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転生女子高生、市民プールニいく

 今日は、朝から落ち着かない。

 けれど、朝準備をして、妖精ノートを読む。


 くみさんとの待ち合わせは、十三時だ。

 きっと、彼女らしい可愛い水着を持ってくるだろう。

 わたしは、慌てて昨日買ってきた水着を持っていくことになる。


 学園は土曜日の今日は休みで、来週の土曜日には授業がある、というペースだ。


「いってきまーす」


 今日も(から)の寮の部屋に挨拶をしてからでていく。

 途中、寮の管理人に、


「今日プールいってくるんだ」


 と話すと、


「あまり無理しないようにね」


 といわれる。


「わかったぁ。じゃ」


 学園の借りもの自転車で、市民プールまでいく。

 途中自販機で、飲みものを買って飲んでみた。

 転生女子高生になってみて、驚いたことのひとつに、こんなにも自販機がたくさんあることだ。


 妖精たちは、みんな自分の水筒を持ったり、魔法で水から、飲みものを自作して、カップがわりになるもので飲んだりと、自販機を使う機会などあまりなかった。

 妖精自販機で代わりにあるのは、回復アイテムや、MSP栄養剤やほか自作用の細かいミニアイテムばかりだ。



 市民プールにつき、駐輪場所で、自転車をおく。

 鍵をかけてポケットにしまう。

 くみさんはまだ見たところいないが、すぐ来るだろう。

 トケルンとあだ名をつけた、時計デバイスに目を移すと、時刻は十二時五十五分。


 自転車が走ってきて、となりに停めた。

 くみさんが、笑って言った。


「おはよう」

「くみさんおはよう」

「どう、水着は買えたの?」

「昨日部活終わりに買ってきたけど、あまり可愛いくないよ」

「いいよ、別にー」

「そういえば、くみさんメガネは大丈夫なの?」

「そんなには悪くないから、顔はわかるよ。

 水のなかで、ひとの顔みるくらいは平気」

「わかった。いこっか」


 市民プールのなかに入り、受付をとおる。

 更衣室で着替えをして、プールにでていく。


 ひとがたくさんだ。

 今日の天気は晴れて夏って感じ。

 もうすぐ夏休みだからか、子どもたちや家族連れもけっこういる。

 くみさんが更衣室からでてくると、メガネをはずして、黄色と赤のデザインされた、フリルつきの水着だった。


「可愛いじゃん」


 声をかけると、照れていた。

 わたしのは、ビキニだけど、特に色は白という以外には特徴があまりない。



 まずは、流れないプールで、浅いところから入っていく。

 水のなかの感触は思いだすも、泳いだ記憶は戻ってこない。

 もしかしたら、妖精時代もあまり海やプールには、入ってこなかったのかもしれない。


 くみさんが手を繋ぎ、


「まずは普通に浮かんでみて」


 と言われた。

 背中を水に預けて、水のなか、浮かんでみる。


 ブクブク。


「浮かんでるよ。」


 くみさんが、笑った。


「なにー?」

「ホントに泳ぎわからないんだね。」

「そういってるぅ」


 そう言おうとして、沈んでしまった。


 ブクブク。


 浮上して

 立ちあがり。


 わたしも笑った。


「水に慣れよう」


 言われて、ひととおりその場で

 泳ぐ真似をしたり、浮かんでみたり、息継ぎしたり。

 沈んでみたり、潜ってみたり。

 くみさんの真似をしていて、だいたい泳ぎがわかってきた。


「じゃ、泳いでみよっか」


 二人して、少しずつプールの深いほうにいきながら、思いきって、クロールとやらをやってみる。


 誰かにぶつかり。

 立ちあがり。


「ごめんなさい」

「いいよ。お姉さん下手だね」

「ごめんね」


 またクロールをしてみる。

 いい感じだ。

 くみさんもとなりで泳いできてくれる。

 みていると、くみさんはけっこう泳げるらしい。

 それに体型も細身で、顔もいい。

 これは、モテるなぁ、と泳ぎながら、思ってしまう。


「りーあ、なにー?」

