くみさんに泣かれる
「あ、わたし、引っ越そうと想うんだけど」
そういうと、朝から、くみさんが泣いてしまった。
どうしよ。
「ねぇ、りーあ。ごめん。もうわがまま言わない。キスもしないから、でていかないで」
「まって。違うから。そういうのじゃなくて」
ななちが参加する。
「まって。りりあさん。転校、もしかして、なにかクラスであった。なんでも話して」
「りーあぁぁぁぁ」
「えー、りりあさん転校だって」
「え、クラス、でりりあさん」
朝はやめに、来ていた数人のクラスのひとが、みんな集まってくる。
「ちょっと、くみさん、話し」
「りーあぁぁぁぁ」
い、言わなきゃよかった。
「りーあぁぁぁぁ」
「ライルイラリリストルード」
「え」
あ、思わず、妖精語で話しちゃった。
「りーあぁぁぁぁ」
朝礼の時間になり、くみさんが、となりのクラスにいくと、クラスのみんなが、くすくす笑っている。
恥ずかしい。
「えーーと、りりあさんは、転校するのか」
「しません。先生まで。聴いてたんですか?」
「それは、そうね。となりのクラスのくみさんがずっと泣きやまないって、言われて、慌ててきてみたら、りりあさんとにらみあってるから、あ、ついに、くみさんと破局したのかな、て、想ったんたけど」
「先生まで」
クラスのみんなが、笑っているため、おかしくなる。
「もう」
「じゃ、放課後時間までには、仲なおりしてね」
「はい」
寮の生活にも、だいぶ慣れてはきたんだけど、最近、緑羽鳥もくるようになり、武器も増えてきて、クラゲも飼っているため、正直、寮で迷惑かなっておもって、引っ越し場所を探しはじめた。
幸い、妖精局からの慰労金はまだあるし、
クラフトからの資金も貯まってきた。
"でも、寮からあまり離れると、学園にくるときに、不便を感じてしまうし、
近すぎると、寮のままのほうがって気もするから、住む場所ってムズカシイかもっていう"
「引っ越しの話しをくみさんにもしたかったのに」
「ごめんって」
「いや、わたしも、その唐突で話したから」
「いや、もう。なんていうか、わたし、りりあがいないと、生きていけないから」
「あのぉ、ななちは?」
「あ、あぁ! ななちね。うん。まぁ彼氏だし」
「それで」
「あ、わたしの近くに住めばいいよ!」
「え」
「それか、わたしの家に同居とか?」
「いや、それは」
「とりあえず、一緒に家探しましょ?」
「うん」
「二人で住むとなると、少し広めがいいかなぁ」
どうやら、くみさんは半分くらいは本気で、わたしと住もうとしているらしい。
昼食時間に、なんとかくみさんをなだめて、ようやく話しができた。
くみさんと、ななちとは、放課後に待ち合わせることになり、
今日も部活にいく。
コンコンコン
「入りまーす」
入って、あいさつする間もなく
「りーあ、くみさんと仲なおりできた?」
「りーあ、場所探すなら手伝おうか」
「りーあ、引っ越しのとき教えてね」
二年生のメンバーも心配してくれていたようだ。
「うん。ありがとう。とりあえず、寮からは、離れるけど、そんなに遠くは選ばないと思うから、迷惑かけないようにするね」
「迷惑とかより、りーあ、ひとり暮らしだから、なにかと大変だよね」
「いい男の子紹介しようか」
「わたしのところくる?」
なんか、大変な話しになっていたらしい。
少し反省した。
「う、うん。あんまり心配しないで。くみさんも手伝いしてくれるみたい」
「そっかぁ。くみさんと仲なおりできたんだね」
「うん」
「とりあえず、苦労しそうなことあったら、いってね」
「わかった」
「じゃ、着替えして、準備」
三年生の先輩たちは、先に着替えて、舞台で基礎トレをはじめていた。
一年生たちが、部室にくる。
「入りまーす」
