報告と魔法
「……それではメリーゼ嬢は何もしてないのに悪者扱いされて追放されたんですね」
「えぇ、私には身に覚えが全くありませんから」
現在、アネッサはメリーゼの話を聞いて報告書を書いている。
「やはりこの国の聖女は偽物の可能性が高いですね。 そして魅了持ちである事は間違いないでしょう。 問題は魅了がどこまで影響しているかです」
「解く事は難しいのか?」
「状態によりけりですね、深い状態だと例え解けたとしても後遺症は残るでしょうし最悪廃人としてその後の一生を過ごす事になるでしょう……」
廃人、と言う言葉にゴクリと唾を飲んだ。
魅了がどうして禁断の魔法と呼ばれているかわかったような気がする。
相手を洗脳させ意のままに操り下手したら国を乗っ取る事もできる。
マジで怖いな……。
「すぐに聖教会に報告しないと……」
「まだ怪我は治っていないだろう、無理をしては駄目だ」
「そうですよ、お体に触ります。何か聖教会と連絡を取る方法はありませんか?」
「ある事はありますが……、魔力を使うので相手に気づかれる可能性があります」
「方法というのは?」
「この報告書に魔法をかけ聖教会に直接飛ばす、と言う物です」
「……やってみる価値はあると思うぞ」
「ジードさん?」
「やらないよりやって後悔した方が良い、て事だよ。 バレたらそん時はそん時だ」
「そうですね……、このまま何もしないのも騎士として出来ません」
そう言うとアネッサは報告書を折り鳥の形にした。
「飛行魔法! 聖教会へ飛んでいけ!」
すると報告書はふわりと浮かび、そのまま鳥のように飛んでいった。
「凄い……、私魔法って初めて見ました!」
メリーゼは目をキラキラさせている。
「いや、そう言われると……、照れますね……」
アネッサは顔を真っ赤にして照れていた。
結果としてはこの報告書は無事に聖教会に届いたみたいで後日、聖教会のお偉いさんがやってくるのは別の話だ。




