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引っ越し、プール

 くみさんが、引っ越しの手伝いをしてくれることになった。


 いまは、くみさんの住居に近いことが決め手となったりりあの引っ越し先に、荷物を転送するところだ。


 そう、転送するのだ。


 スマホで通話して、くみさんと話す。


「いい? いまから送るからね。」


「はーい」


「手元に届くけど、びっくりしないでね!」


「はーい」



 りりあは、寮の部屋で、段ボールにまとめた荷物に手を置き、そして転送する。


「うわぁ!」


「ほら、言ったでしょ。」


「うそよ。しっかり届いた」


「わかった。次ね」


「はーい」



 くみさんに、転送魔法用の布生地の腕輪を渡して、わたしの引っ越し先の住居にいってもらった。


 布には、魔法を付加した鉱石が編みこんであり、それが転送魔法とつながっている。


 転送契約魔法なのだが、自身の荷物も送れる。

 スキルも進化してあるため、こういうときは便利だ。


「あまり、速くに送りすぎると、くみさん大変でしょ」

「ううん。重いもの以外は、スイスイよ」

「うん。わかった」


 また次の荷物を転送する。


「あ、下着って書いてある。中みちゃおう」

「こらーー!! 中みるなぁ!!」

「冗談よ」



 なんか通話ごしに、物をあけている音がしている気がする。


「なか、見てたら、これからくみさんのこと、信用ゼロだからね!」

「わかってるわかってる」



 少しの間、くみさんから、会話が途切れる。

 なんか不穏だ。


「ねぇ、くみさん」


 応答がない。


「くみさん」


 応答がない。


「なか、みてるでしょーー!!」


 すると、


「え、え、なんのことぉ?? あたしわかんなぁい」

「武器、おくる、あたっても、しらない」

「あ、まってまってまって」

「なに?」



 武器を送る前に、ななちが来たようだ。


「ここが、りりあさんの部屋かぁ」

「そう、わたしとりーあの愛の部屋!」


 通話ごしに、ななちの話し声が少しだけ聴こえてくる。


「前から、くみ言おうと思ってたんだけど」

「なに?」

「その、りりあさんとの"愛"って、どういう」

「ななちは彼氏でしょ」

「うん」

「りーあは恋人!」

「え」


 とりあえず、わたしは声をかける。


「そろそろ、武器送りたいんだけど」

「あ、ごめん、りーあ。良いよう」


 ドサッと、音がする。


「重たいから、ななちにお願い」


「はーい」



 うわ、重たいとか、

 これどこ置く、とか、

 話し声が聴こえてくる。


 わたしの寮の部屋にある、荷物をどんどんと転送していき、あと、わたしの部屋にあるのは、クラゲの水槽と、持ち歩いているバックに、部屋の掃除用具だけ。


 掃除用具入れに、ひとつだけ段ボールを残しておいた。

 外に自転車が二台あるけど、一台はここのレンタルだから、残り一台。



 ある程度、掃除機をかけたり、はき掃除で細かいほこりをとり、ついでに、水と風魔法で、少しだけ、水洗いをしてみた。


「りーあ、どう? そっちは」

「あとは、この掃除類と、自転車だね」

「わかった」


 転送で、掃除類もみんな送ってしまうと、あとは、ほぼなにもない部屋だ。


「あと、自転車の聴いてみるから、通話やめるね」

「わかった。ななちと、少し段ボールの動かしてみるね」

「お願い」



 一度、通話をやめて、寮の管理人にあいさつにいく。

 自転車は、レンタルの一台の鍵を渡して、あとは、掃除した旨を伝えると、


「寂しくなるね」


 と言われた。


「ありがとうございました」

「また、顔みせてね」

「はい」



 部屋に戻り、もう一度、クローゼットや洗面などをたしかめて、ぐるっと見回すも、なにもない。


