7話 休息
砦の中で過ごす休日は予想通りつまらないものだった。
砦の外に探索に出ようにも入口で門番に止められるし、かと言って砦の中に遊戯室があるわけでもない。
仕方ないので素材だけ持ってきているもので新しいポーションを製造したり、アクセサリーなど簡単に作れる鍛冶製品を作ったりしていた。
そんなことをしていても時間がかなり進むわけでもなく、手持ち無沙汰なほかの職人連中と集まって会合という名の宴会を開くことにした。
まぁ有名なことではあるがドワーフは酒に強い。
おかげで魔族の職人達が酒に酔っていく中、ドワーフが多い鍛冶連中はなかなか酔わない訳だ。
酔った連中が退出していってドワーフ数十人しか残っていない宴会場跡では少し真面目な会議が行われていた。
「今回の魔窟侵攻だが俺たちの武具を提供している兵士達もいるよな」
「ああ」
「ある意味俺達はそれを着ている兵士たちがどの程度魔物の攻撃に耐えられるかを実験する機会を与えられたようなものだ」
「まあな。だからといって簡単に死なれちゃデータは取れても悲しいだけだがな」
「その通りだ。だから出来るだけいい製品を渡しておいた」
「でだ、この中で通常の方法で整備できない武具を提供したものはいるか」
話を切り出したドワーフはそう言うと辺りを見回した。
ちなみに俺のは通常の方法では整備しづらい。
目立ってしまうがそれを伝えなければいけないだろう。
「俺のところのは一般的なやり方だと整備しづらいな」
「ほう」
話を切り出したリーダー的なドワーフの目線が鋭くなった気がした。
「それは作業効率が落ちるということか。それとも性能が落ちるのか」
「両方だな。性能の方はそれほど大きなものではないがそれでも一般的なやり方だと整備のたび落ちるな」
「そうか。ならお前は自分の提供した鎧を着た部隊の整備しろ。ほかのやつは1つの中隊に1人づつついて行ってせいびをたんとうするんだ。いいな」
「「「おう!」」」
他のドワーフの返事が綺麗に揃って聞こえた。
どうやらこのドワーフは凄い人みたいだ。
ほかのドワーフと一緒に考えると後々痛い目にあいそうなので、尊敬を込めて雰囲気から親方と心の中で名付けた。
そのまま会議は終了し、部屋に帰ろうとすると親方に呼び止められた。
部屋に来いということだそうだ。
いきなりお呼び出しとは怖いものだ。
だが断る理由もないし、怖いもの見たさでついて行くことにする。
部屋に着くと親方は俺に椅子を進めてくれ、酒も出してくれた。
本格的にお話をするようだ。
「お前の作った鎧は見せてもらった」
「あ、ありがとうございます」
急にそんなこと言うから少し返事するときに噛んでしまったじゃないか。
会議の時は知ってそうな素振りは見せなかったのに…
「話は変わるがお前さん、人間の国では赤ん坊が生まれた時どうするか知っているか」
「いえ、知りません」
いきなり何の話を始めるのだろうか?よりにもよって人間の国とは…このおっさん酔ってるんじゃないか?
その思いが顔に出たのか親方に睨まれた。
ちょっとというかかなり怖いです。
「教会に連れて行くんだ。そこで昔は生まれた赤ん坊が勇者の適性があるかどうか見ていたそうだ」
「昔はというと今はどうなっているんですか」
そう、人間といえば魔王様に戦いを挑む勇者を送りつけてくる存在というのが一般的な認識だ。
その選別作業を生まれた時にしていると聞いたときは納得したが、今はどうしているんだ?
確かに最近は勇者がこちらに来るということも全く効かなくなったが………
「今はなヴァント帝国と人間の国の国境の北にあるアースという都市国家に住むことが許される存在かどうかを見ているらしい」
「アース、ですか」
正直聞いた覚えもない国だ。
都市国家というのだから小さい国なのだろうが帝国の隣国で名前を知らない国なんてそうそうない。
「お前は重さの単位のグラム、長さの単位のメートル、そして1日が24時間で1年が365日っていうのはきにならなかったか」
「いえ、昔の方がそう決めたものだと思っていました」
「これはそのアースという都市国家の押し付けだ。まだ俺が子供だった頃は別の単位が使われてた。もちろん今となっては使う者などいないがな」
「なぜそれを押し付けたんですか」
「これも自分たちの街に住む資格があるものかどうかわかり安くするためらしい。ちなみに帝国ではその街に行くかどうかは自由らしいが、人間の国に生まれると絶対に行かなければいけないそうだ」
「そうなんですか。というかよくそんな無茶苦茶な事できますねアースって国は」
「なんでも軍がめちゃくちゃ強いらしいぞ。当時敵対した国々のトップは全世界が的にまわっても彼らなら勝てるだろうと言っていたらしいしな」
「滅茶苦茶な話ですね」
全世界を相手に戦える戦力、魔窟にいる魔物たちよりもよっぽど強いのだろうな。
でも、今なぜこの話をするんだ?
「今なぜこの話をするのかと思っただろう。実はな俺は昔一度だけアースという国に行ったことがある。その国で目にしたものは全て今までに見たことのないようなものばかりだった。そして彼らが着ていた武具をせめて真似ることができないだろうかと思ったんだ。結局思いだけで結果はついてこなかったがな。だから、あの技術は真似ることもできない高度なものだと思っていた。そんな時お前の鎧を見たんだ。正直目を奪われた。昔アースという国で見た鎧に似ていたし、性能も今使っているものよりも段違いにいい。だから、お前にはこの先、この技術を発展させてもらいたい。それが言いたかったんだ。」
「そうなんですか。どこまでできるかわかりませんが俺もできるだけ頑張ります。まだまだ今作っている鎧は進化させられると思っているので」
この後親方から一般的な鎧の作り方や整備の仕方について色々なアドバイスを受けた。
どうやら親方に気に入られたようだ。
数時間後に解放された時には疲れも大きかったが、他の鍛冶師の尊敬を集める親方に認められたことが嬉しかった。
明日はいよいよ魔窟侵攻が始まる。
さっさと自分の部屋に帰って寝ることにしよう。
名前:デューイ
種族:ドワーフ
契約精霊:火(下位) 水(下位) 土(下位) 雷(下位) 風(下位)
職業:遊人Lv2 鍛冶師Lv38 上級調合士Lv8 狩人Lv5 釣り人Lv10 商売人Lv9 錬金術師Lv8 料理人Lv2
ユニークスキル:鍛冶Lv38 鎚Lv3 酒豪
スキル:調合Lv8 水泳Lv1 槍Lv1 釣りLv10 話術Lv14 取引Lv9 錬金術Lv8 料理Lv2
装備:作業服
間違い等ありましたらご連絡ください。




