2話 定職に就いたら負けかなと思ってる 薬屋編 前編
最後まで読んでいただければ幸いです。
5/11 木の鎚の性能を変更
5/12 一部表現を訂正しました。
5/27 ステータス変更
朝食を済ませ、外出の準備を済ませるとデューイは早速近所の薬屋に向かう。
向かった先にあったのは褐色肌で肩まで伸ばした銀髪が綺麗な可愛らしい女性ダークエルフが経営している薬屋だ。
「シュリさん、おはようございます。」
「よく来たねデューイ、さあ制服に着替えてちょうだい。」
そう言われて店の奥のシュリさんの自宅の方に連れて行かれ、そこで制服を渡すと仕事を先に始めておくと言ってシュリさんは店の方に帰っていった。
着替えを済ませ店に戻ると、来た時には置いていなかった薬やその材料が置かれていた。
「さあデューイ、給料分は働いてもらうわよ!」
とにこやかに宣言され、仕事が始まる。
最初は開店時に出しておかなければいけない商品を店に並べたり、実際に店内で調合する薬の材料を倉庫から持ってくるところから始まる。
それが終わると次は実際に簡単な薬から調合の練習が始まった。
この作業が始まるまで、作業場に置かれていた乳鉢などから材料をすり潰したりしながら薬を作るものだと思っていたのだが、実際には、調合しづらい材料を調合するときは粉末状に砕いたり、水などに溶かしたりするそうなのだが、普通はスキルで調合するそうだ。
しかしデューイは調合スキルは持っていない。
どうするのかというと、
「まずこれを一冊読んでね。」
可愛らしい笑顔でシュリさんが渡してきたのは厚さは30cmほどあろうかという分厚い1冊の調合書だった。
しばらく読み進めていたのだが、シュリさんの笑顔は素敵なんだけどこの厚さは流石にないだろ…とあまりの本の厚さに落ち込んでいるとそれに気づいたのかシュリさんが声をかけてくれた。
「まあそれ1冊読めば初級だけじゃなくて中級までの全部の調合できるようになるから頑張って読みな。」
とこれまたにこやかに教えてくれた。
中級ってくらいだからそこそこ便利だとは思うけどこれ1冊はなかなかきついものがあるな…、途中で理由つけて逃げ出すのもありかな…などと考えながら読んでいると、
「ああ、そうそうルーイが言ってたのだけど、工房の仕事が一段落するまで帰ってくるなって。それまでは家で泊めてあげるからじっくり薬の勉強していきな。」
「え?じゃあいつごろ家に帰れるんですかね?」
「んー、最低1ヶ月は無理だって言ってたわよ。だから1ヶ月間みっちり調合のお勉強ね。」
シュリさんは楽しそうに言っているがデューイにとってはベッドの上で日がな1日ゴロゴロすることができない以上地獄でしかない。
こうしてデューイにとっての地獄の1ヶ月は始まった。
最初の3日間はひたすら調合書と格闘した。
調合書を読み終わると、頭の中でファンファーレが鳴った。
『スキル 調合Lv4を獲得しました。』
『職業 中級調合士Lv4を獲得しました。』
『それに伴いレベルアップしました。』
どうやらレベルアップしたようだ。
ちなみに調合スキルはLv2までが初級調合士、Lv3~5が中級調合士、Lv6~9が上級調合士、Lv10が最高で王級調合師と呼ばれる。
また、シュリさんによるとになった後も努力を重ねていくと、調合Lv10だったスキルが調合王になるらしい。
そうなると、呼び名が神級調合師になるそうだ。
4日目からはついに調合を行うことになった。
調合のやり方は結構簡単で1つの容器にすべての材料を入れたあと、そのよう気を両手で持って《調合》と念じてやれば容器の中の素材が一瞬光に包まれ、調合は完成する。
自分の扱えるレベル以下の調合であれば成功するし、失敗すれば何か黒いスライムみたいなものができるから、成功か失敗かもわかりやすいのが調合のいいところだ。
さて、ここまで聞くと誰にでもできそうに聞こえる調合だが、なぜあまり一般家庭で行われず、このように薬屋が繁盛しているかというと、理由は4つある。
1つ目は調合書自体が高いこと。
これはどうしようもない問題だが、本自体が手書きのためどうしても値段が高くなる。どれくらいかというと、金貨3枚になる。
ちなみに1フィル=銅貨1枚、100フィル=銀貨1枚=銅貨100枚、10000フィル=金貨1枚=銀貨100枚=銅貨10000枚である。
また、1フィルは日本円にすると10円くらいの価値があるので、日本の感覚で言えば調合書の値段は30万円になる。
流石に一般人は買うのをためらう値段になる。
2つ目は調合素材が高いこと。
買うとなると安い薬草をとっても1束で銀貨1枚ほどかかってしまう。安いものでこの値段なのだから高いものになると金貨数十枚はざらにある。
3つ目は調合素材の採取の難しさにある。
調合素材が買えないからといって採取しに行こうとしても、調合素材があるような場所はモンスターが数多く生息するような場所が多く、一般人は近づけない。
4つ目は調合時の魔力消費の問題だ。
調合を始めてから知ったことなのだが、初級なら3、中級なら6、上級なら12、王級なら24、神級なら48と1回の調合で消費する魔力が大きくなる。
そうなると、1日に何回も調合をするのは難しくなる。
基本的に魔力回復は遅いものでも魔力量によらず、1日で満タンまで回復するスピードがあるが、魔力量が少ないと、1日あたりにできる調合の回数が少なく、十分な回数両合することができない。
そのような理由から調合士は重要な仕事になっている。
ところで、デューイのように魔力の少ない者が調合士をする場合は調合士用の魔力増幅用のアイテムを使って魔力の最大値を上げる必要がある。
そこで、デューイのためにシュリさんは魔力+50の中級調合士の指輪をくれた。
おかげで何度も調合することができるし、自分の魔力量も上がってよかったと思っていたデューイだったのだが、実はこの時調合士に調合以外にもう1つの仕事があることを彼は知らなかった。
調合士のもう1つの仕事それは、素材集めである。
調合素材は高いので、街の外に出て自分で探してこようということである。
シュリさんの場合は週に1度街の外に出て、素材を集めに行くというのだが、街の外は魔物が徘徊して危ない。素材集めの話を聞いた時点でデューイは行きたくないので、
「シュリさんいってらっしゃい。店番は僕がやっておきますね。」
と言って逃げようとしたのだが、当然のことながら逃がしてはもらえず、
「いやいや、デューイも行くんだよ。たまに散歩に出かけようじゃないか。」
と笑顔でいわれ、渋々ついていくことになった。
そのまま、防具や武器はシュリと一緒に近所の武器屋に見に行き、初心者冒険者用の装備を揃えた。
そしてその後、そのままギルド本部に行くことになった。
名前:デューイ
種族:ドワーフ
職業:遊人Lv2 鍛冶見習いLv1 中級調合士Lv4
レベル:7
体力:23/23
魔力:82/22+10+50
攻撃:20+14+10
防御:20+14+6
力:14
知恵:10
敏捷:5
運:7
種族固有スキル:鍛冶Lv1 鎚Lv1 酒豪
スキル:調合Lv4
装備:木の鎚(攻撃+10) 革の帽子(防御+1) 革の胸当て(防御+2)
革の籠手(防御+1) 革のズボン(防御+2) 中級調合士の指輪(魔力+50)
変な表現間違い等ありましたら教えてください。
人の名前、武器や防具などの名前、案外思いつかないものですね。
今回はそれらを考えるのが一番大変でした。
次はギルドの話にする予定です。




