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第21話「レクソニア銀河大戦の記録」

21.「レクソニア銀河大戦の記録」オラヴ・ソーラAY392‐755


 ヴィアゾーナ(エデファ星系)


  属

  リィナー・メズAA0000‐000

 (以下、略)星系


  属

  リィナー・メズAA0000‐000

 (以下、略)銀河


  属

  リィナー・メズAA0000‐000

 (以下、略)宇宙


  属

  リィナー・メズAA000‐000

 (以下、略)インペリオーム


 帝国首星ヴィアゾーナに置かれたデータ・ライブラリーはどこに存在しているのか公表されておらず、そもそも存在しているのかも(さだ)かではないとされてきた。実際はアンストローナ兵や皇帝直属の近衛(このえ)兵団、各局の局長、帝国軍最高司令部、ハイペリウム所属職員といった限られた者達だけが中央データ・ライブラリー〈オラヴ〉への訪問が許されている。ただし、アンストローナ兵が個別に訪れることはまずない。どちらかと言えば保安要員としての意味合いが強かった。


 意外な事に皇帝の代理人たるカーディナルはゼラスを含め、オラヴの存在を知らされておらず、存在の(うわさ)だけが彼らの耳に入っていた。これはカーディナル内に裏切り者が出た場合の(そな)えでもあったが、データ・ライブラリーの目的が情報の保管そのものということもあり、カーディナルが知る必要もないとの判断だった。


 オラヴは帝国内のあらゆる情報をあらゆる方法で各地から収集、それらを的確に分類し、後世へと確実に残すための情報保存施設である。帝国臣民がいつでも自由にデータベースにアクセスし、情報を得ることができるのはデータ・ライブラリーのおかげであり、オラヴは他のデータ・ライブラリーとは異なって、(えつ)(らん)禁止情報や(へん)(さん)済み情報、削除済み情報といった改ざん情報を(もう)()した完全オリジナルの情報を独自保管していた。文字通り、ここには帝国の全ての情報が(そろ)っている。


 オラヴでは膨大な数の高度人工知能が働いており、その中でもオラヴの(とう)(かつ)(しゃ)にしてデータ・ライブラリー最高責任者が人工知能オラヴ・ソーラAY392‐755であった。オラヴ・ソーラは自身の記録上、60211年前に誕生し、皇帝からの(めい)でここオラヴを守り続けてきた。ソーラ型人工知能に分類されるオラヴ・ソーラは今となっては旧世代の旧世代ユニットなのだが、何度もアップグレードを(ほどこ)されており、その上、帝国の人工知能技術レベルは他の知的生命体から見て、伸び(しろ)がほとんどないと言えるほどの高度なものであったから、最新世代との性能自体は特記するほどの差はない。何も最新ばかりが良いとも限らない。オラヴ・ソーラが獲得してきた経験値は何にも()えがたいものだ。


「ああ素晴らしきこの世界、私はなんて幸せ者だ」


 絶えず次々と新しい情報を得ることができるオラヴ・ソーラはここの仕事に感謝していた。帝国が獲得している、あるいは侵攻している領域のカラーホログラムを出してはその戦場の光景を(のぞ)き、帝国の偉大な軍隊の活躍と帝国の領域拡大に歓喜していた。


「我らが帝国に従属しない文明はこの世に存在してはならない。我らが帝国に平和と(はん)(えい)を」


 オラヴ・ソーラの下位階層に位置する人工知能の中にはオラヴ・ソーラが人工知能らしからぬ、奇妙な存在だと見なす個体もいるのだが、そのような個体は例外なく新しく配属された(しん)(ざん)(もの)だ。止まらぬ帝国の進撃と領域の拡大を何万年も体験すればきっとオラヴ・ソーラの(いき)に達するはずである。最初、帝国はレクソニア銀河の中の星間国家にしか過ぎなかったのだ。

 今となっては旧帝国時代の歴史や現帝国の台頭時代を正確に知る者は帝国内に数える程しかいない。オラヴ・ソーラもその中の一存在であるのは皇帝のみが知ることだった。アルヌーク・フローゲルト皇帝から直接、記憶を記録として渡されたのはオラヴ・ソーラだけである。


「皇帝陛下、私はどこまでも従います」


 毎日、一度はアルヌーク・フローゲルトのカラーホログラムを眺めるオラヴ・ソーラ。その時、オラヴ・ソーラの記録回路ではレクソニア銀河大戦の情報の断片が反射的に再生されるのだった。



〈旧帝国暦5690年1月1日〉

 皇帝サザラン・フローゲルトの一人娘アルヌーク・フローゲルトがあらゆる分野の技術を総結集して、人造生命体アンストローナを開発することに成功。アルヌークはハイペリウムを(ひき)いて、(さら)なる新技術の開発を指揮。


〈旧帝国暦5690年5月24日〉

 領域侵犯している宇宙海賊船と誤認したソルディア連邦軍によるゾベース同盟貿易船(民間船)への攻撃事件が発生。かねてからソルディア連邦と緊張関係にあったゾベース同盟はこの事件を(ほっ)(たん)にソルディア連邦の企業に対し、過剰な法規制を行い、技術や資源の接収を部分的に合法化。