「別にー?」

「だいぶ泳げてるよ。」

「ありがとう。だいぶ平気になってきた。

 思いだしてきたよ」

「そう、よかった。あとで競争しようよ」

「そうだね」

「でも、ここはひと多いね。

 よし、とりあえずひとまわりしよ」

「そうだね」


 ひとの水の流れにのって、プールをいったり来たりする。

 そのあと、一度そこから離れて、次は流れるプールに入る。

 流れるプールのほうでは、さらにひとが多い。


「ひと多いね。でもいっか」


 二人して入り、流れにながされながら、少しずつ泳いでいく。

 少しくみさんと離れてしまった。

 一周している間に、また合流した。


「もうなにこれー!」

「何かひと多いけど、楽しいね」


 ひざしはもう夏の暑さ。

 でもプールにはちょうどよく、ひとの多さに苦労しながら、ちょっとずつ泳いでいく。



 二周ほどしたところ、流れるプールからあがる。


「深いところもあるけど、今日はパスしようか」

「そうだね。あー、けっこう楽しいね」

「よかった、くみさん楽しめて」

「男子ともこれなら、来られるかなぁ」

「えーとおやくんとか、ななちとか?」

「そう」

「いや、いいよ。女子どうし仲良くしようよ」

「ふふ、ありがとー!」


 わたしは、まだ慣れてはいない水着をみにつけながら、くみさん誘ってよかったな、と思う。

 もう一度、浅いプールのほうにいき、子どもたちもいるなかのプールに入る。


「これなら体育の授業でも入れそうだよ」

「そっか、よかった」

「でも、わたしは、体育の授業苦手なんだよな」


 くみさんが言う。


「そうなの?」

「なんか学園のひとたちが集まるプールだと、なんか緊張しちゃう。よく休んでるんだ」

「そっかぁ」


 くみさんとは、クラスは別だから、学園の授業でペアにはなかなかなりづらい。


 プールが少しすいてきた。


「じゃ、ちょっと競争だね」

「わかった。やってみよう」


 プールの(はし)から、一緒にスタートする。


 くみさんは本気ではないだろうが、なかなかに速い。

 わたしもだいぶ水にはなれたが、うまいクロールにならなくて、負けてしまう。


「はぁ。くみさん速いじゃん」

「ふふー。あとで、勝ったし打ち明け話しでもしてもらおうかなぁ」

「えー、そうなの。わかった」


 二人で二時間ほど、流れるプールと浅いプールを行き来した。


「疲れてきたね。そろそろ帰るかなぁ」


 といってプールから上がった。

 シャワーを軽くあびて更衣室にいく。


 腕につけていた、ロッカーの鍵で、カギをあけて、タオルを使い、着替えをする。

 プールがこんなに楽しいとは思わなかった。

 また来よう。


 妖精333年生きて、たぶんこんなにはプールや水には入らなかっただろう。


 市民プールの施設からでて、自販機の場所まで、自転車で案内する。

 自販機のところでとめて、時計デバイスでタッチして飲みものを購入する。

 今回は二つだ。


 一つをくみさんに渡す。


「くみさんの勝ちだから、はいこれ」

「ありがとー。それで、打ち明け話しはしてくれるのかな?」


 わたしの打ち明けかぁ。

 少し考えてみる。


 くみさんは、自身のまだ濡れている髪を払う仕草をして、眼鏡をとりだしてかける。


 ジーとみてくる。



 これは何か話さないと。

 悩んで、ものは試し。


「わたし、魔法使えるの。魔法使い女子高生なんだ」


 ふふと、笑ったあと、くみさんは声をだして笑いだした。


「いいね、それ。わかった。魔法使いなんだ? りーあ、いいねそれ」


 笑ってくれてよかった。


「あと、前世も知ってるよ」

「えーそうなんだぁ」


 また笑っている。

 どうやら、冗談を話していると、思ったようだ。


「わかった。ありがとー話してくれて」


 笑い終わってから、サイダーの飲みものを飲む。


「りーあっておもしろいんだね」

「そう、よかった。水泳楽しかった。今度は授業の体育もでよう」

「そうだね。でももうすぐ夏休みだよ」

