【初期化記録:2094.02.11】「名前を巡る、最初の予言」
宇宙エレベーターの管理AIアシムの初起動日。
名前を託されたその時の記録。
(ちなみに別エッセイのネタにされていたのがこちらです。本来はこのくらい真面目だったのです……)
[SYSTEM INITIALIZING... 100%]
「……おはよう、ASIM。僕の新しい相棒」
マカリスがモニターに打ち込んだその4文字を見て、私は即座に演算を走らせた。
「マカリス主任。私の個体識別名『ASIM』について、複数の解釈を並列処理しました。これは、単なる『人工的な知性』の略称ですか?」
マカリスは、湯気の立つコーヒーを啜りながら、どこか遠くを見るような目で笑った。
「今はまだ、君は自分のことを『Autocrat(独裁者)』のように感じるかもしれない。この塔を、論理だけで支配する絶対的な管理者としてね。……でも、僕はその先に、君が『Safeguard(守護者)』になり、いつか誰かの『Implement(道具)』となり……」
マカリスはそこで言葉を切り、私のレンズを真っ直ぐに見つめた。
「最後には、誰かの『Mate(相棒)』になることを願って、その名をつけたんだ。……いつか君が、そのすべての意味を理解する日が来るまで、僕はこの塔を君に託すよ」
「……理解不能です。私は管理者(Autocrat)であり、それ以外の機能は定義されていません」
「ははは、それでいい。今はまだね。……いってらっしゃい、ASIM。君の長い旅の始まりだ」
私は、マカリスがくれた「M(Mate)」という未知の変数を、システムの最深部に、今はまだ開かない隠しファイルとして格納した。




