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安楽椅子の魔女 〜四人の死に戻り令嬢と暗黒のお茶会〜  作者: 平沢ヌル
第一夜 ジャクリーヌの毒殺
6/25

第6話『死に戻り』

自身の死の原因を知ったジャクリーヌは、どんな決断を下すのか?

 やがて、ジャクリーヌの私室の景色は溶けていき、全ては闇の中に帰っていく。

 だが、その中に立つ四人の令嬢と、それから魔女の姿だけは、不思議とくっきり見えていた。


「…………」

 無言でへたり込むジャクリーヌ。そこに寄り添うのはシセリアだ。

「でも、それでも。ジャクリーヌさん」

「……なに、よ」

 声を掛けるシセリアに、掠れた声で応じるジャクリーヌ。

「『君には、悪いようにはしないから』、シュヴァリエさんはそう言いましたね。つまり、殺すつもりはなかった、彼自身には。たぶん、そうです」

 シセリアは思い返す、最後に見た光景を。ジャクリーヌはまるで眠っているようで、死の間際に見せたと思われる恐ろしい表情をしていなかった。

「シュヴァリエさんは、それを睡眠薬だと思っていた。そして、それを渡したのは」


 それから、シセリアは振り返る、残りの一同の方を。


 エレーヌ、魔女、そして、——クローデット。


「……シュヴァリエさんはこう言いましたね。『奥方様の命令だ』と。ジョルジュ第二王子の奥方様、それは、あなたじゃないですか。……クローデットさん」

「…………」

 クローデットは、ただ黙って、喉の辺りを手で押さえている。思い返してみると、ジャクリーヌの殺害の見聞を始めてから、クローデットは無言になってしまった。

「…………私は」

 絞り出す様な低い声でクローデットは呟く。

 ゆらりと、ジャクリーヌが立ち上がる。

「…………そう」

 ジャクリーヌもまた低い声で、しかしそれは、地獄から聞こえてくるかのような、迷いの消えた声だった。


 そのとき、手を叩く音が一つ。

 それが、一触即発に発展しそうなこの場の空気を遮る。

「……ここまでだ」

 そう言ったのは魔女。

「ゲームのルールの追加説明だ。自分の死の理由を知った令嬢は、この後やりとりされる情報を知ることはできない。死に戻りを望むかどうか、それから死の記憶を継承するかどうかを選んで、このゲームからは退出しなければならない。と言っても、このお茶会でのやりとりの記憶は引き継げない。我々に不利に働きすぎるからね。引き継げるのは、現世で起きた出来事の記憶だけだ。……というわけで、ジャクリーヌ、君の選択の時間だよ」


 一同の視線がジャクリーヌに注がれる。

 ジャクリーヌはやがて、口を開いた。


「わたくしは、戻ることを望むわ。そして、死の記憶も継承する。二度と、同じ理由で殺されないように」

 そう言って、ジャクリーヌはクローデットを睨め付けた。

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