花火大会、めぐりあい
プールから、りりあの家にいき、くみさんとななちは、しっかりと浴衣を準備していた。
段ボールの積みあがったなか、なんとか着替える。
りりあとさちは私服だ。
「ねぇ、ずるくない、二人」
「え、なんのこと?」
「先に二人で、買ってそろえたのね!」
「あぁ、浴衣のことね」
「りあは、買わなかったのね?」
「引っ越しのことばかり、考えてたわ」
「いいもん。りあとわたしは、私服で、気軽なんだからね!」
「さちさん、いじけないの」
すると、ななちが話しかける。
「さちさんの私服かわいいよ」
「え、ななち、わたしの浴衣は?」
「くみのもかわいいよ」
「ついでだなぁ」
みると、さちさんは、うつむいて、少し赤くなっている。
「さちさん、なんか、赤いよ」
「あう、ううん。な、なんでもないよ」
まだ、片付いていない段ボール部屋のなか、クラゲにご飯だけあげて、りりあたちは、外にでる。
「ふぅ。まだ暑い」
「歩く?」
「うん。自転車おく場所わからない」
花火大会の会場は、学園から歩いて四十分くらいの河川敷。
りりあの家は、もう少し近いから、時間は短くて済むだろう。
「さちさん、朝から疲れてない?」
「ううん。平気。でも、プール入ったから、少しすっきり」
「りーあは、まだ泳ぎイマイチね」
「そう。せっかくくみさんに教えもらったのに、うまくならない」
「りーあさんは、もう少し筋肉つけてもいいかもね」
すると、くみさんが少し複雑そうにして
「ななち、りーあの水着姿、そんなに見てたの!?」
「いや、そうじゃなくて、泳ぐときとかもっとあったほうが」
「ふーん。わたしより、りーあのほうが、スタイルいいもんね」
「くみ、違うから」
「二人、仲いいね」
さちさんが、うらやましそうにいう。
りりあの部屋から、歩いていき、ニ十分もすると、浴衣姿のひとやうちわであおぐひと、自転車で楽しそうにはしるひとなど、もうお祭りの雰囲気になってきていた。
「りあ、はお祭りとかくるの?」
「ううん。ほとんど来たことないよ」
「去年が、ほぼ初めてだったかな、りーあ」
「そうかも」
さちさんは、少し驚いている。
「えっ、夏お祭りいかないと、りあどこいくの?」
「うん。クラフトで、もの創ったり、えーと、勉強したりかなぁ」
「りあ、もっと遊ぼう」
「平気よ。りーあは、わたしが連れだしてるからね!」
なぜかしらないが、くみさんが、さちさんをライバル視している気がする。
少し歩いて、ショッピングセンターについた。
「なかで、飲みもの買ってこよ」
「夜のご飯はどうしよっかる」
「大丈夫、屋台でなんとかなるっしょ」
「えー、屋台混むよ?」
「屋台メシをゲットしてから、観るのだよ」
くみさんは、やる気に満ちている。
ショッピングセンターも、この時間ですでにかなり混んでいる。
がやがやした、ひとの多い店内をなんとか進み、飲みものを人数分購入する。
空いていたロッカーに、おさめる。
「ちょっとお化粧室」
「あ、わたしも」
お化粧室も混みあい、ななちが、
「そっち混んでるから、少しベンチ探してみるね」
といって、男性の方に入っていく。
「ね、ななちノリ気でしょ」
「ねえ、くみは、ななちのどこがいいの?」
「さちさん、運動できて、まぁ顔よくて、いちおう気づかいできれば、よしでしょ」
「うん。まぁ、そういうとこかぁ」
さちさんは、なにか考えている。
ようやく順番がきて、すませると、ななちを探す。
「こっち」
くみさんが、先にななちをみつけて、近づくと、ななちは、誰かに声をかけられていた。
「あ、じゃね」
「はーい」
くみさんがたずねる。
「どうしたの?」
「え、うん。彼女いるっていったんだけど、連絡先渡されたよ」
「えっ、ナンパされてんじゃん」
「ななちって」
「まぁ、気をとりなおして」
飲みものを取りに向かい、ショッピングセンターをでると、外の熱気に少しむせてしまう。
「いこ」
「うん」
荷物は、ななちが抱えている。
花火の始まりは、十九時くらいになっているが、まだ時間はある。
橋の辺りまで、少しずつ進む。
さちさんが、話しかけてくる。
「ねぇ、ななちモテるんだね」
「うーん。学校じゃイマイチなんだけど、外にでてみると、まぁ頼りかな」
「ふーん」
前には、くみさんとななちが、歩きづらそうにしながら、進んでいる。
橋を渡るとき、少し高いところから、みると、会場は、もうたくさんのひとだ。
りりあは、少し目眩がしてくる。
橋を渡りきると、屋台側と会場側で、道がわかれていた。
「屋台いこ」
「ヤタイ、ヤタイ」
「えっアタイ?」
「アタイ、お祭り好きやね」
「アタイも」
「ねえー!」
「ねぇー?」
ななちが、大笑いしている。
ウケたらしい。
「屋台、混んでるね?」
「迷子にならないで」
「とりあえず、お好み焼きとたこ焼きと」
「唐揚げと」
「そんなに、無理!」
「仕方ない、かき氷とたこ焼き」
「あと、お好み焼きいいひとは、そっちね」
「はーい」
りりあは、迷子になったとき、スマホで確認とろうと、画面を見ると電波がなかった。
「ちょ、ちょっと、みんな、ここ繋がらないよ」
上空の高いところで、緑羽鳥がため息をついた、ような気がした。
そのまま、ひと混みのなかの屋台に、勢いで並ぶ。