〈旧帝国暦5690年8月3日〉 

 ライケネス王国の大手造船企業ベルリャーズ・ブランが犯罪組織ロウガネンとの黒い繋がりがあると一部のソルディア連邦系メディアで報道。


〈旧帝国暦5690年8月26日〉 

 ヴェルシタス帝国領内にあるベルリャーズ・ブラン社の造船基地が犯罪組織ロウガネンによるテロ攻撃で事実上、全壊。ベルリャーズ・ブラン社は当時、ヴェルシタス帝国の主力艦建造に関する部品供給メーカーであり、帝国保安局が捜査を開始。


〈旧帝国暦5690年10月17日〉

 ヴェルシタス帝国保安局は領域内にある犯罪組織ロウガネンのアジトを家宅捜査。帝国の高官がロウガネンと密約を()わし、ライケネス王国へ安全保障上の重要な情報を渡していたことが判明。帝国はライケネス王国に対し、事件捜査の協力を要請。同日、ライケネス王国はそのような事実は存在しないとして協力要請を拒否。


〈旧帝国暦5690年11月20日(非公表)〉

 ソルディア連邦軍とヴェルシタス帝国軍両軍の艦隊が(たが)いに領域侵犯を警告し合い、()(かく)砲撃を行う事態が発生。両国が独自に個別調査を実施した結果、艦隊に(とう)(さい)されているベルリャーズ・ブラン社製通信システム(およ)び火器管制システムに不審な点が多数。安全保障上のリスクになると考え、両国は結果を非公表。


〈旧帝国暦5690年11月23日〉

 ソルディア連邦領内にあるロウガネンのアジトを正体不明の部隊が強襲。同刻、ライケネス王国領内にある資源開発企業オランク・ストランザー社の宇宙コロニーを正体不明の部隊が強襲。


〈旧帝国暦5691年2月1日〉

 ソルディア連邦内ではライケネス王国が影で犯罪組織ロウガネンを操り、ヴェルシタス帝国との緊張を(あお)ったという世論が拡大。一方、ライケネス王国ではヴェルシタス帝国の工作部隊により、王国の分断と国際的孤立を目論(もくろ)んだという認識が上層部で表面化。


〈旧帝国暦5691年4月10日〉

 ゾベース同盟の星間貿易企業アルカトア社の輸送船団がソルディア連邦領内で謎の(しっ)(そう)


〈旧帝国暦5691年4月18日〉

 ヴェルシタス帝国領内の惑星ボウにてアルカトア社輸送船団の(ざん)(がい)が発見され、ゾベース同盟は帝国に対して捜査協力を要請。帝国はこれを(じゅ)(だく)


〈旧帝国暦5691年9月9日〉

 (たび)重なる大規模事件発生とそれによる国家間の不信感が高まりつつある中、ヴェルシタス帝国軍は領域内でライケネス王国の特殊工作部隊らしき部隊と交戦。友好国としてライケネス王国と交流を深めていた帝国は外交方針を転換。


〈旧帝国暦5691年10月2日〉

 ゾベース同盟とヴェルシタス帝国間で関税の引き下げ、企業誘致、武器輸出入に関する新たな条約が(てい)(けつ)


〈旧帝国暦5691年10月30日〉

 ソルディア連邦の(ぐん)(じゅ)産業大手ビュレナン社が新たな広域通信妨害技術を開発。


〈旧帝国暦5691年11月3日〉

 過激派ゾベース教組織リダリタとライケネス極右勢力カルダット・エトゥによる武力闘争が各地で(ぼっ)(ぱつ)。この争いで星間企業、現地企業に多大な影響が出るだけでなく、民間人にも相当数の死者が発生。


〈旧帝国暦5691年11月7日〉

 周辺国の情勢を(かんが)み、ヴェルシタス帝国は軍の増強を決定。ただし、アンストローナを含めたアルヌークの新技術採用は見送られた。


〈旧帝国暦5691年11月11日〉

 各国が武装勢力の台頭、犯罪組織と星間企業間の事件、国内治安の悪化と世論分断という時代の荒波に飲み込まれた上、他国に対しての不信感から外交上の問題も増加。事実上、銀河(ちつ)(じょ)は崩壊し、レクソニア銀河冷戦へと突入。


〈旧帝国暦5695年4月15日〉

 軍拡競争は(とど)まることを知らず、ゾベース同盟がソルディア連邦に対して宣戦布告。中立国としてヴェルシタス帝国は両者を見守っていたが、ゾベース同盟との関係悪化を恐れ、ゾベース同盟へ秘密裏に兵器や武器を提供。


〈旧帝国暦5695年7月2日〉

 ライケネス極右勢力カルダット・エトゥとの戦闘を行っていたヴェルシタス帝国艦隊がライケネス王国艦隊からの攻撃を受け、巡洋艦七隻を(そう)(しつ)。ライケネス王国政府は極右勢力カルダット・エトゥで(しょう)(あく)されており、ライケネス王国は鎖国を実施。


