生まれつきの才能
突如として大会に出場することになった美娘。
ぶっつけ本番で試合に臨むが……。
暗い空間を赤いランプの光がぼんやりと照らす
「対人戦は初めてかもだけど、まぁゲームとかとあんまり変わらないから安心してね」と無線からシェリーの声が聞こえる
会場はざわめき、微かに応援の声が聞こえた。
「レ・オ・ン!レ・オ・ン!レ・オ・ン!……」確かにそう聞こえた
「相手は確かワールドチャンピオンだったっけ?アメリカの人。」光流が呟くようにそう言うとシェリーは「そうだったっけ?最近の大会じゃ見たことないけど」と不思議そうに言った。
「違うよ個人戦のやつ、確か前年度大会の優勝者だよ彼。」「へぇ…。」2人の会話だけが進んでいく中2人の会話に割り込むように美娘は「ねぇ…それ本当なの?だとしたらマズくない?」と焦っていた
「大丈夫じゃない?アマチュアだし。」と光流は軽く言った
途端にブザーが鳴った。
『ゲートオープン10秒前』とアナウンスが鳴り秒刻みでかん高い音がなる
『5…4…3…2…1…』ブザーと共にランプが緑に変わり勢いよく目の前の壁が開く
レイヴンは大鎌を片手に勢いよく飛び出した
「相手の機体は攻撃型のフレームかな?とりあえず攻撃されないように。」光流の指示が無線を通して伝わる。
目の前に広がる景色は黒い床、障害物の白い壁や箱、そして相手の機体が映り込む。
相手もレイヴンに反応し勢いよく加速して向かってくる
「うわぁ!飛んてきたよ!どうすればいいの?!」慌てふためく美娘に光流はただ一言「避けろ!」
相手機体は剣を振りかざしその刃はレイヴンの目の前まで迫る。美娘は本能的に跳ぶように後に移動した。
「よし!次は反撃に出ようか」光流は少し焦り気味に指示を出す
「ちょっと…待ってよ!まだ何かしてくるみたい…」レイヴンは相手から逃げるように走る
客席からは「逃げてばっかりだぞ!」「レオンのサンライガーなら一瞬で終わっちまうぜ」「何してんだ!早く殺れ!」とヤジが飛んできた
「相手機体は…9.2メートル、13.6トンってとこ。スピードを犠牲に防御力とパワーを持ってる感じかな。見たところブースターが背中と足裏にあるようだね。」無線越しに光流がブツブツ言っている「呑気に分析してる場合かー!」と美娘の心の叫び。
「よし、突っ込んでくるのをどうにか入れ違いになる感じに避けて、背中のブースターを狙って」光流は丁寧に作戦を伝えた
美娘の「…ちょっと待って、それって相手に突っ込まないとダメ?」と言う言葉に「ダメだね」と光流は一蹴した。
サンライガーは再び一気に加速し距離を詰める。
「あぁ~もう!」レイヴンは相手に向かって走り出した
振りかざされる剣を紙一重で避けてレイヴンは跳び上がった。一瞬でサンライガーの真上に到達し、大鎌を振り下ろす。
刃先は機体の背中に深く突き刺さりレイヴンが地面に近づく度にその刃は上へ上へと動いていく。
着地と同時に刃は引き抜かれ敵の背中には縦に一本大きな傷が走った。
「やった…できた!」と美娘がはしゃぐのもつかの間、相手は体勢を取り直し再び攻撃の構えに入った。
「コアは胸部!そこを壊せば勝てる!」と光流は興奮しながら言った。
美娘はそれを無言で承諾し、大鎌を構える。
客席は「嘘だろ…サンライガーが一撃もらっただと?」「え?!今飛び上がって…え?」とどよめいている。
双方動きを伺っている状態が続き、しばらく動きがない。
先に動いたのはレイヴンだった
それに反応するように相手も動き出す。
激しい金属音と共に火花が散る。サンライガーに向けられた刃は直前で剣に弾かれていた。
「マズい!押されてる…」鍔迫り合いになり、美娘が苦しそうに弱音をこぼす。