暑さと屋台の煙、まだ少しある日差しに、ひと。
一瞬りりあは、あの夏の風景を想いだす。
「りあ」
「えっ」
「はい、かき氷」
「ありがとう、さちさん」
「次は、たこ焼き」
「ふふっ」
かき氷を少し食べながら進み、そのあと
しばらく、列に並んでいるため、スマホを少し確認したあと、バックに入っていた、新魔導書をちらっと、確認するもやはり混みあっていて、邪魔かもと、すぐに閉じる。
「みんな、並べたかな」
三十分は、並んだだろうか。
やっと、お好み焼きを人数分買って、端による。
やはり、スマホをみるも電波が入らない。
ぱっと、預言者レポートの映像が観られると、緑羽鳥が、なんとかしてくれるようだ。
屋台の並ぶひとたちをかきわけていき、
河川敷の道まで戻る。
「ふぅ。みんなは」
みると、くみさんがいるだろう上空で、緑羽鳥が、くるっと周っている。
くみさんも気づいているようだ。
案内されて、河川敷の道まで、三人がでてくる。
「りーあ発見!」
「みんな無事?」
「はい」
見せられたのは、たこ焼きとかき氷だ。
さちさんは、かき氷を配ってくれていたらしい。
「さちさんありがとう」
「さ、いこ」
会場のある道にいき、見上げると、打ち上げ花火があがった。
パンと音がして、弾ける。
「きたぁ。これよ」
「間に合ったね」
「いこ」
「飲みもの飲みながらで、いい?」
「ななち、いいね」
ななちの手から飲みものを受け取り、飲むと、心地よい。
河川敷をあがり、花火の上がっている会場のすぐ近くにいくと、アナウンスとともに、次つぎと花火があがる。
しばらく、それらを眺めたあと、立ち食べで、かき氷、たこ焼きを食べる。
お好み焼きは、あとでにしよう、ということになった。
「来られてよかった」
「キレイだね!」
「花火ね」
「りあ」
「なに?」
「ありがとうれ」
「ううん。一緒でよかった」
少しさちさんは泣きそうだ。
りりあが聴く。
「さちさんは、花火好きなの?」
「うん。そうだよ。でも、中学のときに、友だちときたけど、高校では誘われてなくて、ひとりで歩いてたの」
「そうなの」
「りあは、花火みないの?」
「わたしは……」
わたしは、妖精時代のことを想い出す。
魔法を使っての光演出や魔力を競う大会、妖精ダンス大会などあったが、花火はなかったように思う。
観たとしたら、昨年のだろう。
「りーあは、もっと違うことに興味あるのよね!」
「えっ、違うこと?」
「そうそう。例えば、女の子同士のイイコトとかぁ」
花火が、一つふたつと、打ち上がる。
照らされるななちと、くみさん。
「ななちが、いるでしょ、くみさん」
「えーー! りーあ、たしかに男の子ともそりゃ、イチャイチャするけど、りーあは特別だから、もっとイイコト」
上がる花火に、くみさんの声は聴こえなくなる。
「さちさんは、どう? 気になる男の子いない?」
ふと、さちさんの花火に照らされた横顔をみると、その顔は、くみさんのとなり、ななちを向いている。
わたしは、思わずジーーッと、ななちを眺めたあと
「ねぇ、さちさんもしかして」
「しーー」
さちさんに、とめられてしまう。
「そっかぁ」
「なに、りーあとさちさん?」
「ううん。なんでもないの」
アナウンスが切り替わり、
次は、コンクール作品の花火を打ち上げるようだ。
ななちが、くみさんに話しかけている。
「もう少しで、終わっちゃうね」
「そうだっけ」
「そうそう。このあと、最後の花火になってくからね」
「はやいね」
ポツリと、さちさんが話す。
りりあは、さちさんの横顔をみながら、昨年の花火の様子をだんだんと、想い出してきた。
会場でのアナウンスで、次のが最後の花火と、ナイアガラになります、と流れてきた。
「派手だね!」
「もうおわりかぁ」
「お好み焼きどうする?」
「まだ、飲みものもあるし、公園で食べてこ」
「うん」
次つぎと、上がっていく最後の花火たち。
ナイアガラと呼ばれる花火が、流れるなか、聴いたことのあるメロディーが聴こえてくる。
少し前の春の映画で流行っていたYdoの"わたしたち最強"だ。
ひとの帰りの流れにそって、河川敷を四人して歩く。
途中の階段を下りるところで、下りていき、そして、河川敷とは少し離れた位置にある公園に向かう。
少し離れると、ひとの波がゆるやかになる。
りりあが、先頭になり歩いている途中、ふと見知った顔な気がして、立ちとまり隣をすれ違うひとをみる。
「とおやくん」
でも、その彼は気づかないのか、そのまま通りすぎて、ひと混みにまぎれてしまう。
「と、とおやくん」
慌てて、りりあは追いかける。
ほかの三人は気づかないらしい。
「はぁ……ねぇ!」
「待って」
角を曲がったような気がして、りりあもその角を曲がる。
「ねぇ!」
結局見失ってしまい、
さらに角を曲がったり、戻ってみたりすると、いつの間にかりりあは、公園にきていた。
ここは、たしか昨年に、来た公園だ。
くみさん、さちさん、ななちが追いかけてくるなか、りりあはひとり公園に入る。
「転生したんだ。戻ってきてた」
「どうしたの、りーあ?」
「ねぇ、りあ」
上を向くと、さきほど花火をしていた煙が流れてきていた。
音は少し遠く、ここの周りは静かだ。
転生魔法は、やっぱり " "




