表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

第25話『魔女のゲーム』

——あまねくお空の全ての鳥が

溜め息をつき、すすり泣く。

鳴り響くのは弔いの鐘、

こまどりの死を哀れんで。——

(マザーグースより)

——あまねくお空の全ての鳥が

溜め息をつき、すすり泣く。

鳴り響くのは弔いの鐘、

こまどりの死を哀れんで。——

(マザーグースより)


 かくてお茶会は終わってしまい、後には魔女と、傍らに立つ従者だけが残された。

「さあて、どうなりますかね? 君はどう思う、ドラクル?」

 そんな風に、魔女は傍らの従者に向かって声をかける。


「……よろしかったのですか」

 従者、改め、ドラクルは、そう答えて仮面を外す。仮面の下からは、異形の青年の顔が現れる。

 銀色の髪に浅黒い肌、目は白目であるはずの部分が黒く、黒目は光り輝く黄金の色だ。耳の後ろからは、山羊のような角が生えているが、仮面を被ったままだとそれが仮面から生えているように見えるのだ。人間の客人がこの館を訪れる時には、彼はこの仮面を被ることにしているようだった。

「言わないよ、そんな惚気話は。生贄になった村娘を憐れんだ心優しき悪魔が、彼女が生き返るための術式を構成した、八回目の死が実現すると、彼女らが死ぬ前じゃなくて、僕の死ぬ前に時間が戻る、なんてね」

 その言葉とともに、魔女はふたたび、背後の巨大な砂時計を指し示して見せる。

 悪魔の魔力は、実のところ人間の欲望、それも人倫を外れて悪意に染まっていく性質の欲望と共鳴して初めて引き出せる。人間たちの望みを叶えながらその破滅へと誘導できる場合には悪魔の力は絶大だ。逆に、そうでない場合には、大きな力を引き出すのは難しい。

 この悪魔にとっては、私利私欲、あるいは怨恨や憎悪に染まった人間たちが殺害した四人の令嬢の時を、その因果の直前まで戻すことは容易い。だが、それ以前に死んだ一人の少女を救うために時を戻すことは、世界の法則に背くようなものだった。

 この砂時計は、四人の令嬢の八回の死、その術式によって溜まっていく悪魔の魔力、つまりはその過程で蓄積されていく人間の罪業を計るためのものだった。


 魔女の戯言に、悪魔ドラクルは仏頂面で返答を返す。

「あなたのためだけというわけではないですよ。建国前まで時間が戻れば、そこで生まれ、死んでいった人間たちの人生は、そもそも最初からなかったことになる。それらの魂はみんな行き場を失って、全部回収することができる。私みたいな力弱い悪魔には、これがせいぜいってところです」

「なかなか素直じゃないね、君も」

「どっちがですか。……だから、いいのですか。彼らにあんな風にヒントを与えて。王国が滅んだ時に四人の娘が生きていれば、術式は効力を失う。あなたが生き返る機会も失われる、おそらくは永遠に」

「ううん、どうかねえ。彼らにとっても僕にとっても重大な決断を下すのに、フェアなゲームにならないのは、主義に反するからね」

「情けをかけるのですか? 自分を殺した人間たちに」

「僕も、昔は人間だったからね。……それに、このままここで君と永遠の時を過ごすのも悪くはないかな、なんてね。それとも、術式の効力が切れたら、僕は消えちゃうのかな」

「それを人間に伝えることは、許されていませんからね」

「よく言うよ、人をこんな存在、魔女なんかにしておいてさ」

 そんな会話とともに、魔女の館の、永遠の夕暮れが更けていく。




 そうして、再び幕が開ける。

 令嬢たちの死のゲーム、生き残りをかけた戦い、悪魔と人間の間で、その魂と未来を賭け種にした丁半博打、その幕が。


(了)

これにて完結となります!

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


こちらの作品がお気に召しましたら、長編SF小説『転生歴女 〜メイドとオタクと歴史の終わり〜』も読んでみてくださいね。

https://ncode.syosetu.com/n7244hv/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