「よし、おわり」


 一度、窓の外をみると、昼の日差しのなか、緑羽鳥が飛んでいる。


「たぶん、ついてくるよね」


 カーテンもなにもない部屋で、一度礼をしたあと、バックを持ち靴をはいて、玄関の側にあった水槽を持ち、外にでる。

 玄関の扉を閉めるとき、もう一度、なかをみると、なんとなく、くみさんやさちさん、クラゲとの想い出が残っている気がしてしまい、少しだけ、切ない気持ちがした。


「よし」



 パタンと、扉を閉めると、すぐに緑羽鳥がきた。

 クラゲと中に水の魔法を蓄えた少しおおきな水槽を渡す。


「くみさんのところまで」


 クルル


 すぐに、飛んでいく。


 管理人がすぐそばにくる。


「鍵はある?」

「はい」

「一応、中を確かめるからね」

「はい」


 管理人が、部屋を確かめて、外にでて、鍵をかける。



「じゃ」

「お世話になりました」

「またくるんだよ」

「はい」


 自転車にのり、わたしが動きだすまで、まっててくれた。



 まだ、日差しがきつい、昼間のうちに、引っ越し作業はおわった。


 わたしには、転送魔法の他に、ホントは転移をつかえる。

 だから、自転車ではなくて、すぐにくみさんのところまで、移動できる。

 でも、くみさんには、そのことはナイショにしている。

 話すと、きっと一緒に夜中までいようとか、くみさんのところに泊まって、転移ですぐに帰ればいいとか、とにかく、大変そうだから。



 自転車で少し走り、くみさんの住む部屋に近い、新しいわたしの部屋に到着する。


「きたよ!」

「あ、りーあきた!」

「だいぶ、収めたよ」

「わぁ、ありがとう!」

「あ、緑羽鳥のクラゲ、どうしよ?」

「あ、そうだね」


 みると、部屋のなかで、ななちが緑羽鳥をなでていた。

 とりあえず、水槽は無事のようだ。

 水もこぼれていない。


「ありがとね、緑羽鳥」


 ななちが、まだなでている。


「あの、ななち、気にいったの?」

「えっ、うん。動物好きだよ」



 棚も置き場所も、ひとまずあまりないが、

 段ボールをよけて、日差しがあまり当たらない場所を選ぶ。


「カーテン、勝手にかけちゃった」

「うん。いいの」


 窓を開けても、あまり日差しが入ってこない、角の場所を少しだけあけて、水槽を置き、水の魔法を解除する。

 そして、そこにクラゲが、勝手に入っていく。


「クラゲちゃん、これからはここね」


「ねぇ、りーあ?」

「なに?」

「一応聴いてみるけど」

「うん?」

「魔物クラゲだよね?」

「え、うん」

「ご飯とか、よく食べるんじゃ」

「意外と少食だよ」

「へぇー」


 ななちは、なにもたずねない。

 深く聴かないことにしたようだ。


「それで」

「あ、うん。もう少しだけ、荷物拡げたら、プールいこっか」

「うん」

「あー、棚も組まなくちゃ。武器が」

「あ、そうだね」

「あとベットどうしよ?」

「あ、まかせて」


 ななちが、ベットは組みたてしてくれるらしい。


「じゃ、棚をやりますか」

「はーい」



 このあと、くみさんと棚をひとつ組み立て、その間にななちがベットを組み立てしてくれた。


「ありがとう」

「あとは」

「あとは、休憩して、少し遊んでこよ。夜にするよ」

「わかった」


 すると、


「ご飯、クラゲにあげていい?」


 とくみさんが、聴いてきたため、


「どうぞ」


 と少し魔力のこもっている、妖精界からとりよせてある魔物食をあげる。


「よし。りーあをみまもってよね」


 一度、まだ雑然とした風景の部屋をみたあと、三人は、玄関にいき、外で鍵をしめた。



 三人して、近くのMzバーガーにつくと昼食をとった。

 そのあとに移動して、

 三人して自転車で、市民プールについた。


