転生女子高生、夏休みの約ソく
七月の中盤に入っていた。
もうすぐ夏休み。
この一ヶ月弱、りーあにとっては新しいことばかりだ。
けれど、なかなか友だちの人数は増えない。
病院 通いしていることもあるだろう。
親しくなったのは、くみさん、とおやくん、あと近くの席で陸上部の七海くんだ。
みんなは、ななちと呼んでいる。
今日も
「おはよー」
と教室に入っていくと、近くの席のななちと、とおやくんが
「おはよー」
と返してくれた。
「ねえ、もう夏休みだね」
「そうだね」
二人がうなづく。
「二人は、夏休みどこかいくの?」
ななちは、陸上部が忙しいようで
「部活がしょっちゅうだよ。練習合宿もあるよ」
「でも、どこかいくでしょ?」
「プールと夏祭り、あとは花火かなぁ」
ななちが答える。
「プールいくんだぁ。泳ぎそうだね」
「ねえ、とおやくんは?」
「自分も同じかなぁ。一緒にプールいくし」
「そうなんだぁ。あー、わたしもいきたいなぁ。
くみさん、誘ってみようかなぁ」
「くみさん、図書室はよくいるけど、なかなか教室こないよね。隣のクラスの様子だから、そんなにはわからないけど」
「この前ケンカしてたの、やっぱり彼氏だったね」
「そうだよね、彼女モテそうだし」
「えー。わたしは、どうかなぁ?」
「りーあは、少し固そうで真面目に見えるよね」
ななちも言う。
「そうだね」
「あと話すと、ときどきズレがあるけどね」
「そうだね」
「なにそれー!」
りーあは、そういいながらもよく観てるな、と思う。
りーあ自身も妖精333年の性格からか、なかなか女子高生をうまくやれてるか、このままで、いいのか不安になる。
転生女子高生も大変だ。
髪をはらいながら、多少強引に
「とにかく、どこか出かけようよ。いいでしょ?」
「わかった。プールは二人でマジだから、夏祭りならいいんじゃない?」
「そうだね。夏祭りにしよう」
「プールはダメなの?」
「それはくみさん次第だよ」
「わかった」
「じゃ、とおやくん、夏祭りとあと花火、待ち合わせしよう」
「わかったよ。考えておく」
こうして、ホームルームのチャイムが鳴る寸前まで、夏休みの計画を話しあった。
三時間め、四時間めと過ぎて、お昼休みにりーあは、くみさんを探してまわる。
案の定図書室で、座って本を読んでいるくみさんを発見。
今日はメガネもかけているようだ。
後ろを二つにしばっている。
「おはよー」
「おはよう」
「ねえ、夏休み出かけようよ。プールとか」
「えー、いいけど、プールはイヤだよ」
「えーなんでよ? プールいいじゃん」
「水着きるんだよ。体型の自信とかないし、外にでて何かするの、苦手だなぁ」
「いいじゃん。じゃとりあえず、夏祭りと花火いこう」
「それ、とおやくんにもいったでしょ。りーあさん」
「うん」
「2時間めの休み時間にきて、あとで誘われるよ、て言ってたから」
「そうなんだ。でももうすぐ夏休みはそこにある。
さぁ、一緒にでかけよう」
「わかった。わかったよ」
試しにりーあは、くみさんの肩に手をかける。
魔法は瞬間的に発動する。
これは魔法スキルの預言者レポートだ。
意識して使うと、よりはっきりと未来が見えてくる。
くみさんが水着をきてきて、プールにいく姿と、どこかに出かけている様子の魔法視だ。
とりあえず安全そう。
パっと手を放す。
すると魔法もはずれる。
よし、でかけるということがわかった。
よかった。
放課後には、部活がある。
この頃は、りーあも演技の指導をうけながら、少し役をもらって、エチュードに参加したり、台本読みに参加している。
秋に大会があるらしく、その打ち合わせもしている。
部活でも、途中の話題はどこに出かけるか、だった。
DOZランドにいくひともいれば、プールにいくひと、海や山でかけのひとなど、演劇部はさまざまだ。
でも、週に三回ある部活はきちっとでなければいけない。
演劇部では夏休み合宿もあるようだ。
部活のない日でも、大会で役をもらうひとは、台本読みをしなければいけない。
りーあは、まだ照明係の手伝いだ。
とおやくんと一緒なのは嬉しいが、とおやくんは、他に演劇講座にもでるらしく、夏休みは忙しいらしい。
でも、プールと夏祭りと花火は確保した。
あとは、二人で一度でかけたいな。
最近そう思うようになった。
とおやくんにも、預言者レポートを使おうか。
けれど、預言者レポートも完璧ではない。
様々な干渉をうけて、確実にみえたもの以外は、当たらないこともある。
預言者は、ときに時計を落とす。
未来のことは、結果未来の行動でしか変えられない。
パラレルシフトとも呼ばれる妖精のなかのことわざだ。
とりあえず、部活帰りに、一緒にでかけようよ、と誘ってみよう。
今日の部活での練習はいつもの通り発声や筋トレをしたあと、秋の大会の打ち合わせをした。
そのあとエチュードになり、今回はデートというテーマだ。
部活の部員たち複数参加して、デートでの演技をしていく。
りーあは、正直デートをしたことがない。
だから、他の部員での反応、様子を真似するしかない。
とおやくんは、中学のときの様子を演技しているようだ。
りーあの出番になり、仕方ない、と相手役の三橋さんに、アドバイスをもらいながら、デートをしていく。
買いものをして、選んでプレゼント。
ゲームセンターにより、アイテムをゲット。
最後に公園で、手をつないで終わりになった。
三橋さんは女性だが、途中の演技で、思わず男子に見えてきて、ドキリとしてしまう。
そうか、これが女子高生のトキメキだな。
キラーンだ。
よし覚えておこう。
帰りの放課後に
「ねえ、とおやくんはデートしたことあるの?」
きくと、何故かとおやくんは、慌てていた。
「じゃ、夏休みの計画考えてよね。あと二人でどこかいきたいな」
というと
「じゃね」
と帰ってしまった。
夏休みはもうすぐそこにある。
なんとか、とおやくんを誘って二人でデートまでいこう。
転生女子高生のりーあの決意だった。