再会
私の後ろの席は、中1で同じクラスだった子だ。私が席に着いてしばらくすると、後ろから声をかけられた。
「あの、おはよう、中村さん」
「西野さん。おはよう。なんか久しぶりね」
西野さん。中1で同じクラスだった、つまり、私と佐竹さんたちの間に起こったことを知っている。中1の時と今の私が違いすぎて、引かれないか心配。こうやって話すのは中1の修了式以来だから、中2の1年での私の変貌ぶりが分かりやすいと思う。
「中村さん、中1の時と雰囲気変わったよね」
「そっ、そう?」
悪い変化じゃないと思うし、その通りだけど、つい否定したくなる。
「うん。明るくなったというか…よかった」
よかった、と小さく言ってくれたのが聞こえる。心配かけちゃってたのかな。あまり話したことのないクラスメイトだったけど、気にかけてくれていたのが嬉しい。というか、あのことがそれだけ大事ってことにもなるけど。
「へえ。ふたりは、中1で同じクラスだったんだ。あ、あたし、野田誠奈っていいます。えっと、希歩ちゃん、だっけ。よろしくね」
いつの間にか話に加わり、この短時間で西野さんを「希歩ちゃん」呼びにしている誠奈ちゃん。すごい。
「よろしくお願いします…誠奈ちゃん?」
戸惑ったように言う西野さんを見て、気がついた。西野さんって、下の名前で呼べば、下の名前で返してくれるんだ。中学生になってから、まずは苗字にさん付けで呼ぶのが主流だった私は、いまだに「西野さん」のままだった。下の名前で呼びたいけど、いきなり呼んだら驚くよね。段階を踏んでからにした方がいいかも。
それにしても、誠奈ちゃんと西野さんって、雰囲気が似てる。穏やかな感じとか、会話の中に思いやりがあるところとか。少ししか話していないけど、この子たちといると居心地がいい。
「ねえ、担任の先生って誰だろうね?」
誠奈ちゃんの問いかけに、西野さんと顔を見合わせた。担任の先生は、各クラスの名票の一番上に書いてあるから、発表済み。しかも3組の先生は、どの先生にも負けないくらいの太くて大きな字で名前を書いていたから、すごく目立っていて、字だけで熱血なのが伝わってきた。
「えっと、名票に書いてあったと思う」
「そうそう、英語の」
名前は言わないでおこう。こういうのって、自分で確かめた方が楽しいでしょう?
「え、気づかなかった。英語?誰だろう」
いいタイミングで本鈴が鳴り、その英語科の担任の先生が教室に入ってくる。教室前方の扉が勢いよく開き、扉が壊れていないか心配になった。
「あの先生?」
西野さんとふたりでうなづく。
「みなさん、おはようございます!」