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第27話「マナスレニア海戦」

27.「マナスレニア海戦」バブラルグ・ユシャ・ハロハ=ロウィ上等兵


 艦船名称:第三級A2ゼイナート

 艦船等級:第三

 規格分類:A2

 艦種:軽巡洋艦

 全長:3,120メートル

 主動力源:

  ランチューク四層型(そう)(てん)()複合粒子反応炉×6

  ヴァト超高効率エネルギー増殖炉×12


 ヴェルシタス帝国軍で最も広く、長く運用されている多用途巡洋艦。約3万年前に生産された初期モデルと比較し、現行モデルは技術の進歩により、全ての領域で自動化、最適化が進み、その性能は飛躍的に向上した。

 可変戦闘機レイトアンや人型兵器サラスターといった多種多様な(かん)(さい)()を格納できる拡張空間多目的ハンガーを有し、地上部隊を送り込むための兵員輸送機、イーガスやジンシーンといった地上制圧用兵器も多数収容されている。これによりゲートを通じたスペクルム・ユニバースからの増援を受けずとも、(たい)(てい)の文明の星を制圧するのに十分な戦力を展開できる。

 当然、対艦兵装も充実しており、主砲の超大型メテガ・キャノン二門だけでなく、多数の大型二連装レーザー砲、中型拡散ビーム砲、大型ホーミング・プラズマ・チャージ砲を組み合わせることで敵艦を効果的に破壊することが可能だ。


〈第797‐00カルドノ宙域艦隊〉


  所属:ヴェルシタス帝国宇宙軍

     第332‐85マカデ統合艦隊


  艦隊司令:イグォサヌ・シシュラ少佐


  上位編成:第348‐32アグルファ基幹艦隊

       第390‐22ゴウァック広域艦隊


  下位編成: 第569‐15シエルト艦隊 他

        第292‐45オプニゼ(しょう)(かい)艦隊 他


  備考:編成番号については簡易識別方式で表記



 マナスレニア宙域(セクター45‐B)


  属 

  ガヨート・ハーブケートAR7399‐526

 (以下、略)星系


  属

  スケリュゼ・ギューザンBA2032‐883

 (以下、略)銀河


  属

  ゾルドーン・セブルケッツDD7302‐489

 (以下、略)宇宙


  属

  ローケス・ユーヤナKM117‐231

 (以下、略)インペリオーム


『全艦、予定通りゲート・アウト。航法システムに異常なし。スキャナーで所属不明の艦船を()(そく)。その数、およそ1000万』

『不明艦を解析した。武装しているもよう。(きょう)()を更新。識別データを自動振り分け。データリンクに問題なし』

『広域通信システムに障害発生。敵はこちらの通信システムを妨害している』

『味方の反応を3つ(とら)えた。照合完了。ヴァラッジ特殊作戦グループ、友軍だ』


 約600万の艦船からなる第797‐00カルドノ宙域艦隊はヴァラッジ特殊作戦グループからの救援要請を受け、マナスレニア宙域にたどり着いた。この宙域には本来、観光地で有名な惑星ラクシアータがあるはずなのだが、その姿を確認することはできない。その上、ラクシアータ惑星防衛艦隊も見えず、所属不明の艦隊がラクシアータ星系に展開、ヴァラッジ特殊作戦グループの三(せき)(しつ)(よう)に追い詰めていた。


『聞こえるか? こちらヴァラッジ特殊作戦グループ指揮官のラノズ・ヲクウェナ少佐だ! すぐさま火力支援を要請する!』

『ヲクウェナ少佐、こちら宙域艦隊司令のイグォサヌ・シシュラ少佐だ。(ただ)ちに(せい)(しゃ)を行う。こちらの弾道予測データを参照されたし。当たるなよ』

『了解だ。派手にぶっ放してくれ』

『艦隊司令シシュラから全艦へ。これより艦隊戦へ移行する。気を引き締めよ』



〈ゼイナート戦闘指揮所〉

 艦長:ホルマ・リデ・サ少尉(ライケネス人)

 副艦長:カワスゥ・ジーク(ぐん)(そう)(オウン)

 通信士:プ・ニフィーズ()(ちょう)(スォーザ)

 火器管制官:バブラルグ・ユシャ・ハロハ=ロウィ上等兵(ハウズ)

 航行システム担当:ケト・スシュム一等兵(ソルディア人)

 情報分析官:ヴォヴァイア・アポルシェ一等兵(ラゴーズ)


 ゼイナートの指揮所は外部から直接見ることができない船内に(もう)けられている。航行、戦闘、通信といった主機能が集約され、クルーは自分の作業に必要なホログラムやモニターを目の前、側面へと自由に表示させることができた。仮に指揮所から離れていても、携帯ディスプレイや装着型端末を利用することで遠隔操作も可能。


「味方のラゾーダを援護する。全艦、第一種戦闘配置。全機スクランブル」

「全艦、第一種戦闘配置。全機スクランブル。これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない。全パイロットは各ハンガーに集合せよ」


