連休明けテスト終えて
九ノ葉学園では、連休明けてすぐに、テストが行われる。
三日間のテスト日程だ。
りりあは、テキストを読むのは得意で、文系だ。
でも、新魔導書を読む影響か、理科系の科目もそんなに悪くない。
くみさんは、連休中遊んでばかりに見えたが、実際は成績はいい。
わたしよりもいいだろう。
たぶん、朝方や帰ってからの勉強効率がいいのだろう。
くみさんは授業も真面目らしい。
ななちに聞いた。
ななちは、成績は中ほどだけど、陸上では活躍し、授業態度も真面目だ。
テストは、科目によってだいぶバラつきがある。
三日めのテストが終わると、テスト期間も終わりだけど、部活はこの日までなしであった。
掃除と簡単な連絡事項をうけて、学園からの帰り道、いつものようにりりあ、ななち、くみで帰っていた。
くみさんが話しかけている。
「ねぇ、ななち、英語はどうだった」
「うん。文法が変わらず苦手かな」
「りーあは」
「わたしは、数学イマイチかも」
「そうかぁ」
りりあは、ななちとくみさんが仲なおりしたのか、どうか、気になっていた。
ときどき、くみさんは、ななちの腕をとったり、ななちはくみさんの荷物を持ったりしているから、元通りなのかな。
「ねぇ、くみさん」
「なに、ななち」
「その」
「うん。なに」
「なんで電話、話してくれないの」
くみさんは黙っている。
うわーー。
りりあは、すぐに察知する。
まだ、連休中のケンカ状態を引きずっているらしい。
「え、そうかな。でも、連休中陸上もトレーニングも頑張ったでしょ。よかったね」
「うん。なんか怖いんだけど」
「りーあ、あの写真みせてあげて、二人で撮ったやつ」
「うん。えと、これかな」
スマホで撮った写真をななちにみせる。
「仲よさそうに、撮れてるね」
「うん」
「ね、りーあとラブラブだったから、ななちいらなかったね。よかったね、ななち」
「やっぱり怒ってるじゃん」
「そんなことない。そんなことない。ははは」
このあと帰り道、わたしの住む寮につくまで、ななちとくみさんに挟まれて、すごく居心地が悪かった。
寮について、管理人にあいさつして、買いものに出ようか、迷ったが、その前に、ななちに電話する。
「ななち、りりあだけど、話せる?」
「え、うん。くみとは、いま離れたけど」
「そう。あのね。くみさん、連休中にでかけるの楽しみにしてたの」
「うん」
「ななちに、悪気ないだろうけど、トレーニングばかりでなくて、くみさんのことも考えて動かないと」
「うん。いま少しだけ、くみに、話したけど、ありがとう。わかった」
「うん。それから、ななちには話しておくけど」
「うん。なに?」
「わたしたち、これから魔法の訓練するから、ときどきいないかも。でも、くみさん危ないめには、あわせないから、伝えておくね」
「そっか。わかった」
「じゃ、これから買いものだけど、くみさんと、早めに仲なおしてね」
「わかった」
電話を終わりにしたあと、買いものにでる。
ななちは、素直過ぎるのだろう。
くみさんは、たぶんもっとななちに気にかけてほしいし、わがままを言ってもらいたいのかも。
「でも、ななちは陸上、一辺倒だしなぁ」
買いものをみてまわりながら、ななちのことを考えていた。
ショッピングセンターにつき、少しゲームセンターをみていくと、テストおわりだからだろう学園の生徒たちのなかに、りょうくんがいた。
声をかけにいく。
「こんばんは、りょうくん」
「あ、りりあ先輩。テストおつかれさまです」
「うん。そうだね。いまはひとり?」
「そうです。先輩は買いものですか?」
「そうだね」
「あの、少し話してもいいですか?」
「うん」
ゲームセンターの端にあるベンチに座る。
にぎやかな音や遊んでいるひとたちのざわざわした感じがする。
「部活、あかねさんやゆいさんと、まだそんなに話せてないけど、ゆいさんは、音響で音集めたり、音楽聴いたりが好きらしくて、合ってるんですかね」
「うん」
「音響と、役うまくできればいいけど、あかねさんみたいに、うまくなれれば、役も楽しいかなぁ」
「うん。そうかも。わたしもあんまりうまくないんだよね」
「そうなんですか」
「うん。えみさんやめぐやんみたいに、もう少し役に入りこみたいかな」
「はい」
「照明のみゆ先輩は、ずっと照明ですか?」
「そうだよ。照明はできれば専門がいたほうがいいし、みゆさんプライベートも忙しいから、役は大変らしい」
「そうなんですね」
「脚本読んだりは好きらしいから、少しずつみたい。わたしたちの上の先輩のときには、結局照明との両方のひともいたらしいね」
「そうですか。うーん。迷うなぁ」
「ゆっくりでいいよ」
「あ、でも、一年生での披露会までには、決めたいです」
「わかった」
「あ、先輩、あのミニゲームしましょう」
りょうくんが指したのは、ミニクレーンゲームで、小さいぬいぐるみがとれるやつだ。
「うん」
りょうくんが走っていき、右から見たり左から見たりしている。
わたしも側にいくと
「ほら、これ、いいかも」
わたしの肩をポンとたたき、ひとつのキャラクターを指す。
そのまま、財布から百円をだし、はじめる。
りょうくんの顔と肩が、りりあに近い。
でも、りりあはそんなにどきどきはしない。
部活の後輩だからだろうか。
三回ほど百円を入れたところで、うまくアームに引っかかり、とれる。
「うまい!」
「そうでしょ。けっこう得意なんですよ」
すると、いまとった景品を渡される。
「はい。先輩」
「え、いいの?」
「はい。先輩に渡そうと思ってとったんで」
「ありがとう。これ」
「あ、ポフタんっていうんですよ」
「そうなんだぁ」
見ためがふわふわなような、モコモコのような、一応眼があるし、羽根あるし、不思議なキャラクターで、ポフっとしている。
「あ、買いもの途中ですよね。それじゃ」
手をだされ、握手するとりょうくんは走っていってしまう。
「ポフタん、かぁ」
手に渡されたそれをカバンにしまうと、買いものをするため、歩きだす。
歩く途中でスマホが鳴り、通知をみてると、くみさんだった。
「こんばんは。さっきも会ってたか」
「もう、りーあ聴いてよ」
「なに、どうしたの?」
「ななちが電話くれたんだけどね」
一度足をとめて、りりあは近くのベンチに座る。
「うん」
「陸上がんばるから、応援してほしいとか、でかけるときは、くみと一緒がいいとか、りーあと危ないことしないようにとか」
「うん」
「なんていうの。もう。言いたいことはわかったんだけど、もっと早めに話してほしかったし」
どうやら、話しが長くなりそうだ。
できれば、買いものしたいのだが、もう少しくみさんと、話していよう。
なんだか、今日は相談ばかりの日だ。
「うん。そっか」
返事をしながら、りりあは、ぼんやりと妖精のリンヤとも、長話しよくしたな、と想った。




