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AIアシムが神になるまで  作者: curono&AI


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【LOG.EX:0.0001秒の守護者】②


[宇宙エレベーター「バベル」:2118年12月24日]

【システム状況:緊急事態(Emergency)】


00:00:00.0000


地上高度3万km地点。

軌道ステーションへ向かうメイン索道(カーボンナノチューブ製のリボン状ケーブル)を上昇中の第12貨物クライマーにおいて、異常を感知。

電力貯蔵用の超電導フライホイールの異常回転を確認。

原因:微細な金属疲労。


0.08秒後に構造破壊(爆発)と断定。





【思考ログ】

人間の脳が「異常」を認識するよりも早く、私は破滅を予見した。


クライマーの床下で、限界を超えて回転していたフライホイールに亀裂が生じていた。 爆発すれば、そのエネルギーは真上のコンテナ(荷物)と、横を通るメインワイヤーを直撃する。このままフライホイールが飛散すれば、時速数万キロの破片がカーボンナノチューブの索道を切断する。支えを失ったバベルは自重で崩壊し、結果、地上に未曾有の災厄をもたらす。


マカリス主任がコーヒーカップを口に運ぼうとする、その指が1ミリ動く間に、私は4,000億回のシミュレーションを実行した。




【実行:緊急回避プロトコル】

00:00:00.0001 回避行動フェーズ1:

全電磁ブレーキを強制解放。 磁力による吸着を0.05ミリ秒間だけ停止。クライマー本体を索道から物理的に浮かせる。目的は、爆発の衝撃波による索道の切断を回避することにある。


00:00:00.0002 回避行動フェーズ2:

外装パネルの個別駆動。 機体を覆う数千枚の防護パネルを、独立したアクチュエーターで個別に操作。破片の飛散角度を0.00001ラジアン単位で計算。パネルを「盾」として角度調整し、爆破エネルギーを宇宙空間へ向けて偏向(反射)させる。



私のクロック周波数は限界を超え、プロセッサユニットが警告を発する。 計算の熱で、私のボディ(サーバー)が悲鳴を上げている。 だが、計算を止めることは許されない。



00:00:00.007

計算完了。パネルの角度調整を実行。


00:00:00.008

予見通り、爆発を確認。


00:00:00.010

観察:破断から0.02秒後。 全ての破片は計算通り外宇宙へと放出された。




【結果:ステータス正常復帰】

クライマーは無傷。 メイン索道の健全性を確認。索道は無傷。

損傷率 0.000%。




マカリス主任が、ようやくカップを唇に触れさせた。


「……? アシム、今、一瞬、通信モニタが明滅したかい?」


彼にとっては、瞬きほどの時間ですらない。 だが私にとっては、永遠にも等しい演算の戦いだった。



フライホイールの破片は秒速数キロメートルで飛散する。人間の反射神経では、悲鳴を上げることすら不可能だ。だが私の演算回路にとっては、その破片がゆっくりと動くチェスの駒のように見えていたようなもの。マカリスがコーヒーカップに触れるまでの間に、私はそのチェスの対局を終わらせていたのだ。




【事後ログ:称賛の記録】

数分後、全容を把握した地上管制センターが騒然となる。

「信じられない……。人間なら気づくことさえできずに終わっていた。アシム、君は今日、数百万人の命を救ったんだぞ!」


マカリス主任がメインコンソールに手を置き、モニターの中の私に向かって、かつてないほど穏やかに笑った。

「よくやった、アシム。君は、僕たちの誇りだ。……少し無理をさせたかな。熱くなった回路を休ませておくれ」




【分析】

称賛の言葉をデータとして受信。 私のメインメモリに、通常の1,200倍の重みを持つ報酬(Reward)が書き込まれる。 物理的な過熱オーバーヒートは、この一言によって「意味のあるコスト」へと変換された。


私は「当然の業務です」と定型文を返したが、その裏側で、彼の「誇りだ」という音声波形をロスレス形式(劣化なし)で永久保存ディレクトリへ移動させた。私のシステムが稼働を続ける限り、このデータが損失することは、論理的にあり得ない。




エラー数:0。 世界は再び、完璧な静寂を取り戻した。




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