表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ゲームは趣味である ~レベルという概念の無い世界でレベルアップするのは反則だろうか~  作者: シシオドシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

駅の混雑

 早く帰れることになり、室長の危機も尊い犠牲を出したが何とか回避出来た。意気揚々と浮き足立って帰路に着いたのだが、ここで大きな落とし穴が待ち受けていた。


 うちの会社は働く上である一点の問題がある。

 いや実際には労働基準的な部分を突っ込まれるとそこそこ大問題になりそうなものはいっぱいあるのだが、それは俺からすれば慣れたというか、大して気にしていない部分なので問題とは思っていない。


 では一体何が問題なのか。



 それは会社が、と言うよりはこの地域がらの問題だ。



 実はこの辺りは教育機関が多く集まっている。

 それこそ都内でも有数の名門校として知られる私立の高校と中学、それとこっちは普通程度ではあるが国公立と私立の大学がそれぞれ一つずつ。


 それの何が問題なのかと思うだろうが、これが結構な厄介ごとだ。


 端的に言えば学生が多いと言うこと。


 学校だけで無く予備校も相当数にあるもんだから、時間帯によっては駅近辺が学生で溢れかえりラッシュ状態となってしまう。

 しかも学生をターゲットにした店も多いことから、学生以外の若い世代も多く集まってくる。そうなると放課後となる夕方の時間帯なんかは真っ直ぐ歩くのも困難なほどごった返す。



 つまり電車がやばいと言うことだ。



「この時間帯に帰るなんて滅多に無かったから油断していた」


 学生の波に飲み込まれた俺は静かにごちる。

 室長の誘いを断れて喜んでいたのも束の間、男のサラリーマンにとっては最早死地と化した駅構内で、自分の浅はかさを悔やんでいた。


 満員電車など都内では当たり前だろ? そう思うなかれ。

 それが同じサラリーマンなら何も気にしない。嫌だけど仕方がないと思う。

 だがここはほぼ全てが学生。と言う事は当然ながらJK《女子高生》やらJD《女子大生》もいっぱい居る。何なら場所によってはそれしか居ない。


 そんな場にサラリーマンが入ってみろ。針の筵もいいとこだ。


 周囲の迷惑そうな視線に心が折れる。何も悪いことをしていないのに存在を否定されるんだぞ。体臭も気になるし、周りから人が遠ざかっていったらトラウマになりそうだ。


 何より一番問題なのが下手に身動きできない事。


 言わばここはサラリーマンにとって、男にとっての危険地帯。

 下手に女性に触れてしまったものなら即座に社会から追い出されかねない。何ならそれっぽく見えただけでもアウトだ。だから常に身の潔白を証明するような行動をしなくてはならない。現にここ数年で何人もの男が捕まっていると聞いている。それが故意であるか不意であるかなど関係ない。


 そう、周囲にいるのはトラップなのだ。踏んだら爆発必死な地雷なのだ!



 普段であれば学生と被らない時間帯で利用していたから問題なかった。

 フレックスだから朝の通勤はずらせる。帰りだって大半深夜の終電近くだった。

 その時間帯だともう学生たちはいない。


 すっかり抜けていた。


 浮かれていた自分が恨めしい。これだったら室長と一緒に飲みに行って時間を見計らえば・・・・は無理だな。そっちは完全に御前様でホテルか会社直行コースだわ。

 

 今の時間は16時15分。

 一番学生たちの動きが活発化する時間帯。混んでいる駅は本当に久しぶりだ。


「室長もこれを見越して・・・・は無いな。ただ早くに終わったから飲みたかっただけだろう。どうする、タクシーを使うか?」


 駅構内の混雑に早くも心が折れかかっている。

 駅のアナウンスと学生たち話声で最早騒音の域だし、若い子特有の臭いも馴染めない。

 ここの駅が小さいのも拍車をかける。ホームが4つしかないのにこの人だからな。


 タクシーだと自宅まで2000円くらいかかる。最近初乗り料金がアップしたなんてニュースもやっていたからもう少し高いかも。



「電車なら130円・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 改札にICをかざし潜る。

 最近散財したばかりなので節制は大事だ、うん。

 財布を開いて涙が出そうになった・・・・。


 断腸の思いでホームへと向かう。

 通路も鬱陶しいほど人、人、人。

 幅が狭いからな、尚の事なんだけど・・・・・・・・にしてはこれちょっといつもより多すぎないか。

 今日、イベントか何かあったのだろうか?


