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私が、行こう。

シルランド側からゼクストンにもたらされた要求は、突然だった。戦にしたくなければ、ブラン城に滞在中の皇女を帰国させること、ゼクストン王女を人質として差し出すこと、という一方的なものである。

皇女の立ち位置を確認しようとしていた矢先の要求だった。皇女の帰国はともかく、何故、ゼクストン王女を求めるのかがわからない。王は、迷った末に当の王女に事態を打ち明けることにした。



ブラン城に先触れもなくゼクストン王がやって来た。

慌てて出迎えたアリシアだったが、王は、シュバルツと話がしたいと言い、急遽一室をもうけた。

王の希望で人払いしたため、部屋には、王の他にシュバルツとアリシアが残り、メイデンとサラザールが近く控えていた。

王は、キサナ山脈までシルランドの大部隊が侵攻していることを隠さずに言い、シルランド側からの要求をそのまま伝えた。

「私が行けばいいのなら」

アリシアは、即座に王に向かって言った。戦端を開けば、国土が戦場になってしまう。それは避けたかった。

「だめだ」

シュバルツが割り込んだ。

「行かせない」

アリシアと王は、断言する魔王を見た。彼の意図するところが、よくわからなかった。

「猶予期間は、もう一月もない。勝手に戦だの、人質だのと。私の意思を変えられなければ、すべてが無意味なんだぞ?」

シュバルツは、言い聞かせるように言った。

「それでも! 私が、この国の人々の暮らしを失いたくないんだ。...だから、こんな賭けをしたんだし。メイデンはいい顔をしなかったし、結局心配をかけたりもしたけど、ずっと城の外の様子を見て回って、前よりもっと、大事にしたいと思った。だから」

アリシアが訴える。

王は、娘の決意に口を挟むことはできなかった。王族が、第一にしなければならないことを代弁していたからだった。

「どうしても、行くなら」

シュバルツは、静かに言った。

「私も一緒に行こう」

アリシアは驚いて、シュバルツの顔を見上げた。シュバルツは、ふっと微かに瞳に笑みを乗せた。

「言っただろう? お前がいなければ、意味がない、と」

魔王の視線が優しいなんて、思い違いかと戸惑うアリシアだったが、

「だけど、お茶会が始まってからは...、私は、いない方がいいんだと思って」

と、弱いながらも抗弁してみた。

「シルランドの皇女が何者か、誘いに乗っておく必要があったからな」

それだけでなく、リリアの『押して押して引け』というアドバイスがあったのだが、シュバルツは黙っていた。

「シルランドの皇女に、何か怪しいところでも?」

王が聞いた。

「同族ではないが、そのようなものだ」

シュバルツが答えた。

「では...」

ゼクストン一同に驚きが走った。

「今回のことは、私の復活も絡んでいると見ていい。シルランドが欲しているのは、"力"だ」

「なんと...」

「だから、私が行くと言っている。そうでなければ、収まらないだろう?」

行って、さっさと終わらせる。シュバルツは不適に笑った。



ゼクストンからシルランドへ正式な回答がなされた。シルランド教国第四皇女とともにゼクストン王女が、国境へ向かう、と。

シルランドの要求を丸呑みにした形だった。














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