五月中盤、梅雨の手前
五月に入ってから、雨と晴れの天気が交互にくる。
昨日は雨だった。
今日は晴れだ。
テストが終わって、部活も始まりだんだんと、夏や秋に向けての練習が本格的になっていく。
りょうくんにもらったあのぬいぐるみは、スキルのクラフトで、魔力付加をして、いまはベットのところに飾ってある。
武器庫に飾ろうか迷ったが、クラゲの水槽もあるし、湿気を気にして、ベットにした。
武器庫もずいぶんとたくさんのアイテムと服が飾ってある。
授業終わり、少しだけ、くみさんと話したあと、ななちとくみさんは部活に向かう。
わたしは、放送委員会の仕事を少しだけしたあと、部活にいくことになる。
放送委員では、お昼の曲と、掃除や放課後時間、それに行事の時間での放送をおこなう。
「部活のみなさん、この時期から、熱中症対策をし、水分をこまめにとること、天気も変わりやすいため、グラウンドのかたは、急変に気をつけて活動しましょう」
放送委員のもうひとりに、このあとの片付けはまかせて、りりあは部活にいく。
晴れのこの日、演劇部の活動場所である体育館は、もう暑くなってきている。
部室にいくと、
「暑いね」
「窓あけておこっか」
「エアコンどうする」
「まだかな」
と、先に来ていた部員たちが、着替えをしながら、話していた。
一年生三人は、今日はおくれてくるようだ。
「失礼しまーす。おはよ」
と入っていくと
「りーあ、放送聴いたよ」
「こんにちは」
「いい声だよね」
「おはん」
みんな一斉に話しているため、
とりあえず順番に返していく。
「ありがとう。こんにちは。えと。おは」
「りーあ、放送のここでも言ってよ」
「いやよ。恥ずかしい」
「あ、りーあメイドの服も着たのに、放送は恥ずかしいんだ」
りーあは、思い出して、また恥ずかしくなる。
「あの。その話しはいいかな」
「戦うメイド、よかったよ」
「うん、かわいかった」
「また着る?」
もう、すぐに演劇部は着せたがる。
「いま、着替えるね」
「はーい」
たしかに、話し声が聞こえた通り、部室は暑く、すぐに汗がでてくる。
でも、窓からの生ぬるい風で、少しだけ柔らいで、いるのかもしれない。
「きゃっ」
急に、首もとが冷たくなり、ふりむくと
「はい、冷たいペットボトル」
「もう。みゆ急にやらないで。ありがとう。
あ、二百円で足りるかな」
「気にしないで。あげる」
「うん。ありがとう」
手に持つと、ペットボトルの冷たさが気持ちいい。
首にあてたりしてみる。
「じゃ、先にね」
「はーい」
そうだ、着替えなくては。
着替えをすませて、階段を降りていくと、二年三年生は集まっていた。
三年生の先輩の、藍達 あん (あーちゃ先輩)が声をかける。
「みなさん、脚本選んでる?」
「はーい」
「六月前には、脚本を決めて、大会と文化祭に向けての準備をしていきます」
「はい」
「えみさん」
えみさんが、手に持っていた紙を配る。
「短めだけど、簡単なスケジュールと、夏の合宿に向けて。それから、大会で三年生は引退になるから、二年生も気になることや、教えてほしいことなどは、どんどん聞くようにね」
「はい」
りりあは、紙をみながら、思い出す。
そっかぁ。
あの大会だ。
みゆさんと、亀さんが、紙をみながら近づいてくる。
「りーあは、照明したい、それとも、役応募するの?」
「役応募したいな。でも、脚本の内容もあるし」
「そうだね」
「みゆさんは、役入るの」
「うん。応募だけはする」
亀さんが、間に入ってくれる。
「そしたら、わたしも照明覚えようかな」
「一年生は、三人とも音響なんだよね」
「あかねさんは、役志望だけど、いまは音響だよね」
「亀さんは、はじめ音響だっけ」
「そうだけど、みゆのみてたら、照明もおもしろそう。こう、シュパっと」
「シュパっと (笑)」
「それじゃ」
と三年生の先輩がいったところで、
おくれて一年生たちが入ってきた。
「おつかれさまです!」
「お疲れさまです」
えみさんが、来た順番に紙を渡していく。
「はい。じゃ、着替えてきてね」
「はい」
一年生たち三人は、階段に向かっていく。
りりあが、様子をみていると、りょうくんが手をふってくれる。
ふりかえす。
「なにー? りょうくんと仲よくない? どうしたの」
「え、うん。この前ちょっと」
「えー、りーあ年下のほうがいいの?」
「もう、何の話しよ」
「ふふん」
「ほら、基礎トレはじめるよ」
「はーい」
腕立て、腹筋、背筋。
次は、発声というところで、一年生が合流してきた。
「おくれました」
「大丈夫だから、発声、一緒にして、そのあと腕立てからね」
「はい」
あ、え、い、う、え、お、あ、お
か、け
さ
順番に、発声練習を終えると、
一年生は、腕立て、腹筋、背筋をしている。
「じゃ、一年生、終わったら集まってね」
むし暑い体育館に、窓が開けてあるのだろう、少しだけ風が吹いてくる。
「ふぅ。もう脚本選びだね、りーあ」
「うん」
りりあは、前回の公演を思いだす。
たしか、あのときには、とおやくんがいて。
そばにいたみゆさんの手をいつの間にか、つかんでいて、預言者レポートが、きづいたら、発動していた。
「脚本……にしようか」
「照明は、みゆで」
「りりあ、役つきじゃん。でも、照明も体育館の間は、手伝いお願いね」
練習おわりに、くみさんと、ななちと合流して帰る。
くみさんは、寮まで来てくれて、そのあと、二人で近くの公園にきた。
周りに人がいないことを確認して、いくつかの魔法を使う。
わたしの固有の預言者レポートの仕組みや照明弾、クラフト、くみさんのもつ固有スキル、共鳴リアリスト。
「ねぇ、りーあ」
「なに」
「魔力疲労がくるんだけど」
「それはそう。ヒトの持つ魔力は、だいぶ制限されてるもの。わたしも、上限引き上げをしなければ、ほぼくみさんの魔力値と一緒くらいよ」
「そっかぁ。妖精のときは、使い放題だったのに、ひとは不便ね」
「そんなこと」
「ひとの世界では、魔法の出番がないから?」
「うん。というより、わたしはできるだけ、もう使ってないよ」
「それは、ウソよ」
「え、なんで」
「りーあは、転生魔法使いだもの。ルーレ師匠が言ってた。魔法には役割がある」
りりあと、くみは続けて言葉にする。
「役割は、使命とも言い換える」
「固有スキルはあなたの素質であり、それを使いこなすことが」
「そう、あなたの使命と決断と、そしてそのための」
「魔力」
「うん。いまもルーレ師匠は、新魔導書を覚えて、そして、禁書と封印を調べているのね」
「だって。ルーレ師匠は、趣味とその時間と空間を最大限、楽しむ妖精」
くみさんと、わかれて寮に帰ると、緑羽鳥がいる。
新魔導書と、今回は、服と装備品がたくさんきていた。
新魔導書、何冊くるんだろう。
「あと、この服は、わたしの趣味でないのもあるけど、何着あるのかなぁ」
「ね、緑羽鳥」
「ククルルッキュー」




