システムメニュー1
「あぁ、疲れた・・・・・・木の棒で戦うのは無謀だった」
雑魚の代名詞たるスライムにここまで手間取るとは。
しかも運動不足が祟った。脚と二の腕がぷるぷるしている。
倒せたから良かったものの、下手したらこちらがピンチになっていてもおかしくない。
我ながら安易な考えで危険を犯していた事に震えが来た。
「武器問題は早急に対処しなければ」
このままでは実際問題体力と命が持たない。特に体力に関してはもうカスカスで肺も限界だ。
これ絶対明日以降筋肉痛で苦しむタイプ・・・・。
膝に両手をつき肩で大きく呼吸をしながらどうしたものかと考える。
「やっぱり戻って対策を考えるのが現実的なんだけど、てか転移直後に戦闘とかどんな仕打ちだよ・・・・半分は俺が呼んだようなものかもしんないけどさ、それでも婆には後で文句を言ってやらねば気が済まん・・・・・にしても、異世界だってことはこれで確実となった。あと危険だと言うのも解った」
スライムは地球にはいないし死んだ生き物が光になって消えるなどありえないからな。
しかしこれでは異世界だと喜んでばかりもいられないぞ。死ぬのは嫌だ。
「戻る前に出来る事を確認しておいた方がいいか。それで思いつかなければ武器になりそうなものを用意しに戻るでも遅くは無い。先ずはこの婆から貰った【ゲームシステム】ってやつがどんななのかだな」
俺はそう言いながら視線を四方に巡らせた。
婆が与えたと言っていた【ゲームシステム】、それ自体が嘘であるとは俺は全く考えていなかった。
何故ならそれはもう《《目に見えている》》からだ。
「いやほんとすげぇな」
視界に散らばる複数の《《アイコン類》》。
うん正にゲーム画面だわ、これ。
てかこれに気づかなかったって、俺どれだけ浮かれてたんだよって話だ。
しかし画面では無く肉眼で、しかも浮かんでいるデジタルなデザインのそれらはかなりの違和感だな。VRはまだやったことが無いんだがこんな感じなんだろうか? 何て言うか目の前に透明なフィルムがあってそこに投影されている感じ? 少し距離がある様に見えて実際にはゼロ距離、触ろうと思っても触れない。眼球だけ動かしても位置は変わらない、か。
「しかもこれって・・・・・・そうだよな」
そんな不思議な視界だが、これに物凄く馴染みを感る。
「本当に俺らが開発しているゲームとそっくりだ」
そう、この目の前に浮かんでいるアイコンの類、それらのデザインや配置が今俺たちが作っているMMOのメイン画面の仕様そっくりだからだ。
細部に若干の違いはある、けど全体的なイメージはほぼ一緒。
先ず右下にある赤と青のバー、これはゲームだとHPとMPのゲージに相当する。
「となると青がHPで赤がMPになる筈なんだが、MPバーがあるという事はやはり魔法があるという事だよな・・・・つまり俺も魔法を使える!? くぅぅ、これは期待が膨らむぞ!」
ビバ異世界!!
実際はどうあれ可能性があるだけでももう楽しくて仕方ない。
さてさて他はどんなのが隠されている?
HPとMPバーの横には数値が出ている。どちらも【10/10】となっている。
つまりHPの最大値が十で多分MPと思われるものも十と言う事だろう。
「かすり傷一つで1減るなんてことは無いよな」
まさかとは思うがそんな事になったらすぐに死んでしまう。なかなか衝撃的な事ではあるがここで悩んでいても仕方が無いので、出来るだけ傷を負わないよう頑張ろうと心に強く刻みながら次を確認して行く。
左上には二重の円があった。
外側の円には方位磁針の表示、内側の円にはマップと思しき図が描かれている。
これもゲームと同じ仕様なのだろう。その大半が黒く塗り潰されていて、描かれているにはほんの一部。
仕様が同じであるならば目視した部分だけマップが作られるのだろう。
マップだけは現実となるなら最初から全部欲しかった気もしないではないが、これも埋める醍醐味があると気持ちを切り替え次の確認に移る。
視界右隅には縦に四角枠が並んでいる。
これはゲームであればスキルやアイテムのショートカット登録枠だ。
「魔法だけじゃ無くスキルもあったらおもしろいよな」
飛ぶ斬撃とか使ってみたい。
しかし見れば見る程ウチで設計したMMOと似ている。ただその分操作に迷う事無くてありがたい。
そうやって映っている物を確認していたのだが、ここで大きな問題が一つ浮上した。
「これ、どうやって操作するんだ?」
そう、使い方が分からなかった。
当然ながらマウスはここに無い。タッチパネルみたいな操作かとも思ったのだが、そもそも触れない。空中でフリックしてみたが動く気配がない。
「なら思念とか」
まぁそんな事もあるかもしれないと、ここ迄の非常識を思えば軽い気持ちで考えた方法だったが。
「・・・・・動いた!?」
どうやらあっていたらしい。
俺が意識する事でアイコンに点いたフォーカスが動いてくれた。
「これは慣れないと結構むずいかも」
その動きはたどたどしい。
かなり集中して動かそうとしないと反応してくれない。
少々慣れるまでは手こずりそうだ。
だがこうして色々と見ていると思うのだが。
これ、ファンタジーってよりSF!!
