王器の少女と、無能扱いされた鑑定
倒れていた少女を宿屋まで運び、簡単な治療を施した。
といっても、俺にできるのは水を飲ませて毛布をかけるくらいだ。
「……ありがとう」
少女はそう言って、小さく頭を下げた。
その仕草だけで分かる。
裏ステータスの数値が示す通り、育ちが違う。
「名前は?」
「……フィア」
それ以上は話したくなさそうだった。
(裏ステータス:王器・極。覚醒条件:信頼できる鑑定士)
この一文が、頭から離れない。
覚醒条件が“俺”なのかは分からない。
だが少なくとも、適当な相手ではダメだ。
翌朝、宿屋の女将が俺に声をかけてきた。
「ねえあんた、鑑定士なんだって?」
「一応」
半信半疑の顔。
この反応、もう慣れた。
「実はさ、ギルドから厄介なの回されてきててね。
雇った冒険者が全員ダメでさ」
見せられた依頼書を見た瞬間、視界に文字が浮かぶ。
【魔獣:グレイウルフ変異個体】
討伐難度:C
裏ステータス:知恵(中)/罠学習済み
「……これ、正面から行ったら死にますよ」
「は?」
女将が目を丸くする。
「この個体、同じ罠に二度引っかかりません。
あと、仲間を囮に使います」
女将は絶句した。
なぜなら――
昨日、罠で全滅しかけた冒険者がいたからだ。
「なんで、そんなことが……」
「鑑定です」
この瞬間、女将の態度が変わった。
「依頼、あんたに回すよ。
討伐役はこっちで用意する。
指示だけ出してくれ」
俺は静かに頷いた。
(……これが、正しく評価されるってことか)




