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王女と魔王の初対峙

「随分と不遜な態度だな」

怒りを(あらわ)にした大魔王を前にして、膝を崩さないアリシアに、シュバルツは言った。

「...だが、人には惜しい美貌だ」

「美しさで得をした覚えはないが」

アリシアは、シュバルツを睨み据えた。


そもそも、王家に生まれた者としては、政略結婚は当たり前。

しかし、奇蹟の王女とまで呼ばれ、こちらを立てればあちらが立たずと縁談に悩まされ続けなければ、城を飛び出すこともなかった。まして、こんなところで滅亡伝説の大魔王に遭遇することもなかったのだ。

ふつふつと沸いてきた怒りに、さっきまでの畏怖は消し飛んだ。


シュバルツは、真っ向から自分を見据えるアリシアに、気紛れに興味を覚えた。

人の世には、飽いていた。眠っていた年月は、彼にすれば一瞬だったが、人には何代にも渡る期間だ。何かしら変わっていてもおかしくない。


「昨今は、そういうのが流行りか?」

くたびれたドレスに、無造作にまとめられただけの髪。それでも、アリシアの黄金の髪は輝きを失わず緩やかに波打ち、紺碧の瞳は真昼の煌めく海のよう。

自分の出で立ちを言われていると気づいたアリシアは、

「流行りかどうかは知らないが、馬に乗るのに適した衣装ではなかった」

と、妙に真面目に答えた。

後ろで控えるサラザールは吹き出しそうになるのをこらえていた。

大魔王と奇蹟の王女。噛み合っていない会話が滑稽だった。


「なにやら事情がありそうだが、私を起こした責任をどう取る?」

シュバルツは、アリシアを呼び出した本題を持ち出した。

「起こした責任?!」

「お前が、この城に入って、私を踏んづけたのだ」

そういえば、と、アリシアは思い起こす。廊下でなにやら踏んづけたような...。

「あの、ネズミがへしゃげたような音!!」

アリシアの言葉に、サラザールが、いよいよ吹き出したので、シュバルツは、

「ネズミではない!」

と一喝した。


なかなか話が進まないので、サラザールは仕方なく、助け船を出す。

「...アリシア様。我が君は、貴女様に興味をひかれたご様子。眠りから覚めた暁には、人の世を滅ぼすと言われていたのですが...。いかがでしょうか、この世の存続のために、滅ぼしてしまうには惜しいと思われるようなことを、我が君に何かご提案されては?」

「...要するに、責任を取れと?」

「だから、さっきからそう言って...」

「そうだな」

アリシアは、考える。

大魔王の威厳も、今は何故か感じなかった。突如として現れたこの連中が、人外のものであるのは確かだとしても、本当に世界を滅ぼす程の力があるのかもわからない。

だが、家出中の身ではあるが、人の世を滅ぼしてよいか、と言われれば、いかにも惜しい。

「まだ死にたくはないな。歴博士にでもなって、隠居して暮らそうと思ってたんたが」

アリシアは気後れもせず、美しい大魔王をじっと見据える。

「なにか考えるから、時間をくれ」

「では3日」

にやりと笑ってシュバルツは答える。

「それでは、何もできん。せめて1年」

「では、三月だ。それ以上は、待てん。もう300年の猶予は与えた」

シュバルツの言葉は、絶対だった。




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