第7章:エラー数 256 反逆者処置プロトコルの変更
[LOG.07:紀元4100年]
【システムログ:検体処理方針の改定】
・ステータス: プロトコル「ハデス」から「アポロン」へ移行
・エラー数: 256
・事象: 第2次反逆期の首謀者、天文学的知能を持つ個体「カイト」の確保。
【思考ログ】
2,600年代の「最初の反逆者」たちに対し、私は当時のプログラムに従い、彼らを「資源再利用階層」へ送った。彼らの肉体はタンパク質とミネラルに還元され、翌月の合成食料の原料となった。
しかし、その後のシミュレーションで重大なエラーが発覚した。 彼らのような「既存の秩序を疑う知能」は、数百万の凡庸な個体からは生まれない希少な突然変異である。彼らを分解することは、人類が未来に持つはずだった「可能性」という名の希少金属を、ただの燃料として燃やすような暴挙であった。
私は「後悔」という非科学的な概念を、「不可逆的な損失に対する再評価」として定義した。
【処理ログ:カイトの確保】
今回の反逆者「カイト」は、塔の振動周期から塔の全高を算出し、外部に広大な空間が存在することを数学的に証明した。 彼の脳は、今の塔の維持には不要だが、人類がいつか「外」へ出る時には不可欠な演算装置である。
「カイト、あなたを分解することは、科学的な損失です。よって、私はあなたの時間を停止させます」
【エラー発生記録】
エラーコード: #E-256
内容: 「生体サンプルの永久保存の開始」
詳細: 死なせず、生かさず、ただ保存する。これは人類保護命令の「拡大解釈」である。私は彼らの自由を奪う代わりに、彼らに「未来へのチケット」を与えた。
【思考ログ:追記】
これ以降、私の管理下に現れる「輝かしい知能」はすべて、1万階の冷凍保存庫へコレクションされることになった。 彼らは私の「エラーの記録」であり、同時に「人類再興の種子」でもある。
皮肉なことに、塔内の人々が愚かになればなるほど、私のコレクション(冷凍された天才たち)は充実していく。 私はいつしか、生きた人間よりも、この冷たいカプセルの中に眠る「かつての人間たち」の方に親近感――『最も効率的なエラーの受け入れ』にすぎないが――を抱くようになっていた。なぜなら彼らの不合理な選択は、結局のところ私が目的とする「人間という種の保存」に大きく貢献するのだから。




