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歴博士の正体

歴博士。その名の通り、歴史を調べ伝える学者である。

アリシアの幼少時の守り役でもあったジーニヤは、世界とゼクストンの歴史に詳しく、当代一の歴博士と言われていた。5年ほど前に体調を崩し王宮を去ってからは、山の庵にひっそりと暮らしている。

もともと、城を出て、しばらくはジーニヤの庵に厄介になるつもりだった。ジーニヤは、庵でアリシアを待っているはずだ。


アリシアは馬上から、行く手の空を見上げる。

世界の存在に期限があるなど想像も出来ない、いつも以上に明るい青が広がっていた。


かなり馬を急がせたので、昼過ぎには目指す庵が見えてきた。

庵の前に、白髪白髭を長く伸ばした小柄な老人が立っていた。アリシアが手を振ると、老人は深々と頭を下げた。

「ジーニヤ!」

そこから開けてなだらかになった山道を、馬は駆けた。老人の前で急ブレーキをかけ、アリシアは馬から降り立った。

「しばらく会わんうちに、また老けたな」

老人は、アリシアを見上げ、笑う。

「姫様は、益々お綺麗に...逞しくなられましたな」

「わかるか? 城を出るまでは、予定通りだったんだが...。何処を間違ったのか、厄介なことになってな」

ジーニヤは頷き、お話は中で、と、馬の手綱を庵の壁に留めた。


木造の簡素な庵には、生活と研究の必要最低限のものしかなかった。

木のテーブルについたアリシアは、ジーニヤに温かいお茶を振る舞われ、幽霊城での出来事を打ち明けた。

「...で、何か奴に提案しないといけないはめになったんだ」

「起こしておしまいになったのですか...」

ジーニヤは深いため息をついた。

「知ってたのか?」

滅亡伝説が事実であり、幽霊城と呼ばれる城に大魔王が眠っていることを。

「姫様がお小さい頃、伝説をお話したのは、じいですぞ?」

ジーニヤの目の奥に、にんまりといたずらっ子のような色が宿る。

「姫様がこちらへ来られると手紙を寄越された時に、嫌な予感はしておりました」

「だったら、幽霊城には寄るなと警告してくれればよかったのに」

少々恨みがましく言うアリシアに、ジーニヤは、

「お返事の暇がありましたかな?」

と返し、更に、

「姫様のこと、お止めしたところで、たかが伝説だ、面白いと、聞かれなかったでしょう?」

追い討ちをかける。さすがのアリシアも、言われる通りなので、反論できなかった。


一呼吸置いたアリシアは、

「そもそも、アレはなんだ?」

と、ジーニヤに切り込んだ。伝説は、真実なのか。ジーニヤなら、知っているような気がしていた。

「大魔王と、呼ばれておりますな」

「知ってるんなら、勿体ぶらずに答えろ」

「...彼の者は、そう呼ばれるのにふさわしい力を、持っています」

確信に満ちたジーニヤの言葉。

「なぜ、わかる?」

「悠久の時を、同じ姿で生きております。300年経った今も、変わりはないかと。その力は、腕の一振りでゼクストン程度なら焦土と変すことができるでしょう」

それは、知っているというだけでなく、まるで見てきたような言葉だった。

「...ジーニヤ、お前....」

「私もまた、彼の眷属でございます」













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