始まりの出会い
学校の帰り道 国崎 諒は後ろから霊に追われている。自分が変わっているところは、と聞かれたらまずは黒髪で歴とした日本人なのに赤い目をしていることを言うだろう。
だが、それ以外はだいたい普通の高校二年生だ。いや、普通じゃなかった。嘘ついてすみません。俺は霊に好かやすい体質だった。金縛りなんて何度あったかわからない。
とにかくパーカーの服を着ていて身体中に包帯を巻きつけて真ん中に四角い穴がある仮面までつけて、宙に浮きながらフワフワとゆっくり近づいて来る人型の霊に追われている。
悪霊なのかどうかわからない。ただ追ってくるだけ。それが恐ろしくてたまらない。霊なので扉や壁などをすり抜けてどこまでも追ってくる。
とりあえず深呼吸して落ち着いてからある人に電話する。
「やぁ、どうしたんだい。僕に電話してくるなんて何かあったの?」
牧田 洋二。彼は俺が通っている高校にあるオカルト研究部の部長をしていてオカルトのことについてはかなり詳しく俺が霊のことで悩んでいた時に助けてくれた恩人であり同じクラスの友達でもある。
「牧田か実は……」
今の状況を事細かに話す。
「なるほど…。もしかしたら背後霊かもね」
「背後霊?」
「もしくは守護霊の類だろうね。君に危害が加わっていないならきっとそうだ」
「確かに何もされてないけど。背後霊と守護霊って一緒じゃあないのか」
「全然違う。背後霊ってのは行動を監視したり運気に影響を与えるだけで何もしないんだけど、守護霊は特定の人物、事柄、場所を守護するだ。もし、君を守るような行動をしたのなら間違いなく守護霊だろうね。どちらにしろ君に危険が及ぶことはない。安心してくれ」
「だけど気になって仕方ないんだよ」
「なら、せめて背後霊か、守護霊を確かめてみたらどうだい。ちょっとしたことでも反応するはずだと思うよ」
牧田が言いたいのは自害してみろと言っているのと同じだが、寸止めすればいいだろと思い周りに誰もいないことを確認して足元にあった石を自分の頭目掛けて振り下ろす。
寸止め、の前に霊の腕が止めていた。
「牧田、どうやら守護霊らしい」
「それはめでたい。守護霊は個人をあやゆる不幸や災害から守ってくれるからね。頼もしいボディーガードができたと思えばいいさ。慣れれば自分で動かせるようにもなるからね」
何とも適当なことだ。牧田は俺など、どうなってもいいのだろう。あいつは霊と女しか興味がないからな。だが、この霊が危険ではないことはわかった。ならやることは決まっている。
「帰るか」
持っていた石を地面に投げつけ、守護霊と一緒に我が家へと向かう。
「ただいま〜」
帰ってきたのは我が家といっても第二の我が家であるマンションの一室。今通っている高校は実家から遠いのでここで一人暮らしをしている。あるのはテレビ、ベッド、冷蔵庫など必要最低限のものだけのちょっとさみしいところだ。
だが今日は守護霊がいる。いやこれからはと言うべきだろう。
まず明日の準備をする為に部屋に入るとそこにはガラスの破片が飛び散り、そこに見知らぬ女の子が倒れていた。
「うわ!何だこれ?」
諒の声で倒れていた女の子が起きる。長い金髪、吸い込まれそうな青い目。豊かな胸にくびれた腰、艶のある肌。それに見たことがない奇妙な服を着ている。見たところ目立った怪我はないようだ。
「あの〜、大丈夫?」
彼女の手を取りガラスの破片から遠ざ、ベットの上に避難させる。
「もしかして、あなたが国崎 諒?」
「え、何で俺のこと知ってんの!?」
「私は女神ユノ・ルキナ。あなたを神にする為にきたの」
「は!?神?」
守護霊のことでどんなことでも驚かない自信があったのだがそれは一瞬で消え去った。
「そう神。詳しくは冥府の神、ハデス。神になったら何世紀でも生きられるし、すっごく強くなれるよ。どう私と組まない」
「嫌、めんどい」
「ええーーー!!でもそうしてくれないと私困るんだけど」
「困る?」
「うん、私は出産の神で私が子供を生むとその子供は絶対的な力と永遠の命を手に入れることができるの。神は一度だけ転生を許されているから、私の子供に転生して力と永遠の命を手に入れようと襲ってくるから母の言い伝え通りあなたを頼ってここまで来たの」
ルキナは上目遣いで長々と説明しくれたがそのおかげでだいたいのことはわかった。
「でも、俺を神にするのと関係あるのか」
「ありありです。ハデスは転生を却下できる唯一の神。ハデスが亡くなった今、野望を持ったものはこの機会を狙い、私を狙ってきます。ですがハデスさえ復活したらこの騒動は収まります。そしてハデスになることができるのは今のところあなたしかいません」
「あ〜つまり、助けて欲しいってことだろ。なら回りくどいこと言ってないでそう言えばいいんだよ」
「え、助けてくれるの?」
「ああ、俺には頼もしいボディーガードがいるからな」
俺は後ろの仮面をつけた守護霊を親指で指す。
「何て名前?」
「へ?」
「いや、だから名前は?」
そう言えば名前なんだろ。また、牧田に……、てあいつが知っているわけないか一体誰に聞けば
「ディスガイズ」
何処からとも無く声が聞こえた。ルキナを見るが首を横に降る。となると、あとは一人しかいない。
守護霊自身がしゃべったのだ。
「お前ディスガイズっていうのか」
諒は確認の為、守護霊にそう聞いてみると首を縦に降る。
「ちょっと長いからディスって呼ぶね」
ルキナはそう言うので諒もそうすることにした。
「あ、諒。私明日から同じ学校行くことになったからよろしくね。じゃあね」
そんな不吉な言葉を残してルキナは嵐のように去って行った。
「このガラスの破片はどうすんだよ」
仕方ないのでこの後、諒はディスと後片付けをするこにした。これが守護霊との初の共同作業となってしまった。