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安楽椅子の魔女 〜四人の死に戻り令嬢と暗黒のお茶会〜  作者: 平沢ヌル
第一夜 ジャクリーヌの毒殺
4/25

第4話『食堂にて』

ジャクリーヌの殺害現場から、別の場所へと運ばれる一行。そこで何を見て、何を聞くのか。

 そこは、屋敷の食堂のようだった。一行は、テーブルから少し離れた、部屋の隅の方に立っている。

 明るい室内には長いテーブルが置かれていて、それを挟んで向かい合う男女の姿がある。一方はジャクリーヌで、先ほど殺害現場で見たのと同じ夜会服を着込んでいる。

 もう一方の男性は、暗い色の髪に略式の礼装の男で、二十代後半のような印象だ。背は低くもないがそこまで高くもなく、髪色もあってもみあげがやや目立っている。それ以外の印象としては、まあ伊達男なのではないかと言えた。


『ねえ、シュヴァリエ様』

『なんだい、ジャクリーヌ』


 シセリアたちの耳に、声が聞こえてくる。


「あれがシュヴァリエさんですか?」

「ジャクリーヌさんも楽しそうですね」

 口々に尋ねるシセリアとエレーヌに、ジャクリーヌは反発して見せる。

「何よ、別にいいでしょ!」

「しっ。まずは、二人の会話を聞こう」

 そう言って一同を制したのはクローデットだ。


『シュヴァリエ様のような貴族の方が、我が家の縁者になっていただけるなんて。父も母も、鼻が高いと申しておりますわ』

『お褒めの言葉には及びませんよ。何せ、ベルナデット商会と言えば、このラマルタン王国では並ぶもののない大商人だ』

『運が良かったのでしょうね』

『運も実力のうち、でしょう? そのかいあって、王家——』


 そこで、シュヴァリエは視線を左右に走らせる。その様子が、まるで立ち聞きを警戒しているか、何かを探しているかのようだと、観察していたシセリアは思った。


『特に、ジョルジュ第二王子様とは、格別深い繋がりがあるとか』

 シュヴァリエの言葉に、ジャクリーヌは——過去のジャクリーヌの幻影は、優雅な、そして意味深な笑みを浮かべる。

『ジョルジュ様には、格別のご厚意を。ですからわたくしたちも、格別の援助でお答えしたい所存ですわ』

『我々の縁も、ジョルジュ様に取り持っていただいたようなものだ。ジョルジュ様の健康と未来に、乾杯』


 シュヴァリエがそう言うと、シュヴァリエとジャクリーヌは互いに杯を傾ける。


『……わたくし、少し酔ってしまったみたい。普段は、父も母もいないこんな日には、お酒など飲まないのですけれど』

 ジャクリーヌはきょろきょろと、落ち着かなげにし始めている。

『では、僕の持ってきたお茶を飲んでみてくれますか。酔い覚ましにはちょうどいい。……』

 やがて、屋敷の召使の手によって、お茶が運ばれてくる。鮮やかな青緑色のお茶だった。

『……どうですか』

『おいしいですわ。でもわたくし、なんだか眠たくなってきてしまって』

『僕がお部屋までお連れしましょう。婚約者とは言え、嫁入り前の女性に失礼は働きませんよ』

 そんな会話をしながら、ジャクリーヌはシュヴァリエに肩を支えられ、食堂を出て行く。


 それが、この場面の最後だった。

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