せているだよ」
「だからってなんでメイドなんだよ」
「わかってないなー。男のロマンを。知っているだろ僕が女と霊にか興味がないことを」
「あ、ああ」
「僕にとっての幽霊少女は宝石なんだよ。だからメイド服を着させる。いくら君でも僕を止められない。あ、でもロリコンってわけじゃないから」
「あっそ。勝手にしろ」
何だかバカバカしくなってきた。花子さんも満更でもなさそうなので放っておいてもいいだろう。
「そんなことより例の写真を見せてくれ」
諒は部室に来た目的を話す。もちろんいつもの通り牧田に呼び出されたのだ。
「まぁ、そんな慌てない。全員集まったら見せるから。今回は一人でも多くの人手が欲しいからね」
仕方なく花子さんが入れてくれた紅茶を飲むながら全員の集合を待った。全員が集まったのは諒が来てからの十分後だった。
「よし、全員集まったようだね。ならこれを見て欲しい」
牧田はホワイトボードに写真を貼る。その写真には一羽のカラスが写っていた。
「このカラスがどうかしたのか?」
「カラスの足をよく見てくれ」
みんな一斉に写真を覗き込む。すると足には何か指輪のようなものがついていた。
「僕が思うにこれは神具じゃないのかな」
牧田はルキナに視線を送る。
「はい。多分そうだと思います」
牧田の意図を察し、真剣な顔つきでルキナはそつ答えた。
「やっぱり。これは彼の仕業だろうね」
牧田の言う彼とは黒羽 燈葉である。
「でもこいつが何をしたんだ」
「このカラスは町中のゴミを盗んでいるんだ。まだ大きな騒ぎにはなっていないけれど、それも時間の問題だろうね。そこで君たちに手伝ってもらいたいんだ」
全員の答えは決まっていた。
日曜日の大井山町。諒とルキナの二人は諒たちが住んでいる12区の隣に位置する13区のゴミ置き場の前にいた。他のみんなもそれぞれ指定されたゴミ置き場の前にいるだろう。
囮ののゴミを持って。
今回の作戦はゴミを囮にしてカラスの巣を見つけ、写真のカラスを倒すことだ。かなり多くのゴミが盗まれているので場所は限られているが未だ住処が見つからないのでこの強行作戦となった。
この作戦には花子さんも参加してくれた。みんなのために何かしたいと言ってくれたのだ。戦うことはできなくともカラスの追跡ぐらいはできると言ってくれた。
奴らかがくるではみんなそう思っていた。
囮のゴミを置いてから二十分後、牧田の電話が鳴った。かけたのは春芽。
「すまないカラスに逃げられた」
その後も次々と同じような内容の電話がきた。ただ一つ違ったのは篠原の電話。牧田は一旦みんなを部室に集めて話を整理することにした。
「じゃあ、それぞれ報告をしてくれるかな」
「カラスがいきなり現れてゴミを盗んで行って、それを追いかけようとしたが尋常じゃない速さで逃げられたんだ。多分神具をつけたカラスなんじゃないのか」
「いや、それはない」
諒の考えを否定したのは三雲だった。
「私の時もそうだった。みんな同じ時間に盗まれたし、神具をもったカラスは一羽だけなんでしょ。ならもっと他の考え方をした方がいいんじゃない」
「そうだね。僕は仮に神具をつけているカラスをボスと呼ぶとしよう。で、そのボスは他のカラスに自分の力を分け与えたんじゃないのかな。でないと、こんなことにはならない」
「でもそれじゃあ今回は無駄骨だったのか?」
諒は不満そうな顔する。
「いや安心しろ諒。俺の白銀の剣をゴミ袋にいれておいた。あれは白銀の体の一部だからだいたいの場所はわかる」
篠原は自慢げに胸を張りその言葉に感嘆の声が上がった。
「よし!なら早速カラスの住処にいくぞ」
椅子から立ち上がり部室から出ようとすると牧田が
「相手はただの鳥じゃあないからね。しかもずる賢いカラスときた。くれぐれも罠には気をつけて」
そう言い残しはいつものように一人寂しく部室に残る。
諒たちとは別に花子さんには別の区のカラスの様子を見に行くという新しい任務が課せられた。
諒たちの五人は篠原の守護霊、白銀の体の一部の剣を発信器の代わりに使いカラスの住処へと歩みを進めていた。そしてなぜかカラスとは無縁のはずのマンホールの下にある地下水道へと来ていた。
ここだと篠原の言葉を信じるが、カラスたちはどうやってここにゴミ袋を運んだのだろう。それもボスに与えられた力を使ったのだろうか。
とにかく細い道をひたすら歩く。すると広い場所へとたどり着いた。その真ん中には幾つかのゴミ袋が無造作に置かれていた。
篠原は袋の中に手を突っ込み剣を取り出した。カラスの住処はここで間違いない…はずだ。諒はやはり何かが引っかかる。
「おい。ゴミ袋少なすぎないか」
「いや。そんなことないだろ俺たちの分はちやんとある」
「いや、そっちじゃない。今まで盗まれたものだ。普通住処とかに保管するだろ。何かまずい気がする出るぞ」
諒は今来たところから引き返そうとするがそこには黒い壁ができていた。その黒の正体はカラス。他に道はないかと周りを見渡すが既に黒一色で包囲されていた。
諒は牧田の言葉を思い出す。神具を手にいれてもカラスたちはずる賢さは残っていたのだ。




