プロローグ
「3年3組、22番」
貼り出されていた新クラスの名票で、自分のクラスを確認する。ずっと心拍が上がっていたのが、すっと落ち着いていく。ほら、やっぱり心配するほどのことじゃなかった。
ざっとクラスメイトの名前に目を通したら、他クラスも少し見てみる。一瞬ドキッとしたのは、私が確認したかった3人の名前を、同時に“3年1組”の欄に見つけたからだ。確認は一度に済んでよかったけど、ろくなことが起きる気がしない。なおさら、今年の自分のクラスでの過ごし方が大切になってくる。
「よし、行こう」
まだ賑わっている人だかりに背を向けて、階段を上り始める。だんだんと遠ざかって聞こえるのは、悲鳴や歓声。大丈夫、私は1人でもやっていける。あれ以上の辛いことは、多分もう起こらない。誰のことも傷つけない。傷つきたくもない。そのためには、深入りしないこと。浅く、広くを第一に。そうすればきっと、特別なことは起こらないけど、普通の1年になるはずだから。
そんな私の心が一番、悲鳴をあげているのかもしれない。「助けて」って。「もう解放されたい」って。今は気づかないふりをして、自分で自分を励ましながら、一段ずつ新しい教室に近づいていった。
21 中村 愛架
22 中村 幸
23 西野 希歩
24 野田 誠奈
今年のカギを握る四つの番号は、この時は特別な意味を持つこともなく、ただ形式的に繋がっているだけだった。