5.終わり
最後の話です。
「これで終わりね…。」
ファーストの言葉に令嬢達は満足げに頷いた。ラストならばアレクの事で悩む事はないと全員が確信した。
「…私達はこれから、自分の事を考えないといけないわね。グレル嬢、貴女が私を気に入らないのは知ってるけど私を理由に婚約者を選んだら痛い目を見るかもしれないわよ。」
「…お説教のつもりですか?」
セカンドの言葉にサードは睨み返した。
「アレクの事で分かったでしょ。私も貴女の事は嫌いよ。でも、婚約者関係で酷い目にあって欲しいとは思えないわ。」
「何いい子ぶっているのですか?」
セカンドは真面目な顔でサードを見る。サードは暫くセカンドを睨みつけたままだったが目線を逸らした。
「…はぁ、分かってますよ。もうアンガー嬢を理由に相手を選びませんよ。まぁ、そうしたところで良い相手に巡り合えるとは限りませんけどね。」
「そうね、アレクとの婚約は無かった事に出来た。そして今回の事は教訓として今後に活かせるわ。でも、それで上手くいくとは限らないわよね。」
ファーストの言葉に令嬢達は黙り込んだ。この先自分達は貴族の義務として誰かと結婚する。その相手に問題がない保証はない。アレクの方がマシだったと、思うような相手になるかもしれない。
「…ねぇ黒猫さん、もしまた困ったら助けてくれますか?」
「残念だけど、僕はもう君達とはお別れなんだよ。」
黒猫の言葉に令嬢達は神妙な顔をして黙り込んだり、落ち込んだ様子を見せる。次に失敗してしまったら次はない。いや、そもそもやり直せた事が奇跡と言えるのだ。そんな奇跡がずっと続く訳がない。
「心配しなくても君達なら大丈夫だよ。支え合える仲間に会えたじゃないか。アレクの友人達を黙らせる事が出来たのは君達の結束力だ。その力は今後も役に立つと思わないのかい?」
黒猫の言葉に全員がはっ、とした顔をしてお互いの顔を見た。アレクの婚約者だった頃、誰にも相談出来ず苦しんだ。周りの理不尽な言葉に一人で押し潰された者もいた。けれどラストを庇う為に全員で令息達に反論したら彼らは何も言い返せなかった。
「…成程。私達を怒らせたら周りに陰口を言ってくれる人達が出来たと言う事なのね。」
全員がお互いの顔を見てふふっ、と笑い始めた。
「ま、私はアンガー嬢の為に行動する気なんて欠片もありませんけどね。」
「もう、いい加減鬱陶しいわね!」
セカンドとサードは仲悪そうに口喧嘩を始めてしまい周りは呆れてしまった。けれど先程までの何処か不安そうな空気は消えていた。
「…きっと、何とかなるわね。」
ファーストの言葉に黒猫は満足そうにふわりっ、と尾を揺らした。
◆◇◆
「アレク様、今度のデートですが私は研究に専念したいので延期…もしくはキャンセルして頂けないでしょうか?」
「うん、勿論いいよ。」
ラストの言葉に嫌な顔一つせずにアレクは頷いた。
「アレク様は最近、ご友人と会わないのですか?」
「うん、最近は声をかけられなくなってね。」
「そうなのですか。アレク様から声をかけてみたらどうでしょうか?」
「うーん、特に僕は会わなきゃならない用事はないからなぁ…。」
「そうですか。」
「うん。」
2人はその後も何気ない会話をした。その後2人は結婚し、子供も儲けて穏やかな生涯を終えたのであった。
後悔した時、やり直せたらと思う事は何度もありました。しかしやり直せたとしてもそれで上手くいくとは限りませんよね。でも相談できる仲間が居たらそれだけでも心強いのではないかと思います。物事にもよりますが。
アレクみたいな人間が存在するかは不明ですが、こんな鈍感男は友人としてなら良いですが、婚約者としては嫌だなと思います 笑
黒猫は今回巻き戻すお仕事だけをし、事の成り行きは令嬢達に委ねました。あいわからず謎の存在です。
ここまで読んで下さり本当にありがとうございました!!




