もう一つの体
プレゼントがあると光流に連れられ地下に向かうも、巨大なプレゼントは見ることができず翌日に持ち越されることに
ふかふかのベッドの上で朝を迎えた。
光流が美娘部屋を用意したのだ。
まだ外は暗いがパジャマで朝を過ごすわけにもいかないので着替えることに。
クローゼットを開けて着る服を選ぶ。
鏡の前で自分と重ねて厳選した結果水色のワンピースを選んだ。
パジャマを脱ぎ下着姿になった途端ドアが開いた。
「昨日の件だけどさ…」と光流が入ってきた。
「………」目が合った。
刹那美娘の脳裏に恐怖と嫌悪、そして殺意が渦巻いた。身体は既に動いていた。
「バカッ!変態!!」
何かが破裂するような高い音が響いた。
朝食の時間―
「美娘さんワンピース似合いますねー」アリアがトーストを幸せそうに頬張りながら言った。
頬に手形がくっきり残った光流はしょんぼりとしている。
「…さすがに親父が悪いぞ今回は」ジルが気まずそうに口を開く
「ごめんよぉ」
「ホントあり得ない!女子の部屋に入るときくらいノックしなさいよ!」
その光景を不思議そうにティアが眺める。
食事が終わると昨日と同じ場所に来た。
「いらっしゃい!美娘って言ったっけ?用意できてるよ!……ところでミッツー、その子に何したの?」
美娘が事情を説明すると「あちゃー、そりゃだめだよ。女の子の部屋は聖域なんだから簡単に入っちゃだめだよー。」彼女は楽しそうに言った。
「おっと、自己紹介がまだだったね。アタシはシェリー、ここの専属エンジニアだよ。今は住み込みで色々調整してるから何があったらここに来な。」
シェリーというその女性は昨日と同じようにキーボードを鳴らす。
光流が切り込むように「今日は使えるんでしょ?実践エリア。」と目を光らせる
「え?できないよ。今日は日曜日、老人会に貸し出してるでしょ?だから今日はテストエリア。」
「えぇ~。」光流は残念そうに肩を下ろす
奥の部屋に案内された。
「そこのカプセルみたいなのに入って。」
言われるがままにすると目の前が暗くなった。
体の感覚が一瞬消えたがすぐに目の前に白い景色が広がった。
「再接続は成功したかな?」今は聞きたくない声が頭に響く。
「まぁアリアがすぐ出来たんなら当然っちゃ当然だな。」とシェリーの声も聞こえた。
辺りを見渡すと小さく窓枠にシェリーと光流が見えた。
「え?…私どうなって…」
「Xtec.H'cB-02、機体名はレイヴン。それが君の新しい体だ。」光流が説明したがさっぱりわからない。
そこで初めて自分が巨大なメカを操っていることに気づいた。
「簡単に動いて慣らしてみて。」シェリーが言った。
走ったり座ったり、分厚い鋼板でできた的をしばき回したりしてるうちに新しい身体にも慣れてきた。
どうやらこのレイヴンという身体は下腹部のコアから全身に電力供給を行っているらしく、そのコアに意識も宿っているとのこと。そして型式番号のH'cBは
Humanoid core BattleOperationSystemsの略称で簡単に言えば人間の思考で動かせるロボットという認識で良いそう。
「格闘ができたから次は射撃してみるか。」と光流が提案をした。
「武器はどうすんのさ、今使えるやつはレイヴンで使ったら反動制御できないだろ?」シェリーの発言に「M66Xがあったはず。」と光流はパソコンをいじり始めた
「はぁ?そんな高級品今出せって?無理無理。」シェリーは光流を止めた。
「あの…近距離の武器じゃダメなんですか」
「え?」光流の口からはびっくりしたような声が漏れた。
「いやぁなんというか、格闘戦のほうがしっくりくると思って…ほら、この機体軽いし近距離のほうがスピード活かせるかなと思って…」
「あぁ、そう…だね。」
「作った本人より特性理解するとはねぇ、まぁ乗ってみなけりゃわからんか。」ため息をしながらシェリーがパソコンを操作する。
「わかったよ…色々出すから気に入ったやつあったら言ってくれ。」
「そんじゃナイフ出すよー」シェリーはそう言うとタブレット端末に持ち替えた。
