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やさぐれ王女、捕獲される。

アリシアが脱走したことは、瞬く間にシルランドの陣中に伝わった。

「登ってどうするつもりなんだ」

下って自国の軍に合流するならまだしも、キサナ山脈を登ってシルランドに向かうとは。人質に望んだ王女の行動に、ヤンソン皇子が呆れていると、

「ブラン公を追ったのでしょう」

セリーナは言った。

「彼がシルランドに協力すると教えてあげたら、驚いてましたから」

「余計なことを」

ヤンソンの言葉には、手間をかけさせられたという憤りがあった。

「彼も、あの王女も何もできませんわ」

セリーナが兄をとりなす。

「そうだな」

シルランドは、瞬く間にシュバルツを無抵抗にさせた封魔具に絶大な信頼を寄せていたのだった。



シルランドは、シュバルツを乗せた馬車にも小型の封魔具を置いていた。シュバルツは、かなり具合が悪そうだったが、加減して力を使われてはどうしようもない。その分、シュバルツの体調に配慮して、馬車はゆっくり進んでいた。

追っ手に追われながら、不慣れな馬で山道を行くアリシアは、彼女にしては珍しく、後先をあまり考えていなかった。

とにかく、シュバルツに追い付いて、そうして彼の意に沿わないようなことは止めさせなければと、その一心だった。

やがて、急だった傾斜が緩やかになり、岩肌を右手に見ながらも開けた道に出た。遠く、馬車とそれを警護する兵の一団が見える。

アリシアは、馬に鞭打ってスピードを上げた。

「シュバルツ!」

馬上から、思わず叫ぶ。

「何のために、ついてきた? おとなしくシルランドへ行ってどうする?!」

馬車は止まり、騎馬の警護兵が、アリシアに向かってくる。さほど引き離せていない追っ手がアリシアの後ろに迫る。

アリシアは、シルランドの兵に挟まれた。

手綱を引いて急制動を駆けるが、左側しか逃げ場がない。山道に開けたそこは、砂利の緩やかな斜面で、急制動に脚をとられた馬が滑ってしまった。

「シュバルツ!」

その時、馬車から意外にしっかりした足取りで、黒づくめの男が降り立った。

アリシアは、馬から投げ出され、何人かのシルランド兵に囲まれて、槍先を向けられていた。

「シュバルツ!」

馬車から降りた人影を認め、アリシアが呼ぶ。

「待ってろ、今、影と変わるから」

その声は、馬車の方からではなく、アリシアの頭の中に直接響いた。

アリシアが見ていたシュバルツの影は、大気に揺らめくようにかき消えた。かと思うと、アリシアは、シルランド兵の囲みから少し離れた所でシュバルツの腕に抱えられていた。シルランド兵たちは、槍先に捉えたはずのアリシアが消えたので、唖然とするばかりである。

「名前で呼べと言ったが、あれだけ連呼されたのは初めてだな。出来れば、もうちょっと色っぽい場面で呼ばれてみたかったが」

アリシアを見下ろして、漆黒の魔王は不遜な台詞を呟いた。さらに、

「さて。どうするかな。大事にしたいと初めて思ったものを、横から奪おうとしたり、勝手に傷つけようとしたりされては、困る」

ちっとも困っていない様子で言う。

そうして、シュバルツは、そっとアリシアを地面に下ろすと、片手をかざした。シルランド兵たちは、まるで時間が止まっているかのように、固まってしまった。

「お前...、力が...? 具合は?」

アリシアの声は、なんとも言えない情けないものになってしまった。

「あんなもの、何の効果もない」

面白そうに、シュバルツは言った。シルランドの策に乗って、アリシアの反応を見たかっただけなのだ。

「え...、それじゃ」

アリシアは、一瞬呆然としたが、一気に顔を紅潮させて言った。

「試したんだな!」










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