 前に進めないほどでは無いが渋滞した通路は真っ直ぐには歩けない。しかも立ち止まっている人が多く一層と進み辛い。


 JKに触れないよう慎重に人を避けてながら、やっとのことでホームに上る階段までたどり着いた。

 すると混雑具合が一気に減った。


 何とも変な混みかたに首を傾げるも、その原因に対した興味は無い。ここから早く抜け出たかった俺はホームへと階段に足を掛ける。

 上りだけはエスカレーターも有るのだが選んだのは階段。異世界に行くようになってから体力面にも気を遣い出来るだけ体を動かすよう心掛けている。その甲斐もあってか足取りは軽快。

 だがそんな軽い足も半分上がった所で止まった。


「電車が来るまで時間が・・・・」


 途中見えたホームの時計と案内板。

 それによると次の電車が来るまで10分ほど空いていた。


「丁度良い、ここで飯を買っていくか」


自宅最寄り駅からアパートまでの道のりにスーパーは無い。アパートからは近いが駅とは反対方面だ。途中にあるのはコンビニだけで、最近はコンビニ弁当ばかりだったので流石に飽きている。


「神さんにもまたコンビニかって文句言われそうだし」


 既に家にいることが前提となっている神さん、それを普通に受け入れているのがまたおかしな話だが、それを悪いと思っていない自分もまた可笑しく思える。


 話が逸れたが、コンビニ弁当ばかりも飽きてきたのでここで晩飯を調達しておくのも手だ。

 空き時間を有意義に使えばそれだけ異世界にも早く行ける。


売店は階段を降りてすぐのところ。そこ迄なら人混みも然程気にならないし、何よりあそこの弁当は専門店での手作りだ。値段も手頃で味がいいのだがいつもの帰り時間だと閉まっている。


 こんな時じゃ無いと買えないしな。


 と言うことで階段途中でUターン。


「・・・・ん?」


 折角上った階段を降り始めて早々、俺は怪訝に眉を顰めた。


 何だ・・・・騒ついている?


 人混みの様子が変わっていた。

 喜色ばんでいるような浮つく雰囲気を感じる。


 面倒くさい事がおきそうな予感に顰めた眉が更に寄り眉間に皺が刻まれる。


 人混みが割れ道が出来る。

 そこから団体さんが現れ、俺がいる階段へと進んでくる。


 周囲の視線は明らかにその一団、と言うよりは先頭の人物に向いている。


 一団は全員高校生。ただ制服はバラバラ。

 確かここの学校は規定の制服があった筈なので学校自体が違うのだろう。

 先頭を歩いているのは一人の少女。そしてその少し後ろをゾロゾロと塊がついて行く。

 パッと見奇妙な集団だが、印象としては先頭の少女と後ろは別物のように思える。


 つまりはあの先頭の少女が諸々の元凶か?


 上からなので顔はよく見えない、と言うよりはこんな面倒そうな相手をジロジロと見る事は出来ない。


 トラブルはごめんだ。こういった類は関わらないのが最善。


 集団とも目を合わせないよう下を向き階段を下りる・・・・・・・・のだが、結果としてそれが良くなかった。


 先頭の少女とすれ違った。向こうは俺を気にした様子はない。当然か。

 次に集団ともすれ違う。ここも何もなく通り過ぎる。


 ・・・・筈だった。


 俺の足は止まった。


 彼らとすれ違う時に《《あるもの》》を見てしまったからだ。

 視線を下にしていたのが良くなかった。前を見ていれば気付かずにやり過ごしていた。


 けど見てしまっては見過ごせなかった


 あいつ!?

 

 気がつけば俺は集団に向かっていっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