利凛雨、退院日前日
いつものように、くみさんと、さちさんに囲まれて、話しをしていた。
退院日はもう決まり、課題もここに訪れた学園の先生に渡せたため、りりあは手が空くようになった。
「りあはいいな、退院決まって」
「さみしい?」
「そりゃ、寂しいけど、嬉しいよね」
「退院のこと?」
「そう、だってくみさん、退院すれば、ソトで会えるよ」
「そうだね」
「あー、どうしよ、外で会うときオシャレしなきゃ」
「そんな、いいよー!」
「よくない。病院では、ほぼこの格好で、寝ぼけだし、ちゃんとしよ、ちゃんとね」
話していると、斎藤看護師がきた。
「なに、楽しそうだね、まぜてよ。」
「看護師の仕事あるでしょー!」
「いましてますー!」
「はい、はい」
さちさんは、看護師さんに対しても、軽い感じだ。
「それで」
「りあが、退院間近だから、退院祝いの相談だよ」
「なるー、よかったじゃん、りりあさん」
「はい」
「それでー?」
「もう、向こういって、仕事して」
「はい、わかりました」
ようやく斎藤看護師が、別のひとのところにいく。
「もう、斎藤さんは、調子いいよね」
「仲いいんだね」
「斎藤さん、イケメンだからね」
「そっかぁ」
りりあは、そういうのが、あまりわからない。
たしか、妖精のリンヤは、格好良い感じだったと思うが、憧れるとか仲良しとか、りりあは、こう積極的でない感情だった。
しかし、ふり返ると、リンヤの居心地のいい話しや詩は、もう一度ききたい、そう想う。
「りあ、きいてる?」
「え、なに」
「カラオケいこうよ。三人で」
「三人もいいけど、この前きた、ななちも来たそうだよ」
「えー、女子会しようよ」
一瞬、りりあは戸惑う。
そっかぁ。
わたし女子高生だったよね。
病院にいるのが長いから、わすれていた。
「そっかぁ、わたし女子高生だね」
「りあ、それボケてるの?」
「まぁ、りりあはいつもだよ」
くみさんがそう話す。
「カラオケ、いきたいなぁ」
「じゃ、りりあとわたしで、先にいっておくから、さちさんも退院したら、いこうね」
「えー、なんかずるい」
こうして、話していると、りりあは嬉しい反面、何かを置いてきぼりにしてしまったような気分になる。
担当の田橋先生が、廊下で呼んでいた。
「ごめんね」
歩いて、すぐそばまでいく。
「明日、午後二時くらいに、学園の管理人と、学園の先生が待ってくれてるから、そしたら、下で退院の手続きしてね」
「わかりました」
「よかったね。だいぶ元気だ」
「先生のおかげです」
「薬も飲みわすれないようにね」
「はい、夕方のですよね」
「睡眠剤もだしておくけど、これは、夜の間、眠れなくなりそうなら、飲んでね」
「はい」
「じゃ、明日ね」
「あ、先生」
「なに」
「もし、とおやくんて、ひとがここにきたら、教えてください」
「うーん、教えられるかは、わからないけど、なにかあるんだね」
「はい」
「じゃ、一応わかりました」
何故だろう。
とおやくんのいたという記憶はあるのに、存在はひどく薄くなっている。
転生ショックが長びいているのか。
それか、運命のスキルの作用なのか。
「話し終わった?」
さちさんが、話す。
「うん」
「田橋先生キレイなひとだよね」
「そうだね」
話しているが、リンヤのこと、それにとおやくんという、学園の同じ部活のひとのことが、りりあは気になっている。
そういえば、トケルンで妖精界と連絡がとれるはず。
それに、緑羽鳥のこともある。
あの、コールドタイムを経験したときの担当鳥は、まだ、リリアの担当だろうか。
明日にでも、妖精クイーンに連絡をとり、リンヤや緑羽鳥のこと、詳しくきこう。