「どうぞ。着替えおわったら、準備ね」
「はーい」
一年生と二年生が、着替えて、舞台に降りる。
りょうくんは、着替えるのが最後になりそうだ。
りょうくんも降りてきて、それぞれメンバーは、台本を手にしている。
発声練習まで終えると、
まずはメンバーで集合して円になり、打ち合わせに入る。
あーちゃ先輩が話す。
「配役が決まったところで、これから少しの間、台本読みを重ねていき、そのあと、少しずつ、立ち稽古に入っていきます」
一年生たちは、メモをとりつつ、聴いている。
「すぐに、夏休みに入りますので、舞台セットの設計ができたら、すぐに、セットつくりにも入ります」
「はい」
「演出、舞台監督は、セットと照明、音響のプランを、主役の三人は、セリフがおおいため、はやめにセリフ覚えをして、できるだけ早い期間に、立ち稽古に入りましょう」
「照明は、みゆさんが中心ね」
「はい」
「音響は、ゆいさんと、ゆーみさんが中心になって、進めてください」
「はい」
「それでは、夏休み前の授業は、手をぬかずに、そして、部活ではりきっていきましょう」
各自、準備に入る。
りりあのそばに、みゆと、ゆーみ、一年生のゆい、それにりょうくんが集まる。
「りーあ、よかったね」
「うん。でも、照明も手伝いするから」
「ありがとう」
「ゆーみは、音響のもう考えてるの?」
「これから。今回は、宝石と悪魔なファンタジーだから、変わった音とか、効果音考えないとね」
「ゆいさんは、一年生の進められてるの?」
「うん。もう少しです。大会のと、披露会のと、混乱しそう」
「披露会のは、先輩には話せないけど、あかねさんも頑張ってるし」
「あかねさんよかったね」
「そうです。あかねさん、役かなり狙ってたから、嬉しそう」
「りょうくんも、役よかったね。音響もよろしくね」
「あの、先輩」
「なに」
「もし、照明足りなかったら、手伝いしますよ」
「うん。わかった。でも、音響のほうに、集中してね。足りなかったら言うと思う」
「わかりました」
りりあは、役につけたことも嬉しいが、
裏方の繋がりがあるのは、なんだか楽しい。
「じゃ、裏方さん、まずは、台本を読みこんで、音響、照明プランを練ってくださいね」
「はい!」
集まっていた五人で、返事をする。
「なんか、はじまってきた感じするね」
みゆさんが、楽しそうに話すのに、わたしも同意する。
帰り道。
くみさんとななちと一緒に帰る。
真夏の日差しは、この時間になっても容赦ない。
「暑い」
「それ!」
「りーあ、体育館大丈夫なの?」
「うん。冷たい飲みもの飲みながらね。陸上とテニス、大会そろそろだね」
「夏大、はじまったら、あっという間に過ぎていくよ」
「そうなの」
「うん」
ななちの表情は、真剣だ。
きっと、三年生は忙しくなるだろうから、
この二年生の時期に陸上で、いい成績をとりたいのだろう。
「くみさんは」
「わたしは、さ」
「うん」
「目指せ、三回戦くらいだよ」
「練習頑張ってるのに」
「うん」
くみさんは、ななちのほうを気にしている。
もしかしたら、思いっきり陸上の応援をしたいのかもしれない。
「りーあ、演技するのは、久しぶりなのかな。」
「うーん。たしか、一年生のときに披露会はあったはず、だけど、病院で」
「そっかぁ」
汗をかきながら、ななちとのわかれ道にきて、ななちは手をふる。
「くみさん、公園よってく」
「もちろん」
くみさんと、魔法修行をして、
日が暮れてきてから、くみさんは帰っていく。
りりあは、寮に戻りながら考える。
「くみさん、なんか大変そう。でも、魔法練習は続けていきたいみたいだし」
「わたしは、引っ越しの準備と、それから、お部屋探しに、台本読みだわ」