 艦自体はアンストローナ兵だけ、最悪、完全無人の自律制御もできるのだが、()()()()()を支配する帝国の都合上、高度な戦術や判断はやはり専門クルーに(おと)ってしまう。未知の敵と(そう)(ぐう)した場合はそれが(けん)(ちょ)であった。地上戦においてもこの課題は共通事項であり、複雑で多様化する戦場に対し、根本的な解決策を持たない帝国軍はアンストローナ兵以外の正規兵やボランティアを戦場に動員せざるを得なかった。


「敵艦隊が広域ゲート・ジャミング。ゲート(およ)び全領域通信システムは使用不能です。司令部と通信途絶」

「ゲート・ジャミング技術だと。これは罠か? 火器管制、正面のガリエ級へ全砲門照準合わせ。最大出力」

「了解。目標を設定」



 艦船名称:第二級A3ガリエ・ノプローム

 艦船等級:第二

 規格分類:A3

 艦種:軽巡洋艦

 全長:2,206メートル

 主動力源:

  ストレンサ三層型(そう)(てん)()複合粒子反応炉×4

  ローアンズ・エネルギー循環増殖炉×10


 ハロハの正面モニターに標的のガリエ級艦が拡大表示され、敵艦までの距離、シールドの予測耐久値、航行速度といった数値の他に自艦の各兵装の()(どう)(りつ)、標的までの()(りょく)(げん)(すい)(りつ)も合わせて写し出されている。


 全ての対艦兵装を単一目標に設定。

 飽和攻撃モード。

 最終確認、安全装置を解除。


「照準よし。安全装置解除。各砲、(じゅう)(てん)(りつ)100%、三秒後に射程(けん)(ない)。3、2、1」

「撃ち方始め」


 (いっ)(せい)に攻撃を放った帝国艦隊はほぼ同時に敵艦隊からの反撃を受けた。


「被弾。シールドレベル6%低下。なおも低下中」

「このまま最大出力で撃ち続けろ」

「敵機、複数接近」

「迎撃態勢を取れ」

「了解。敵機を()(そく)


 まるでゲームのように敵機が画面上でマークされ、ハロハは左手で武装を選択し、右手でトリガーを引いた。火器管制官であるハロハの動きに合わせ、自衛火器が(いっ)(せい)に敵の戦闘機部隊へ射撃を行い、近づいていた全ての敵を(げき)(つい)した。


「いい腕だ、ハロハ」

「ケス4、ライカ2、ハーブケート4の反応消失。さらにスケリュゼ3、4が被弾」

「ユーヤナ隊にスケリュゼ隊の援護へ向かわせろ。ケーク隊、ラカ隊は引き続き、敵艦のシールド突破を試みよ。ハーブケート隊は前衛部隊の支援だ。まもなく敵艦のシールドが落ちる」


 艦船等級や武装が異なるため、艦船数の多さで戦力を(いち)(がい)に比較することはできないが、こちらの戦力600万に対し、敵戦力は1000万。これだけの戦力を軍に知られず、国内で整えるのは不可能である。それだけではない。相手はゲート・ジャミング技術を量産し的確に運用している。ゲートを封じられた帝国軍はイグシアス・ドクトリンをほぼ無効化されたといってもよく、戦闘による戦力の損失は嫌でも目に見える形になっていた。


「敵艦隊は突撃陣形を形成。ガリエ級、こちらに急速接近」

「連中はこちらの分断を狙っている。友軍との距離に注意を払え」

「敵機、近接防衛(けん)(ない)に多数出現!」


 先ほどまでスキャナーに表示されていなかったはずの敵性反応がいくつも表示された。

 目と鼻の先だ。


「敵はエネルギー暴走状態。衝突コースです」

「自爆する気だぞ。撃ち落とすんだ!」

「全方位囲まれています! 複数の重力魚雷が接近!」

「迎撃急げ!」


 主力エンジンを極限まで(こく)使()し、暴走状態となった敵機には重力魚雷が(とう)(さい)されている。ハロハの操作する自衛火器は暴走状態の敵機を、自動迎撃システムは放たれた重力魚雷をそれぞれ目標に迎撃を試みた。


 だが、敵の方が一枚上手だった。


 敵が放ったのは重力魚雷ではなかった。実際に放たれたのはフロアドネス粒子を内包した拡散デバイスであり、魚雷は自壊して高密度のフロアドネス粒子を宇宙空間に放った。


「シールド消失! 再起できません!」

「自衛用火器システムが停止! 敵機、迎撃できません!」

「くそっ、総員、耐衝撃!」


 拡散したフロアドネス粒子はゼイナートの電子設備に広く(かん)(しょう)。特に船体シールド発生装置へ強く作用した。シールドを失ったゼイナートは敵艦からの砲撃を浴び、次々と敵機の特攻を受けた。船体に(きょう)(れつ)な衝撃が走る中、ゼイナートは何とか持ち(こた)えていたが、次の一手で終わりを迎えた。


 重力魚雷。

 命中した箇所から瞬間的な疑似ブラックホールが発生し、ゼイナートを(けず)り取っていった。


 もはや正常な航行もできず、制御も失ったゼイナートは分割、()()りに崩れながら、自己消滅機能により、(あと)(かた)もなく消滅していった。

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