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転生女子高生のニッか

 朝、起きてから、朝の準備をする。

 その日課のなかに、妖精ノートを読み返していくのもひとつある。


 妖精ノートは妖精のときの仕事といっていい。

 朝と夕方に自動筆記されるこの日記は、時間に関するさまざまな動きのあった出来事を書き込むものだ。


 いまは、もう妖精として役割は終えたため、読み返しをしている。

 妖精333年生きて、転生された先に持ち込めたものは、いまの体型にあった転生用の衣服類と、あとはこの妖精ノート四冊だった。

 りーあがいつも持ち歩く転生アイテムは、りーあのスキルで創るものだ。


 今日も妖精ノートに書き込まれた内容をみてみる。

 転生魔法による時間変化の影響は少ないらしい。異常が起きたときには、この妖精ノートにも変化があるだろう。


 とはいえ、基本的に女子高生なため、普段通りの行動をすることに変わりない。



 朝の準備を終えたりーあは、軽く部屋にある鏡で姿を確認して、笑顔をつくってから、寮の部屋をでる。

 この寮にあるものは、みんな転生してから買ったものばかりだ。

 学園の援助もあるが、それは生活費にあてるため、ほかは自身で買い集めなくてはいけない。


 空虚なひとりの部屋に


「いってきまーす」


 声をかけた。


 寮をでると、管理人室で挨拶をする。


「おはようございます」

「おはよう、りーあさん。今日は何時ごろになりそう?」

「部活と買いものしてからの帰りだから、19時は過ぎてしまうかも」

「わかった。早めにしてね。」

「はーい」



 いつもの登校時間、歩いて向かう。

 道の途中で、ネコを探してみるのも日課だ。

 そして、門のそばまでくるときには、とおやくんの姿を探す。

 とおやくんは基本的には自転車なため、自転車の男の子を目で追ってしまう。


「おはよう」

「おはよー」


 少し通りすぎてから、とおやくんが自転車をとめて、降りてくれる。

 門からは、一緒に歩いて向かう。

 とおやくんは自転車の駐輪場所で、自転車をとめて、鍵をしめて入り口までいく。


 そのあとをついていく。


「歩いてたら、庭先でひまわり見たよ」

「もうそんな時期だね。暑いね」


 教室までの廊下で


「おはよー」


 知り合いの声がきこえてふりむくと、ななちだった。


「ななちおはよー」

「おはよー」

「さっき、ワンの散歩にでくわして、じゃれてきたからなでてきたよ」

「そうなんだぁ」

「なんかななち動物になつかれそうだよね」

「そうだね。動物好きだなぁ」

「とおやくんは何がいい?」

「やっぱり猫かなぁ。猫最強だよ」

「そんなに好きなんだぁ。

 わたしもネコ好きだけど、イルカとか、リスとか、鳥さんも好きだなぁ」


 妖精333年生活では、妖精ネコと暮らしたこともある。

 もちろん話しができたネコだ。


「水族館とかもいきたいなぁ」


 廊下を走ってきて、声をかけてきたのは、メガネをかけた、くみさんだった。


「おはよー。りーあさん」

「今日は体調いいの?」

「うん、ホームルームだけでるよ。

 あとは保健室と図書室だなぁ」

「わかった」


 くみさんは隣のクラスのため、教室は別だ。

 とおやくんと、ななちとともに、教室に入る。

 席につくと、持ってきている妖精ノートをまた読んだ。

 この妖精ノートには妖精後半の33年分の時間記憶しかのっていないが、記憶喪失な部分も多いため、少しずつ読むことにしている。



 読んでいくと、転生魔法についても書いてある。

 転生魔法ではMSPを999使ってしまうから、MSP回復に時間がかかる。

 いまのりーあの最大値は、上限オーバースキルを使って1540pだ。

 0pから回復するには、けっこうかかるようだ。

 いまは通常ポイント時の1000p。

 預言者レポートは100pで、回復には一時間がかかる。



 妖精の姿で便利であったのは、MSPも高く、利用できた魔法もかなりの数あったからだなぁ、と読みながら思う。

 そう考えていると、ホームルームが終わって授業準備をしているところ


「そのノートいつも持ってるね?」


 と、とおやくんに聞かれた。


「だいぶ古いけど、けっこう使ってるの?」


 たしかに、このノートは古めいているが、それでも三十三年しか使っていない。

 この前のノートは100年使っている。


「そう。記憶喪失になる前から、持っているみたい」


 記憶喪失ではあるが、一部想い出した。

 妖精ノートは100年に一冊使い、次の年に新しいのを利用する。

 300年で三冊。

 これで四冊めだった。

 ななちが(そば)にきて


「中身って日記なの?」


 と聞いてくる。


