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去るものと来るもの

お茶会を中止にしたセリーナは、危機感を強めていた。薄々そうかと思っていたことが、確信に変わっていた。

何事かあったような慌ただしい動き、突然の力の波動、自ら猫を引き取りに来たシュバルツ。彼が不在のお茶会など、意味がない。

セリーナは、侍女からの報告を待った。そうして、ゼクストンの王女が不在であったこと、シュバルツが王女と一緒に城に戻ったことがわかった。

このままでは、花嫁にはなれない。セリーナは、新たな布石を探らなければならなかった。

セリーナは、急ぎシルランドに連絡を取った。ゼクストンの新公爵は力の持ち主に間違いないこと、そして、努力はしてきたが自分が花嫁に選ばれる可能性が薄いことを知らせ、国の指示を仰ぐために。



翌朝。レイミヤとライアンは、自国の都合で、とブラン城を去った。

見送りに城門へ出たアリシアに、ライアンは言った。

「君に向けていた情熱を、国政に向けることにするよ」

妹の不始末を、軽口でごまかすつもりではなく、ライアンはこれまでになく真面目だった。

「僕は、世継の重圧から逃げていたかもしれない。凡庸で、取り立てて誉めるところもない自分を好きじゃなかった。だから、綺麗で聡明な君が欲しかった。でも、こんな僕を立ててくれようとしてくれる者がいるなら、もっとちゃんと自分に向き合おうと決心したんだ」

ライアンの視線の先には、挨拶を済ませ馬車に乗ったレイミヤがいた。

「お元気で」

アリシアは、言った。次に会うとすれば、国同士の外交の場になるだろう。その時は、お手柔らかにと、握手を交わし、ライアンも馬車に乗り込んだ。

ブラン城から去って行く赤毛の兄妹は、着たときよりも随分と大人の顔になっていた。



シュバルツの花嫁選びの舞踏会まで、後一月を切った。

セリーナの元に、やっとシルランドからの知らせが届いた。

キサナ山脈に相当数の部隊を配備し終わったこと、力を無効化できる魔具が開発出来たことが手紙には書かれていた。

セリーナは、手紙を読むとすぐに火を付けて、燃やしてしまった。これから、セリーナのすべきことは、なんとかしてシュバルツの身柄を国境のキサナ山脈まで連れて行くことだった。


ゼクストンにも、シルランド教国がキサナ山脈まで侵攻してきたという知らせが入っていた。

シルランドの武力行使はかつてなかったことで、その軍事力もよくわかっていなかった。険しいキサナ山脈が壁となり、あまり行き来もなかった国だ。壁を突き破ってまでの、侵攻の目的も定かではなかった。

ゼクストン国内では、公にはされていないものの、伝説の魔王が復活し、その気まぐれに世界を壊されないよう、動向を見守っていた矢先である。世界の命運が決す前に自国が危ういとは。王は、知らずため息を吐いた。

そして、彼の魔王の為の花嫁候補として、シルランド教国第4皇女が、幽霊城改めブラン城に滞在中であることに、王は思い至った。何らかの取引に使えるのではと、皇女の自国での立場を調べさせることにした。











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