「パワーに差がありすぎる!早く体勢を…」光流が無線で必死に指示を出す。途端にレイヴンはバランスを崩した。
「きゃっ!」と悲鳴を上げる暇も無くサンライガーは体当たりを決めた。
レイヴンは突き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「っっ!!足が…動かない?」美娘はわけも分からず混乱していた。
気づけば目の前には剣を振り上げたサンライガーがレイヴンを見下ろしていた。
…美娘の目の前が真っ暗な景色になった。
「あちゃー。」と光流の声が聞こえたがそれは無線ではなかった。
「派手にやられたね。」シェリーもため息混じりの声で呟く。
美娘は起き上がり周囲を見渡す。どうやらレイヴンとの接続が切れたらしい。
―2日後
柳瀬邸地下格納庫
「えぇーと…その…ごめんねいきなり大会なんて。」光流が気まずそうに頭を下げる
「ホントよ!そもそもまだ動かす段階しか踏んで無いのに…」美娘は説教モードに入った。
「まぁまぁ、」とシェリーはなだめるが熱は冷めず1時間ほど説教は続いた。
「ひとまず試合結果を整理しようか。」
そう話を始めたのはシェリーだった
「ええと…まず結果は戦闘不能破壊で一本負けだね。」光流は気まずそうにしている
「かなり激しく破損してたけどコアは大丈夫だった。だけど代替のパーツもないし…」
「しばらくは使えないね。」シェリーの言葉に被せるように光流が言った
「あの…途中足が動かなくなったんだけど…」美娘が2人の話に割り込むように質問した
「回路がやられたか、配線が駄目になったか。どちらにせよ機体があんなだ、調べようがない。」光流の答えは当然のものだった
「さてと、対策だが…装甲を厚くしたらその分重量が増えて機動力に影響が出る。」
「避けるためにスラスタをつけるにしても燃料を積む場所がない。」光流が1人で頭を抱える
「そもそも相手の相性もあるでしょうね」
「それなんだよ…相手はスピード勝負の重撃タイプ。それに対してレイヴンは高機動の低出力」
「仮に同じ程のスピードを出せたとしても装甲の厚みが違う」
「同じ頻度で攻撃したとしても先にやられるのはレイヴンだな。」
光流は少し早口になっていた
「出力を上げるのは駄目なの?」
「大会の規定がある。出せても2500kwまで」
光流は椅子に腰掛ける
「ほとんどのチームは重量を気にするね。」
シェリーはタブレット端末で何か操作をする
「レイヴンの出力はどのくらいなの?」
「1850から2015kw。全体で見たら低い方。1回2300くらいまで上げてみたけど制御基板が一発でやられたよ。」
「……」光流の言葉に美娘は黙り込んだ
「ひとまず修理を待つしかないね。その間は練習機を使って模擬戦になるよ。」
「わかったわ…」
「じゃあ僕は会社に行ってくるから。」
「会社って?」
「Xtec.Armaments、民間向けの軍事業だよ。」
「みっつーは社長やってるしね〜」
シェリーは端末を触りながら光流の方を見てニヤリと笑った
「社長?!こんなのが?」
「失礼だな。」
光流は椅子で回りながら伸びていた
「ひとまず練習機用意できるまでお休みになるから」
「模擬試験機じゃダメなのか?」
「出力違うでしょーが。」シェリーは光流の頭をポンと叩いた
「ひとまずそういうことだから。準備できたら連絡する。」
右も左も分からないまま惨敗してしまった美娘。
そして光流が一企業を背負う社長であると知る。
美娘にはこれから長い特訓が待っている…。
一言
勝手ながら休止していた分短く頻度を多くやります。
流石に長く書くのは辛かった。(by、作者