「日記だけど、海外の言葉で書いてるから他のひとには読めないと思う」


 わたしの海外というときは、大抵が妖精の言葉のことだ。


「りーあさんは、海外留学とか考えてるの?」

「そうじゃないんだけど、興味はあるよ。

 それに、知らないことを知っていくのは、いつの時代でも楽しいよ」

「そっかぁ」


 ななちは納得したようだ。

 とおやくんは、


「自分も日記書こうかなぁ。

 ときどき忘れっぽくなるんだよね」

「そっかぁ」


 そう話しているとチャイムがなった。

 2時間めまで終わり、また少し授業などのことをとおやくんと話していると、

 演劇部のクラスの子に呼ばれた。


「どうしたの?」

「はい、これ」


 渡されたのは照明マニュアルだった。


「とおやくんが使ってるのもあるけど、まだ渡してなかったね」

「ありがとう」

「部長が朝会ったときに、渡してくれって言ってたから」

「そうだったんだ」

「どう、部活は?」

「まだ少しずつです」

「記憶喪失のこともあるから、あまり無理しないように、とは担当の医師に言われてます」

「そっかぁ。

 わかった。わたしも気をつけてみてるね」

「そういえば、最近よくとおやくんと話してるね?」

「そう、転校してはじめのほうから、学園のこととか教わってます」

「そうなんだぁ」

「あ、とおやくん、ちょっといいー?」

「なに?」


 とおやくんがくる。


「これ、りーあちゃんにも回したけど、照明マニュアル渡したから。あとで、書き込みとか、操作盤のこととか、もう一度教えてあげてね」

「わかりました」

「どう? 部活の照明としては、慣れてきた?」

「照明は楽しいけど、演劇講座のほうで役もらってて、そっちが大変だね」

「そうなんだぁ。役はいいけど、かけもちなんだね」

「そう、教頭先生が直に話してくれたみたいで、参加することになったよ」

「とおやくん、教頭先生と仲良いね」

「そう、演劇部に入るときから、

 演劇部楽しいぞって声かけてもらってね」

「聴いたら、担当指導が教頭先生なんだよね」

「そうびっくりするよね」

「そうなんだぁ」


 りーあもびっくりした。

 入部するときに届けを持っていった先は、教頭先生だったのか。


「じゃ、また放課後頑張ろう」

「ありがとう」


 とおやくんがこちらの手元を見ながら


「そういえば、まだもらってなかったか。

 それに色んなかきこみして、使ってるよ」

「そうなんだ」

「話し進んできたら、台本にも、照明プランとか書き込むといいよ」

「わかった」



 お昼休憩になり、妖精ノートをもちながら、購買にいってみる。

 購買で、パンと飲みものを買って、教室の席で食べることにする。


 ここの九ノ葉学園は、高校にも小さめの購買が入っていた。

 ときどきお弁当もつくるが、基本的には購買で買ってすませている。

 買った購買のパンを食べていると、とおやくんとななちが近づいてきて、隣と前の席で食べはじめる。


「くみさんも今度誘ってみようかな」

「そうだね」

「でも、なんだか少し話しかけづらいよね」


 とななちが話す。


「そうかなぁ。けっこう話すと楽しいよ」

「そうなんだね」

「とおやくんは、くみさんのことけっこう知ってるの?」

「うーん、図書室でよくみることと、

 ときどき委員会ですれ違うくらいかなぁ」

「あと、担任の先生によく話しているよ。

 先生がたと仲良いね」

「そうなんだ」

「でもチャレンジだよね」

「よし、頑張って」

「ありがとう」


 食べ終わってから、また妖精ノートを読んでいる。

 預言者レポートや上限オーバースキルの効果を確認していると、とおやくんは興味ありげな様子だ。


「とおやくんって、ときどき分かりやすいよね」

「え、そうかなあ?」

「とおやくんは日記かきたいって言ってたけど、普段どんなこと書いたりしそうなの?」

「大体は友達とのこととか、部活のことだよ」


 とおやくんは持ってきていたカバンから、台本を取り出す。


「いま部活では、照明係で、演劇講座で兵士役だから、そのこととか書こうかなぁ」

「ななちは、何か書く?」

「いやー苦手だなぁ。そういうの。

 授業ノートに絵とか書いたりはするけどな」

「そっかぁ」


 こう話していると、昼食休憩が終わりになる。

 午後の授業をうけて、放課後になると、すぐに廊下にでた。

 隣のくみさんが、帰るところだった。


「くみさん、少しいい?」


 きくと、


「いいけど、これから図書室なんだ」

「そっかぁ」

「とおやくんと話してたけど、お昼今度一緒に食べない?」


 すると、意外なほど笑顔になり、


「何それーいいけど」

「やった。あと、夏の計画たてようよ」

「いいね。

 でもわたし普段外でないよ」

「大丈夫、いま計画してるから」

「わかった」


 よかった。