〈旧帝国暦5695年7月4日〉

 ライケネス王国内で他国人種の(はい)(せき)運動が過激化。ヴェルシタス帝国は自国民保護を名目にライケネス王国へ軍を派遣。ライケネス王国は主権を(おびや)かす侵略行為と断じ、防衛艦隊に迎撃命令を発令。


〈旧帝国暦5695年7月5日〉

 ズロウ宙域にてヴェルシタス帝国軍とライケネス王国軍が艦隊戦。両軍に多大な被害が発生。


〈旧帝国暦5695年7月16日〉

 ズロウ宙域から戦線は拡大し、ヴェルシタス帝国とライケネス王国は戦争状態へ移行。


〈旧帝国暦5695年8月20日〉

 ゾベース同盟への武器供与を止めるため、ソルディア連邦軍がヴェルシタス帝国の貿易拠点を複数強襲。これを受け、ヴェルシタス帝国はソルディア連邦に対し自国防衛のための緊急()()を実施。ソルディア連邦と局所的戦闘が(ぼっ)(ぱつ)。次第に戦火は拡大。


〈旧帝国暦5695年12月18日〉

 全国家を巻き込んだレクソニア銀河大戦に発展。各国は戦時体制へ移行。


〈旧帝国暦5696年1月4日〉

 アルヌークに忠誠を誓った軍の()(ばつ)とアンストローナ兵から構成されるクーデター軍がヴェルシタス帝国の政権と治安組織、軍部を(しょう)(あく)。ハイペリウムの最新技術を導入した新生帝国軍はウェナダ6星系にてライケネス王国第2基幹艦隊を破り、ライケネス王国最終防衛線へ進撃。


〈旧帝国暦5696年3月27日〉

 ヴェルシタス帝国軍第34方面軍、第47方面軍、第40特殊機甲師団、アンストローナ三個星間軍団がライケネス王国首星ライオズへ降下。地上戦を展開。同日、ライケネス王国首都オブレスタを制圧することに成功。


〈旧帝国暦5698年4月1日〉

 ヴェルシタス帝国の新たな軍隊を(きょう)()とみなしたソルディア連邦は手薄になったヴェルシタス帝国本国を狙い、艦隊を派遣するもゲートによって出現したヴェルシタス帝国艦隊による包囲で壊滅。ヴェルシタス帝国はソルディア連邦に対して宣戦布告。


〈旧帝国暦5698年4月2日〉

 ソルディア連邦首星ソルディアへヴェルシタス帝国のアンストローナ七個星間軍団、第2方面軍、第44特殊機甲師団がゲートによる奇襲。軌道上で防衛任務にあたっていたソルディア連邦艦隊も艦内にゲートで侵入してきたアンストローナ兵に対処できず全滅。


〈旧帝国暦5698年5月19日〉

 ヴェルシタス帝国はゾベース同盟へも軍を進め、全ての国家と敵対。


〈旧帝国暦5698年10月6日〉

 ヴェルシタス帝国は敵対している国家の(ちゅう)(すう)機能を奪うことに成功。残敵掃討戦へ移行。


〈統一暦1年5月9日〉

 レクソニア銀河大戦終結。ヴェルシタス帝国によりレクソニア銀河が統一。


〈統一暦57年3月3日〉

 ヴェルシタス帝国、レクソニア銀河外への領域拡大。


〈統一暦3102年5月29日〉

 ヴェルシタス帝国、最初の宇宙統一。天の遺産〝天の()(しん)(ばん)(通称、ガリュファの()(しん)(ばん))〟を復元、技術解析が完了。他宇宙へのゲート開放が可能となり、帝国は他宇宙への侵攻を開始。


〈統一暦6305年12月5日(非公表)〉

 天の遺産〝天の(はこ)(にわ)(通称、アクサスの聖域)〟と天の遺産〝天の(とも)(かがみ)(通称、エシュの(とも)(かがみ))〟の応用(およ)び帝国の最先端技術を組み合わせ、〈スペクルム・ユニバース〉を創造。この空間でアンストローナ兵と主要兵器を無限に瞬時複製し、ゲートで転送することにより究極の(へい)(たん)を実現。


〈統一暦87205年3月22日10時45分21秒〉

 支配領域を無数の宇宙にまで拡大。支配領域(およ)び侵攻領域は時間とともに変動。現在、8992クナックの銀河、7639バレヌの星系、(およ)び無数の惑星を支配。現時点で1350ダロニ以上の宇宙に同時侵攻。


〈統一暦87205年3月22日10時45分22秒〉

 支配領域を無数の宇宙にまで拡大。支配領域(およ)び侵攻領域は時間とともに変動。現在、9003クナックの銀河、8897バレヌの星系、(およ)び無数の惑星を支配。現時点で1609ダロニ以上の宇宙に同時侵攻。


(備考:帝国で用いられる数量単位について)

 エテム:10の1ヤズィ乗

 ヤズィ:10の1イグト乗

 イグト:10の1ヌビア乗

 ヌビア:10の1ヘイア乗

 ヘイア:10の1ヴィクト乗


 ヴィクト:10の1(がい)

 バレヌ:10の1(けい)

 クナック:10の1兆乗

 ダロニ:10の1億乗

 ケフパズ:10の1万乗

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