仕組みや見た目がもう未来的。
もしこれを地球で実現しようとしたら後何十年もかかるだろう。俺は開発できる気がまるでしない。
異世界に来たかと思いきや、どうやら俺は未来の世界に来ていたらしい。
それはさておき、なんとか操作が出来た。ここからは更に細部を確認していく。
一番見ないといけない部分はシステムメニュー内部だ。
ゲームでもそうだが全部の機能や操作が常に画面上に出ている訳じゃ無い。そんな事をすれば画面が情報で一杯になってしまう。なので大半はメニューを呼び出して操作を行うようになっている。
この【ゲームシステム】とやらもどうやらそれは一緒らしい。
一番左下の角にそれらしいアイコンがあった。
意識を集中してカーソルをそのアイコンに持っていき「開け」と強く念じた。
するとメニューらしきものが立ち上がった。そのポップアップされたメニューの構成もゲームと然程変わらない。
そして出てきたのはメニューだけではない。
俺が欲しかった情報も一緒に視界に広がっていた。
それはステータス画面。
名前:結城晴斗
ジョブ:システムエンジニア
Lv:1
HP:10/10
MP:10/10
筋力:10( )
耐久:10( )
俊敏:10( )
魔力:10( )
精神:10( )
器用:10( )
運:5
スキル
【クリエイト】
加護
【女神の加護】【出会いの輪廻】【異界の転移】【ゲームシステム】
「これこれ、ステータス!異世界と言えばやっぱりこれだよな。どれどれ俺の能力は・・・・・・・・・あん?」
その表示されたステータスを見て俺は何とも言えない気分になった。
ステータスの数字に手抜きを感じる!
この1と0の取り敢えず付けましたみたいな初期値。
いや一つだけ【5】が入っているがそれはそれで腹立たしい。運だけ低いってどういうことよ。運も10にしとけよ、10に。
数字の脇にカッコがあるのだが何も書いて無い。しかも色はその部分だけがグレーになっている。
これの意味するところが解らないな。これはグレーアウトなのか。しかもまたしても運だけ無いのが物凄く気になるんだが。
随所に細かい嫌がらせが入っている件。
「そもそもジョブの【システムエンジニア】ってなんだよ。確かにそうだけど、そうだけども違うだろ!」
突っ込まずにはいられないところだらけのステータス。
何故かジョブが【戦士】や【魔法使い】じゃなくて実際の職業である【システムエンジニア】になっている。
ますますファンタジー感が無くなっていく。
名前や謎ジョブやステータス値の下には【スキル】と【加護】と書かれた欄があった。
【スキル】の欄には一つだけで【クリエイト】というのがあった。加護は四つあり【女神の加護】に【出会いの輪廻】【異世界転移】、それと【ゲームシステム】。
【加護】に関しては覚えがある。
昨日自称『神』が俺に与えたと言っていたものがこれらなんだろう。
まず【女神の加護】だが・・・・・これは正直なんなのか解らない。でもこれがきっと全ての基礎みたいなものになっているんだと思われる。
「女神って部分にはもの申したいがな」
いやほんとあの見た目で女神とは図々しいにもほどがある。だがこうして異世界に来させてもらった事には感謝しているので、実際に物申すのはやめておこう。
次の【異世界転移】は言わずと知れたここに来るためのもので間違いない。それと【ゲームシステム】も今見ているこのゲームの様な仕組みのことと、恐らくだがステータスにも載っていた通り、戦って経験値を得られればレベルアップして強くなっていくものと思う。
この【ゲームシステム】がこれから異世界で冒険するための胆になる。こいつがどう動いてくれるかで俺の冒険が変わってくるわけだ。
「そしてやっぱこれが気になる」
【出会いの輪廻】
奴曰く俺にとって最高の女性とめぐり合える加護とのこと。
それがどう作用するのかは判らないが、どうもあくまでも惹かれ合うのは本人たちの意思であって強制ではないらしい。
ならば意味合い的には「普通に生きて行く中で出会う機会さえ無かった相手と必ず出会えるための加護」みたいなものなのかもしれない。
これに関してはこれから起こるかもしれない程度の事なので正直半信半疑なのだが・・・・・・めっちゃ期待してます!!
「ご利益ありますように」
だから願わずにはいられない正に神頼みってやつだ