 くみさん、お昼一緒に食べてくれそうだ。

 一度教室に戻り、カバンの中身を確認して、妖精ノートもしまってから、部活にいく。


 演劇部の部室は体育館の照明室だ。

 照明室のなかにノックをしてから入っていく。


「お疲れさまです!」


 なかに、そろっていたメンバーからも


「お疲れさまー」


 と声が返ってくる。


「今日の部活は何でしょうか?」


 とおやくんがきく。


「今日は、台本持ってきたから

 それアレンジして、即興アドリブかなあ。」

「まずは、発声筋トレだね」

「わかりました」


 後ろから、また、お疲れさまです。

 声がきこえて部活メンバーが入ってくる。


「お疲れさまです」


 りーあもおおきめな挨拶をしてみる。

 カバンと、手荷物があるひとは、それを部室において、部活がはじまる。



 アドリブ前の台本は、ファンタジーで、

 妖精と天使が混在している世界で

 王国の権力と土地をねらって、

 ひとと妖精と天使が争いを拡げている話しであった。

 その戦いのシーンから、入っていき

 あとはアドリブで演じて、収めるまでだ。


 照明や音響のひとはまだ様子見で見学だ。

 役は三年生と二年生が中心になって割り振り演じていく。

 途中二年生の演技のなかストップがかかり、

 言い争いが発生してしまった。


 りーあは慌ててしまい、止めようとするが、

 他の同級生の部員たちは、りーあを抑えて、止めようとしない。


「どうしたの?」


 きいてみると


「いつものことだよ。

 これで、いつも十五分はとまるよ。」


 少しあきれ顔だ。

 そういうものだろうか。

 これを数回繰り返してしまい、

 ようやく、収まってきてから、

 台本読みと一部通し稽古がはじまった。

 部活途中


「一年で集まろうね」


 と声をかけられたため、とおやとりーあは残ることになった。

 舞台の端のほうにいき、先輩たちを見送ると、

 改めて集まった六人は、今日の反省会と、言い争いの原因について、確認した。


 りーあもなんとなく、話しのみちすじがわかってきたところで、部員のメンバーのひとりに呼ばれた。


「どうしたの?」

「ねえ、りーあちゃんはとおやくんと仲良い?」

「えーと、それほどにではないけど」

「とおやくんにも相談したいのだけど、

 わたし部活もどうしようか、迷ってるの」

「そうなんだ」

「ねえ。どうしようかな」


 思わずきかれたことで、


「大丈夫だよ」


 と頭をなでて、そのあと気になり、預言者レポートを使った。


 すると、この部員が、先輩たち二人のケンカを収めようとして、どこかで間に入り、つき飛ばされて、ケガをする魔法視だった。


 もしかしたら、危険なめに遭うのかもしれない。


 とおやくんに


「先輩たちそんなに仲悪いの?」


 ときくと、そういうことらしい。



 そのあと、再び部活帰り間際に、その子に相談を受けた。

 きっと周りに話しかけているうちに、トラブルに巻き込まれてしまうのかもしれない。


 ちょうど一時間くらい経過しただろうか。

 MSPが回復したところで


「リリラリルム リミルレレルラ」


 魔法を詠唱した。


「え、なに」

「おまじないだよ。

 たぶん、巻き込まれるかもしれない。気をつけてね」

「うん、わかった」



 次に上限オーバースキルを使った。

 いつもの手順だ。

 これで、MSPの上限を引き上げて、回復を待つのだ。


 とおやくんも、少し話しをきいて、心配そうにしている。



 部活も終わり時間。

 その子とわかれて、とおやくんと帰ることになった。

 あまり噂にはしたくないため、

 とおやくんには、彼女をしばらくみていてほしいということと、またおまじないを使ったから、たぶん大丈夫だよ、といってみた。


 もちろんわたしの魔法は転生魔法だ。


 とおやくんは、


「そっかぁ」


 と、いってくれた。

 とおやくんは自転車のため、途中の道までを一緒にして、

 駅前ふきんの道で、じゃ、といってとおやくんとはわかれた。



 翌日、部活時間になり、そのときもう一度、彼女に預言者レポートを使ってみた。


 未来は変化していた。

 ケガはしないで、なんとか避けられる預言となっている。


 彼女が


「部活もう辞めたいよ。けど、この前はアドバイスありがとうね」


 こう言ってきたのは、五日後の月曜日の放課後だった。


 どうやら、先輩たちとの口論をとめようととして、この日突飛ばされたものの、階段から転倒はしなかったようだ。

 預言者レポートも変化する時間に対して少しずつ対応しなくては、と使い方を改めて確認することになった。


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