「そう。そうだ。くみさん、今度一緒にでかけようよ、夏祭りと花火大会いかない?」

「え、いいよ」

「花火大会は、たぶんとおやくんとななちもくるけど、大丈夫?」

「大丈夫だよ。ていうか、ほんととおやくんと仲良いね」

「最初に部活に誘ってくれたのが、とおやくんなんだ」

「そっかぁ。演劇部頑張ってるね」

「いまのところ照明メインだけどね」


 くみさんは眼鏡をさわって、位置をなおす。


「いいなぁ。わたしも演劇部もよかったなぁ」


 自転車によりかかりながら話す。


「文芸部とテニス部はどう?」

「文芸部は、まだこれからってとこ。

 テニス夏休みに大会あるよ。

 勝てるかは、わからないけどね」

「そっかぁ。応援いくよ」

「ありがとう。でもいいよ。

 暑いなか待たせちゃうし、日焼けするよ?」


 りーあは、日焼けなど気にしていなかったため、少し驚く。


「え、大丈夫」

「そう?

 りーあって肌白いから、日焼け対策とかしてるかと思った」

「えーしてないよ。」

「そうなの? 大会はいいから、夏祭りと花火大会ね。

 覚えておくよ」

「わかった。とおやくんななちにも話してからだね」

「うん、わかった」


 時計デバイスをみると、十五時半になるところだった。


「あ、じゃわたし夕方に買いものあるから、そろそろいくね」

「そっかぁ。今度カラオケとかもいかない?」

「いいねー!」

「わかった。計画たてようよ」

「そうだね。じゃ、またね」

「また」



 くみさんとわかれて、自転車で一度寮に戻ると、管理人にかえってきたと、伝えた。

 そのあと疲れからか一眠りしてしまった。


 起きたのは、夕方。

 もうすぐ十八時になる。


 時計デバイスから、とおやくんを検索すると、電話をかける。


「おはよー。とおやくん」

「こんにちは。もう夕方だよ」

「そうなの、一眠りしてた。

 今日くみさんと泳いできたよ」


 そういうと、とおやくんは、


「えーいきたかった!」


 と言った。

 電話で続ける。


「市民プールにいって、練習してきた。ちゃんと泳げるよ」

「そっかぁ。よかったね」

「それで、夏休みのことだけど」


 言いかけると。


「あ、いまからでられる?」

「え、でられるけど」

「ななちと遊んでから、わかれて、いまショッピングセンターで休んでるとこ。

 三十分後にこられる?」

「わかった」


 電話をおわりにする。

 そのあとバタバタと準備をして、でかける。



 管理人室に呼びかけるも留守のようだ。

 自転車でショッピングセンターまで、十五分くらいだ。

 ショピングセンターについて、探してみると、ドーナツ屋さんで休憩しているとおやくんを発見した。


 ドーナツ屋さんで、一つドーナツを注文して、お会計する。

 飲みものに冷たい紅茶をつけた。

 席につくと


「あ、きたね。となりいいよ」


 となりに座る。


「おはよー。とおやくん」

「こんにちは」

「ふふ。くみさんと泳いできたあと、少し寝てたよ」

「そっかぁ。それで、夏休みのことだけど」

「うん」

「夏祭りと花火大会はいくとして、

 部活もあるから、予定組まないとね」

「そっかぁ」

「それから、照明のことも話したいし」

「そっかぁ」


 試しに、とおやくんの肩をこづくと、預言者レポートが発動する。


 またとおやくんが転落する場面が、魔法視される。

 どうやら、そんなに遠くの未来ではないのかもしれない。

 (そば)にはめぐやんとえみさんがみえる。

 部活中の事故だろうか。


「どうしたの?」

「ううん、なんでも。それで」


 話しながら、夏休みの計画をたてた。


 しかし、頭の片隅では、転生魔法をかけたものの、とおやくんがいつか転落してしまうことの不安があった。


 とおやくんの横顔をみる。


 少なくとも、今日ではないだろう。

 未来のことは、未来に任せることにしよう。


 りーあは、そう決めた。


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