ナイフ、直刀、槍、チェーンソーと色々試したがどれも気に入らず、最終的にとある武器にたどり着いた。
「重心が先端にあるから一撃の威力はあると思います。あと刃も大きいので大きな損傷も期待できる…これなら何とか使えそう!」
手に持っているのは巨大な鎌だった。
「なんか…意外なの選んだね。」
「もう本人が気に入ったなら何でも良いんじゃない?」
「まぁそうかもね」
「とりあえず明後日は実践するからそれまでは体休ませとけよ。」
視界が暗転し気がつけば元の身体に戻っていた。
上に戻ると「自由に過ごせ」とだけ言われたが、特にやることもないので自室に戻った。
「毎日アレになる…か。」
自分の手のひらを見つめふと呟いた
どうやら地下にあったメカ達は競技用だと言うがどのような競技かは教えてくれなかった。
競技用。その言葉が少しの安堵とそれと同じくらい不安を感じさせる。
「考えても分かんないや。」シーツを整えて部屋を後にした。
「―お出かけ?いいですけど、このあたり何もないですよ?」アリアはびっくりしたように返事をした。
「どっか行くのか?」部屋の角で話を聞いていたジルが詰め寄ってきた。
少し焦ったように「あぁいや、ちょっと暇だから外で買い物とか…」
「ティアはどうすんのさ、一人になっちまうぞ。運転できるのは俺だけだし、親父は今ごろ会社にいるし…」
「お出かけ…行くの?」その小さな声の主はティアだった。
「お留守番しなきゃだめ?」少し涙ぐんだその目を見ると少し悲しくなる。
「連れて行くのはできないんですか?」咄嗟にワガママを言うと
「…だめだ、コイツは外に出せない。いや、出したらマズイ。」
「どういうことですか?ただの子供ですよ?」
「…ただの子供じゃねぇからさ!」ジルは深刻そうに頭を抱える
美娘は「じゃぁ一体なんなんですか」と少し感情的になってしまった。
「コイツは…既にテロで死んだことになってんだ。しかも王家の血を引いてる。ウェストリー家…崩壊したこの日本の一部も不当に領土としている荒い奴らだ。そこまで歴史は深くないが、力を持ってることは確かだ。そんなとこの王女様なんだよコイツは。」
ティアは不思議そうにジルを見つめる。
「ここはウェストリー家の統治下だ。言ってる意味が分かるか…」
「王女の存在を死で偽装し監禁している罪人…」
「おそらくはそう見られる。」
するとだんまりとしていたアリアが口を開く
「地下経路…抜けた先に確か…」
ハッとしたようにジルが続ける
「地下繁華街!」
「そこならの目を掻い潜って買い物できる…はず。」少し不安げにアリアはそう言った
「しかし…危険だ。」
「何があるんですか?」
「地下の土地は基本的にギャングやらヤクザやらが統治してる。つまりティアが死んだ王女であるとバレたら…」
「命を狙われる可能性…」
「とりあえず出かけるのはだめだ、しばらく休め。俺もなんかカッとなりすぎた。」ジルは部屋を出ていった。
「残念ですね…」気まずそうにアリアが言う
「でもなんでそんな子がここに?」率直に聞いた
「王女だってわかったのは最近なんです。」アリアは真実を語り始めた。
「元々あなたと同じように半年前の爆発に巻き込まれてたんです。この子はその頃まだ幼かったので、パパは必死になって助けたんでしょうね。」アリアは少し穏やかな顔になった。
「でも親は見当たらず一時的に保護するって名目でこの家に来たんです。」
ティアが美娘の膝を枕にして横になる。
「それが成長してきて、遺伝子検査とかしていくうちに死んだとされるウェストリー家の王女様だって判明したんです。」
ふとティアに目線をやると幸せそうにウトウトしている
「今さら死んだ王女をかくまってましたなんて言えるはずもなく…今のところティアって名前でこの家にいるんです。」
「まぁ…本人は自分が王女だなんてこと気にもとめてないみたいですけど。」そう言ってアリアは微笑む
気がつけば王女様は眠りについていた。
翌日に実践訓練を控えている美娘はティアの面倒を見ていた。昨日のことを考えると複雑な感情がこみ上げてきた。そんな中気分転換だとジルに誘われ、アリアとティアを置いて出かけることに。