 くみさんとななちは、あらかじめ水着の準備はしてあったようだ。


「りーあは、今回はどんなの?」

「え、えーとぉ」


 一応ななちに、見られることにはなるのだけど、小声で教える。


「ふーん。薄いピンクの、紐かぁ。やるなぁ」

「もう、なにが」



 話しているうちに、さちさんがきた。


「おはよ」

「うん。おはよ」

「あ、さちさん、このひとななちね」

「うん。ななちさん、おはよ」

「ななちさん、ていうか、ホントは大地なんだけど、なんかななちで、みんな呼ぶよね」

「もういいじゃん」

「じゃ、ななちね」

「呼ぶの、はやいね」

「まぁね」



 女子三人と、男子ひとりでわかれて更衣室に入り、着替えてでる。


「ピンクに」

「白に」

「黄色」


 水着の色はバラけた。


「ななちは、青いね」

「くみ、かわいいよ」

「ざんねん。りーあのピンク紐水着のほうが、えっ○いからね」

「くみさん」


 さちさんは、慣れていないためか、口数少ない。


「さ、いこっか」


 くみさんに続いて、ななち、りりあ、さちさんも順番に、プールに入っていく。


「気持ちいい!」


 と叫んでいるのは、くみさんだ。



 少し泳いだあと、さちさんが、少し疲れてるみたいなのが、心配で一度りりあとさちは、あがる。


「どう、さちさん?」

「うん。大丈夫」

「ビーチボールにしよっか?」

「うん」


 二人で、ビーチボールと浮き輪をつかって、飛ばして遊ぶ。

 少しして、男の子二人が近づいてきた。


「なにぃ、きみたちカワイイね!」

「お、イケてる!」


 というひとりの男の子の目線の先には、さちさんの胸がある。


「どう、一緒に遊びましょ」

「あの、いやなので、どっかいって」


 どうしよ。

 ナンパだよね。


「いいじゃん。オレたち、イケてるっしょ!」


 なんかしつこそうだ。

 さちさんが、わたしの後ろに隠れる。

 水の魔法で、吹っ飛ばしてやろうかな。


 一瞬、そんな考えが浮かぶ。


 すると


「りーあ!」

「さちさん」


 おくれて、ななちとくみさんが、プールからでてきた。


「あ、ごめんなさい、お兄さんたち」

「あぁ!」

「この子ら、彼女たちなんですよね」


 ななちが笑顔で話す。


「はぁ!」


 すると、くみさんが目の前にでてきて


「風を」


 と言うと、二人が弾かれる。


「うお」

「えっ」


 くみさんが、優しい風をおこしたようだ。


「なんだよ。じゃぁな」


 二人がいなくなる。


「よかった」

「ななちありがとう」

「さちさん、無事?」

「うん。ちょっと、怖かった」

「うん」

「もう、りーあナンパされて!」

「わたしに、言わないでよ」



 一度、落ち着けようと、ひとがあまりいない場所の端で、少し休む。


「ななち、みんな彼女なの? やるね」

「いや、その、そういったほうが」

「いつから、ななちは、モテ男の子に」

「さちさん、体調大丈夫?」

「うん」


 休んだあと、もう少しだけと、みんなで泳ぐ。

 日が暮れる前には、プールからでた。


「はぁ。つっかれた」

「ななちは」

「もうくると思う」



 男の子は、更衣室がこんでいたのだ。


 さちさんが話す。


「ななちって、けっこう頼りになるね」

「ふふっ。ななちのこと、ほれていいよ」

「もう!」


 さちさんが、笑っている。

 よかった。

 ななちが、おくれてきた。


「じゃ、いこっか」

「先に、荷物おいてこよ」

「うん。りーあの家ね」

「わかった」



 自転車で、りりあの引っ越したばかりの家に向かう。


 でも、今日はまだ、予定がある。


 夜には、花火大会があるのだ。


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