表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/42

魔王の告解

出立の準備をしなさいと、王は、アリシアを先に部屋から出した。

「本当は、行かせたくないが」

呟く王を横目に見ながら、

「真っ先に行くと言うと、わかって持ち込んだ話だろう」

と、シュバルツは言った。

「あわよくば...、私が出ることも見越していたか」

「いえ、そこまでは」

魔王が垣間見せた威圧感に、一瞬寒気を覚えつつ、王は即座に否定した。確かに、ここへ話を持ってきたのに、そういう意図がまるでなかったかと言うと疑問ではあった。とはいえ、アリシアに対する魔王の様子は、王の想定外のものだった。

「...狸め」

シュバルツは、低く呟いた。




大型の馬車を2台用意し、1台目にセリーナをはじめシルランドから来た一行、2台目にアリシアと侍女に戻ったミア、侍従に姿を変えたシュバルツが乗り込んだ。まずは国境のキサナ山脈の麓、キルケルを目指して進む。

シュバルツは、残った姫君たちに自分の影を残した。ブラン城は、セリーナとアリシアが消えただけで、他には何も変わらないようだった。セリーナは、国の事情で急遽帰らねばならなくなったということになっていた。


スペースを仕切った馬車の中、当然のように隣に座ったシュバルツの姿が別人なので、違和感が拭えないアリシアだった。

「なんで、ここまでしてくれるんだ」

アリシアは、言った。

シュバルツの髪は短く、栗色になっていたが、漆黒の艶めいた眼差しは変わらない。

「何故だと思う?」

旅装とはいえ、正式に王女として向かう旅なので、きちんとしたドレスを着、髪も細かく結い上げたアリシアを見つめながら、シュバルツは、聞き返した。

「だから、こっちが聞いているんだ」

アリシアが憤然と言うと、シュバルツは、思いがけず、一瞬水面が煌めくように笑った。

「私がいて、よかったと、言ってくれただろう?」

「...あれは、助けてもらったお礼だ」

アリシアは、居心地が悪いような気がして、そっぽを向いた。

「アリシア」

シュバルツが、名前を呼んだ。それは、抗いがたい引力を持った声で。アリシアは、仕方なく振り向いて、目をそらせなくなった。

「お前の行方がわからないと、メイデンが駆け込んできたとき、私は、これまで感じたことのない衝撃を受けた」

シュバルツがそっと、アリシアの頬に手を添えた。

「...よくわからないが、私にも大切にしたいと思えるものができたのかもしれない」

シュバルツが触れている頬が熱い。

「じゃあ、この世界は救われるのか?」

それでもアリシアは、聞かずにいられなかった。

「お前が、責任をとるならな」

胸が痛いほど、どきどきいっているのに、アリシアには、責任の意味が上手く伝わらない。

「責任?」

「まあ、先にシルランドの件を片付けてから考えろ」

シュバルツは、そう言って笑った。

そんな風に、不意打ちで笑うと、余計に胸が締め付けられるのは、どうしてだろうとアリシアは自問する。

「アリシア様」

前の席から、ミアが遠慮がちに声を掛けてきた。

「そろそろ、宿に着きます」


キルケルまでは、馬車を急がせて6日の旅程だった。北のブラン山脈を離れ、主街道に出て西へ向かう。宿ごとに王の命令で替え馬が用意されていた。

最初の宿で、アリシアは、歴博士のジーニヤに鳩を送った。鳩にシルランドとの経緯を書いた手紙をもたせたのだった。

シュバルツが、伝説にまでなっている力の持ち主がそばにいるのに、なぜだか不安だった。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